「ブラック・コメディ?」たちあがる女 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
ブラック・コメディ?
情熱の発露として母性とテロリズムが同居する奇妙な女性のスナップ映画かしら・・。
主人公を理解するためにはアイスランドの特異性を知ることが必要と思われたので調べてみました。
アイスランドは氷河と火山の島、北海道くらいの広さに東京の北区程の人口(32万人)。
環境保護と言っても国土が荒涼とし過ぎていて守るべき自然がピンとこない。
世界初の女性大統領を生んだ国でもあり信念の強い女性が居ても不思議はない。
バイキングの末裔として自力で何でもやる国民性、DIY・日曜大工も普及しており皆、工作に長けているらしい。(ワイヤーカッターは日本製でした・・)
劇中でもいとこモドキと言っていたがアイスランドでは良くあることで近親結婚を避ける為に家系図をネット検索できるインフラがあると言うから驚きだ。
水力と地熱発電による豊富で廉価な電力という強みを生かして大量の電力を必要とするアルミ精錬産業の誘致で急速に経済発展したことは事実。
劇中でも描かれないし地元民ではないのでアルミ工場が自然環境にどんな弊害をもたらしたかは不明(フッ化水素の問題?)だが送電線の破壊を大義とする理由は見つからなかった。
邪推すれば工場誘致で得た利益が金融投資に充てられリーマンショックの打撃をもろに受けたことへの恨みつらみが市民にはあるのかもしれない。
ラストのウクライナの洪水のシーンは温暖化への暗喩なのだろうが安易に風潮に乗っただけのようで残念。
50歳を過ぎた独身、双子姉妹、ヨガ教師と合唱教師で不自由無く暮らしているのは資産家なのだろうか。人格、信条形成に至る過程のエピソードが描かれていないので理解が深められない。
ウクライナの孤児を引き取るのは慈善と母性の促す行動なのだろうが母親の資格があるかは疑問。ことほど左様に主人公の生き方に共感できないので観ていて辛い。
理不尽にもとばっちりを受ける傍観者、時々絡む自転車のツーリストの役割は何だったんだろう、黒子のようにミュージシャンが至る所に登場し狂言回しのような劇伴を奏でる演出は奇抜だが慣れるまでは違和感、サスペンスも織り込んだブラック・コメディとの理解でよいのだろうか、良くも悪くも一筋縄では理解できない妙な映画でした。