「ジャズも素敵だけどな」おかあさんの被爆ピアノ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャズも素敵だけどな
三世代に渡る被爆ピアノの物語。東京で生まれ育った江口菜々子は幼児教育を学んでおり、試験にはピアノが必須であることから慣れないピアノを学んでいる。ある時、祖母が住んでいた広島にあったピアノを母・久美子が寄贈したことを知り、被爆ピアノで全国各地でミニコンサートを開いている矢川を追いかけるのだ。
久美子は被爆2世。3世である娘には原爆に関わってほしくない、就職や結婚もあるのに余計な知識を持たないでほしいと願っていた。2世、3世が受けるであろう差別や偏見の犠牲とならないでほしい気持ちもよくわかる。しかし、おばあちゃんのピアノが無くなった今、菜々子自身のアイデンティティ、ルーツを探す上でも重要なテーマとなってくる。
ピアノ運送のトラックに乗り広島を目指す序盤はロードムービー風。各地のコンサートではプロのピアニストやソロ歌手も登場し、休憩したパーキングでも若者がピアノに触れる。そこで、「バンドやってたんだ」と言う若者がジャズを演奏したため、矢川は「乱暴に扱うな」と叱りつける。いい感じだったのに・・・この人石川県出身のポセイドン石川という人のようです!
ベートーベンの「悲愴」がメインとなりますが、コンサートでは童謡なども演奏され、原爆投下された広島を想うときにはこっちの方がいいかな~と感じます。おばあさんのピアノ、そして一人訪れた実家。祖母への想いが原爆の悲惨さも伝えてくれます。また、岩井さんの強烈な反戦メッセージに心打たれます。さらに母の愛情を感じる終盤へ・・・
実在する被爆2世であるピアノ調律師の矢川さん。被爆ピアノの音色を聴いてもらい、それによって原爆を伝えていく。体験者が徐々にいなくなる中、貴重な活動を続けているのです。映画では彼の実際に使ってるトラック、ピアノを使用し、リアルな音色で再現しています。
今晩は
これは、私の勝手な解釈です。
奈々子の母、久美子は自らの母を助けてくれた被爆ピアノに対して感謝の気持ちは勿論あるが、娘、奈々子を被爆三世と言う位置づけにしたくない(劇中でも語られていますね)。一方、優しかったおばあちゃんの折ってくれた折り紙の記憶も懐かしき思い出としてある奈々子。
この、三世代の”母と娘の関係性”を繋いだピアノを題材とした事で、”おばあちゃんのピアノ”ではなく”お母さんのピアノ”としたと、私は思いました。
では、又。