「自分を信じること」ある少年の告白 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
自分を信じること
「両親は何を信じて良いのか分からなくなっている」
施設でジャレッドに対して投げかけられる言葉だ。
だが、母はやがて、ジャレッドを信じ、そして、エンディングでは、ジャレッドは父が自分を信じてくれることを願い、父に語りかける。
僕は、ジャレッドは自分自身を信じたのだと思う。
変えられるということを。
車の窓を閉ざしているように、多くの宗教は、異なる価値観に対して寛容とは言えない。
宗教だけではなく、それは、僕たちを取り巻く因習についても同様だ。
そして、幾度となく起きる争いごとや、悲劇は、いつも相手の方に非があると考える傾向に陥ってしまう。
だが、世界はもはや、いくつかのメジャーな宗教的価値観や、狭い世の中の因習で成り立つほどシンプルではなくなっている。
その最たるものが、LGBTQだ。
ゼイヴィアの言うように、神は一人一人の中にいて、外から見ているようなものではないはずだ。
僕は、自分を信じることが、神を信じることなのではないかと思う。
それぞれの中にある、勇気や、道徳心、人を助けたいと思う気持ち、他者を尊重する考え方、正義や、平和を願う気持ちもそうだろう。こうしたもののひと塊りが、神のようなものではないか。
そして、それは、環境や時代によって、変化しさえするのだ。
哲学者スピノザの言うように、「神は無限」であるはずだ。
母がレストランで「男だけで物事を決めて、自分はそれに従うだけだった」と、ジャレッドに打ち明ける。そして付け加える、「変える」と。
母も自分を、そして、ジャレッドを信じてみたのだ。
窓を開け放ち、手を伸ばしてみないと獲得できないものもある。たとえ、リスクがあってもだ。
魂のゆくえという映画は、環境を守るという新たな価値観と、協会の暗黙了解の狭間で、精神が崩壊していく神父のストーリーだったが、現代は、宗教のみならず、様々な価値観が岐路に立ち、それにどう向き合うのか、自分自身で考えるべき時代なのだと思う。
スピノザの言う通り、神が無限なのであれば、僕たちの思考も無限なのではないか。
大袈裟だが、生きるヒントにも繋がるようなストーリーだと思う。
続き
「部落差別」が私たちの社会ではこの映画に並ぶ課題として歴史も長く、より実感をもってわかりやすいかもです。
僕は奈良に住んでいた時、孫の結婚に反対して腹を切ったお祖母さんの話を住職から聞きました。檀家のお寺のお坊さんの説得も実を結ばず腹を切ったんだそうです。壮絶です。
耳を貸さないお年寄りにはどうやったら語りかけられるのだろうかと、仲間でずいぶん話し合いました。あのお祖母さんのためには、宗派教派は関係ない、
〉「神は無限」です。
お祖母さんが一目置いてくれるだろう東大寺や法隆寺の貫主に応援に来てもらおうではないかという話になりました。
LGBTQ を受容して共生する社会への取り組みはまだスタートラインですね。
ちなみにあちこち書いていますが僕の弟はゲイ・カミングアウトしていて現在当事者たちを自殺から救い出す活動をしています。
自慢の弟です。
「変わるべきは僕ではなくてお父さんなんだ」・・
別離に当たって息子が父親に残した言葉でしたね。突然攻守の世界が入れ替わる瞬間でした。
そして女性カウンセラーが少年に伝えたのは「間違っているのはご両親。あなたは間違っていない(=変わる必要はない)」でした。
つまり、“少年が自らを受け入れました”というストーリーなのではなく、変われない大人たちの有り様・醜態がこの映画の主題であったと思います。
無知や差別を克服するのは並大抵のことではないですね、特に自分自身や身内がその渦中に投げ込まれると、にわかにそれまでの自分が試されることになる。
(↓続く)
「変わるべきは僕ではなくてお父さんなんだ」・・
別離に当たって息子が父親に残した言葉でしたね。
無知や差別を克服するのは並大抵のことではないですね、特に自分自身や身内がその渦中に投げ込まれると、にわかにそれまでの自分が試されることになる。
「部落差別」が私たちの社会ではこの映画に並ぶ課題として歴史も長く、より実感をもってわかりやすいかもです。
僕は奈良に住んでいた時、孫の結婚に反対して腹を切ったお祖母さんの話を住職から聞きました。檀家のお寺のお坊さんの説得も実を結ばず腹を切ったそうです。壮絶です。
耳を貸さないお年寄りにはどうやったら語りかけられるのだろうかと、仲間でずいぶん話し合いました。あのお祖母さんのためには、宗派教派は関係ない。「神は無限」です。お祖母さんが一目置いてくれるだろう東大寺や法隆寺の貫主に応援に来てもらおうではないかという話になりました。
LGBTQ を受容して共生する社会への取り組みはまだスタートラインですね。
ちなみにあちこち書いていますが僕の弟はカミングアウトしていて現在当事者たちを自殺から救い出す活動をしています。
自慢の弟です。