「My true love.(You came back for me.)」マーウェン Naakiさんの映画レビュー(感想・評価)
My true love.(You came back for me.)
“IN THE SKY ABOVE BELGIUM DURING WWⅡ”、オープニングロールが終わるや否や、今まさにホーギー大佐(マーク)が操る戦闘機・カーチス P-40 ウォーホーク(通称:キティホーク)が被弾して墜落するシーンから始まる。“あれ~ッ⁉なんか変”と思っていると、そして、これはいったい何なんだと考えながら見ていると、主人公のマークが描く、ベルギーにあるとされる架空の町、マーウェン。模型で創作された町にいるフィギアのホーギー大佐と彼の相棒たちの6人?のバービー人形が、繰り広げる、悪の象徴のナチスとの戦いを主人公マークの世界観を再現しているということに気が付く。
What, are you queer and deaf ?(crossdresser:異性装に対する心ない言葉)
この映画は、ある日、ニューヨークのバーで、生死を分けるほどの傷害を受け、その後、肉体的にも精神的にも障害が残ったアーティストであるマーク・ホーガンキャンプ、彼が創り上げたホーギー大佐が活躍するフィギアの空想の世界と共に彼の半生を描いている。
しかし........!!
新聞紙Mountain Xpress に見られるように「 侮辱的で非人道的な悪夢は、監督自身のクリエイティブなプロセスを真に奇妙なものに見せている。」また世界を意味するスペインの日刊紙、El Mundo 、「 監督は観客を感動させようとするが、強制的なトーンと大げさなメロドラマを使っている。」に見られるようにあまり批評家からは支持がされていないのだが、その上、amazon.comのレビューでは「プロデューサー・俳優・監督は、この映画がどうなるべきかについて知らなかったようだ。犯罪演説が嫌いですか?女性はフェチを見せつけているし、バービー人形のヌードと暴力?一体何ですか?役者たちがこのゴミに主演することに同意したとは思えない。これを見ないでください、ばかげているだけです。」とあからさまな批判もあるけれどもシナリオがストレートに入ってくる監督の代表作であり、興行的にも大成功した「バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)」とは違い、アーティスト、マーク・ホーガンキャンプの架空の世界観が、すんなりと感情移入のしがたいもので、どちらかというとオスカー6冠の「フォレスト・ガンプ(1994)」のような現実世界と視覚効果の違和感のない世界観の構築をするために、今作に使われているモーションキャプチャー方式の最新のVFXを駆使して、いつも監督が目指す映画作りをしたかったのかもしれない。あくまでも個人的な考えとして.....。
To Love. To Life. To the Women of Marwen.
黒澤明監督が“映画がほかの芸術に何が近いか?”との問いに即答で「音楽だ!」ということを思い出すかのように、ゼメキス監督も映画作りが音楽作りと似ていて、そこにはリズムが存在すると言っている。今回も「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で音楽を担当した、最近では「アベンジャーズ/エンドゲーム(2019)」で知られるアラン・シルヴェストリ。この映画、監督自身の映画をオマージュしているかのような場面に、そこに欠かせない音楽が流れるのでファンなら必見となっている。
What did he say ?
"I never met a doll with such a gorgeous set
of torpedoes in my entire life."
-Such a charmer, that Hogie.
And you are the most thoughtful.........
generous, kind and beautiful woman
I have ever been lucky enough to know.
It would be my honor..........(涙)
ここに登場するフィギアの肌の質感や光の照り返し観、それとフィギアが着ている服の独特なごわつき観などエ~ッと思わせるほど精巧にしかも鮮やかに映像化されていて、一部には、フィギアらしくなく人間にどちらかというと近いという批判もあるけれども監督の追い求める映像であり、実際のマークが芸術家としての活動や人物像があまり描かれていないとかの批判もあるけれども、そこにはとてもおかしく、穏やかで、またその根底には人間のやさしさという、心を動かされる感動の映画として成立していると思われる。
監督がインタビューに答えて、「ドキュメントなどを読んで、この驚くべきマーク・ホーガンキャンプのいわゆる“healing journey”という彼のイマジネーションを作り出し、彼の抱えるトラウマの克服、彼の活動など感動をした。そのところで今までとは異なる画期的で初めてとなる役者の動きをそのままアニメーションに移すことのできるモーションキャプチャーを取り入れた。......(略)」また監督として「第一に役者が与えられた登場人物がその時に当然感じていることを役者に理解させることだ。」
アメリカでは、2018年のクリスマスに公開されるという映画会社の期待感の表れでもあった。
R.I.P.