「「罪のない嘘」の境界線」パリ、嘘つきな恋 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
「罪のない嘘」の境界線
気になる女の人と仲良くなりたいがために、足に障碍があるって嘘をついたら取り返しが付かなくなっていったって話なの。
この嘘が「青年実業家です」とか「売れてる漫画家です」とかだと良くある話なんだよね。最後に「あなたの属性じゃなくて、あなたそのものが好きなの」っていうお決まりパターンでいいから。
「障碍があるって嘘いいのかよそれ」って思いながら観ていくんだけど、「他の嘘と同じだ」って気がすんの。「嘘は許せない」はあるかも知れないけど「障碍に関することだから許せない」はないなあって。
主人公は何回も本当のことを話そうとするんだよね。でも話せない。それは歪んだ愛の証なんだよ。『話したら失う』から話せないの。
それでそのことにヒロインは気付いてたんだね。だから本当のことを話そうとすると、誤解したふりして、うまく話を逸らしてる。
最後は「ヒロインは、主人公の嘘を知ってました」ってことで話が進むのね。ヒロインも嘘を知らないふりをするっていう嘘をついたの。『愛されてるっていいわね』のために。そして主人公が本当のことを明かしたら、別れる決心をして会う。
いったん別れた二人。主人公がヒロインのことを思いながら走るマラソン大会で走れなくなったところへヒロインが現れて『それで、諦めるの?』って最高だね。障碍に関する嘘はついたけど、本当に愛しているってとこに嘘をついてないからね、二人とも。
最初にヒロインのアレクサンドラ・ラミーが現れたところから「この人もてるだろ」って思うのね。『私に恋は訪れない』って言ってるけど「そうなの?」っていう。超魅力的に描かれてるから。
アレクサンドラ・ラミーの主人公の落とし方がいい。『二人で食事はどう?』『偶然なんて嘘。わざわざ調べて飛行機で来た』と突っ込んでみたり。部屋の前まで来て帰るときに『私はいいわよ』とサラリと言ったり。
そんなラミーが家での食事に電話で誘われたとき、素っ気ない対応しといて、切った瞬間のガッツポーズとかもいい。別れるときのラミーの決断もカッコいい。この話、男はヘタれてるだけなのね。ほぼ全て女の方でなんとかしてるの。
秘書も、主人公の親友マックスもいいし、コメディも鼻につくところもあるけど面白いし、何よりアレクサンドラ・ラミーがいいから、面白いよ。