マックイーン モードの反逆児のレビュー・感想・評価
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壮絶なほど美醜相まった表現性が我々の感性を深くえぐって魅了する
正直、ファッションに疎い人でもこのドキュメンタリーにはかなり圧倒されるのではないか。それほどマックイーンという男は孤高かつ謎に満ち、映画的な人生を生きた。そんな彼が手掛けるファッションショーもこれまた実に映画的だ。ただ美しいだけのショーとは異なり、嫌悪する人は嫌悪する、魅了される人はとことん魅了される、壮絶なまでの美醜が相まった表現空間がそこに降臨している。この世界において彼は文字通り神なのである。
また、彼の表現性のすべてを祝福するかのように本編で鳴り続けるのが、マイケル・ナイマンの音楽だ。実際にマックイーンも創作活動に彼の音楽を好んで何度も聴いていたのだとか。この寄せては返す波のような高揚感にも、我々観客をこの男の半生に熱狂的なまでに釘付けにさせる大きな要因がある。と同時に、表現すること、常に自分の壁を突破し続けることの苦悩について、胸が苦しくなるほど突きつけられる作品でもあった。
モード界の異端児と呼ばれたカリスマデザイナーの一生
大泣きだ。
1969年英国の労働者階級家庭で6人兄弟の末っ子として生まれた、リー・マックィーンという夢以外は何も持たない一人の青年が、モードをアートの域に高めた立役者の一人、アレクサンダー・マックィーンになり、40才で生涯を自分で終えた。その疾風怒濤の人生が、彼の創った作品とともに、手に取るように鮮やかに描き出されていた。
若者らしい破天荒さで、革新的なファッションを実現して行くも、名を成すにつれ悩みもまた大きくなる。その優しい性根ゆえに、身近なスタッフの生活を支えるため心身を削っていく。常に締切に追われる、心にゆとりのない生活の中では、身近な仲間達が普通の幸せを手に入れていくのを目にすれば、自分の人生に疑問を持つに至ったのも無理はない。それに追い討ちをかけるような人生の意地悪の数々。それでも。
もしちゃんと「time-out」を取って、遠くから自分を俯瞰する時間があったなら、と想像する。その後で、もう一度生まれ変われるとして、どんな人生を選ぶかを尋ねられたら。
彼の創り出した素晴らしいドレスの数々、革新的なショーを想う。
彼ならやはり、モードの創造に携わる人生を選ぶような気がした。
マックイーン
一人の天才の誕生と崩壊を追ったドキュメンタリー
まるでBBCか、NHKみたいな、映画というよりはドキュメンタリー番組のようでした。
マックィーンという名前は聞いていたけど、なんだかロゴのイメージと全く違う普通のお兄ちゃんで、見た目少しも尖って無くて、ちょっと意外でした。
ショーの映像を初めて見たけど、この人は針とハサミを持った芸術家、ですね!本編でも言われてたように、洋服という立体で自己表現をする彫刻家であり、ショーでアイデンティティーを確立するパフォーマーでもあるかな、と…。
ファッションと呼ぶにはあまりに過激でダークなそのショーは、おぞましくも、堪らなく美しい。
天才とは、自分の内面から突き上げて来るモノを、カタチにして表現し、人々の心を打つことが出来る人。
人が目を逸らしたくなるようなグロテスクな内面や痛みを、美へと昇華させることができた彼は、やはり天才だと思う。
そして、イブ・サンローランでも見られた、天才故の創造の苦悩と孤独。
ドキュメンタリーとしては王道だが、彼の人と成りを知るには充分の作品であった。
職能分類はもう要らない
本物のドキュメンタリー
ファッション業界に興味がある訳ではないが、予告編が面白かったので、観に行ってみた。本当に、純粋に、ドキュメンタリーだった。よく、ドキュメンタリーという名の、再現ものがあるから、そっちなのかと思ってた。
正直、マックイーンって、あまり知らなくて、モードの反逆児って言葉を聞いたことがあるかな…って程度。そういえば、会社の先輩が、ジバンシィを有名にした人って言ってたっけなぁ…って思い出したくらい。
ストーリーと言ったらいけないけど、彼の人生も、有名人にありがちな、華やかな世界と、普通の人間である自分と、その落差に耐えられなかったのかな…って感じ。その落差に耐えていられたのが、仲良しのイザベラの存在であり、大好きな母親の存在だったんだろうなぁ。2人が亡くなった時、心の糸が切れちゃったんだろうなぁ。ま、凡人には、才能ある人の気持ちは分かりませんよ。
映画館で観ることのメリットは、ファッションショーのシーンですかね。奇抜なものもあり、理解し難いものもありましたが、素敵なショーを見ることができました。
タイトルなし
【独自の美を創出するために、短き人生を全力で駆け抜けた天才ファッションデザイナーの哀切なドキュメンタリー映画。】
- ゲイのファッションデザイナーというと、イブ・サンローランを思い出すが、アレキサンダー・マックイーンはもっと過激なファッションを数々の異端でダークなコレクションでファッション界に問題提起をして来た人である。
このドキュメンタリーは彼と関係のあった人たちの生々しいインタビューで構成され、随所で退廃的な作品群の魅力を圧倒的に美しい映像で描き出している。
彼の破天荒な人生の影も光も隈なく描き出している、優れたドキュメンタリー作品である。ー
<後半の彼の姿は観ていて辛くなるほどである。
同じファッションデザイナーとして成功を収めているトム・フォード作品「ノクターナル・アニマルズ」の冒頭の異様に太った女性たちのダンスシーンを何故か思い出してしまった作品でもある。>
私たちは、マックイーンという天才を失った
マックイーンの痛み。
下記の人にはオススメできないかもです。
1
ハリウッド系の分かりやすいストーリーを期待している人
2
アレキサンダーマックイーンのショーに感動したことがない人
3
ダークファンタジーが苦手すぎる人。
1-3のどれか該当すると多分満足できないです。
とてもグロテスク、ダークで美しい、
現代アートのようなファッションデザイナー、アレキサンダーマックイーン。
ダークサイドは得意ではないので
見るには痛みが伴います。
怒り、悲しみ、貧困などのネガティブなエネルギーが
美しさに昇華されるまさに
天才デザイナーの内側の覗くことができます。原動力がまさにネガティブなエネルギー。
この映画はファッション界での
マックイーンを知っている人が
裏側や真実を知るための映画です。
痛みやドキドキと美しさが
映画館の大画面でこそ見れて良かったと思います!
知らなかった闇の部分が
結構でてきます。
マックイーンのコレクションに
何か感じた事がある方にはオススメです。
天才ゆえの性
はじめの頃の活き活きとした、楽しそうな彼の笑顔がとても印象的だ。反...
天才故の孤独が胸をうつ
ドキュメンタリーの凄さ
ファッションに疎い人も、ファッション好きならなおのことこの映画は必見。
ドキュメンタリーの力の凄さに魅了されます。
もちろん、ドキュメンタリー映画とはいえ、百パーセントノンフィクションではあり得ない。
監督の恣意的な選択と方向付けを経て一つの作品になってはいるのだけど、どの映像をどこでどう使うか、どのセリフをどこでどう切り取るか、そこに監督としての技量とセンスが試される。そういう意味でこの映画は、パーフェクト!
限りなく美しい映像と、マイケル・ナイマンの沁み入るようなメロディを伴って、ファッションというきらびやかな世界を駆け抜けて散っていった時代の寵児の哀切な人生を鮮やかに描き出しています。
観終わった後、すぐには席を立ちたくないほどの深い余韻を残す傑作です。
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