「定型的な演技、演出が場面の迫力を削いでいて、非常に惜しい。」AI崩壊 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
定型的な演技、演出が場面の迫力を削いでいて、非常に惜しい。
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主人公と「敵」の駆け引きなど、個々の場面を取り出しても見ると、とても力の入った演出を堪能できます。しかしながら場面のつなぎの強引さ、そして俳優の定型化した演技が折角の緊張感を大幅に削いでしまいました。
この物語の演出としてはここまでする必要があるのか?と疑問に思うほど凝ったロゴ表現が頻出します。そのため本作をロゴデザインの資料として捉えれば、こんな表現方法もあるんだ、と勉強になります。
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全ての医療インフラが巨大なAIによって管理されているという舞台設定は、主人公達が何に対処しなければならないのかを分かりやすく示すことには成功していますが、コンピューターネットワークの構造としてはいささか古典的だと思いました。手塚治虫先生が「ブラックジャック」の一挿話で描いた医療コンピューター像を大きく超えるものではありません。
物語では表題の通り、医療用AIが暴走します。それをいかに食い止めるかが課題となるのですが、それと並行して主人公と「敵」との攻防が展開します。こうした視点の推移自体は明確に描き分けられている上に、ご丁寧にも狂言回しの役割を担う人物がいるためにあまり混乱はありませんでした。ただし主人公の危機の切り抜け方は都合良く設えられた状況を利用しただけで、あまり爽快感は感じられませんでした。
加えて登場人物が自分の考えを全て台詞にしてしゃべる、不必要に大げさな動作(サーチライトに照らされると激しく身をよじる、取材対象を囲んだ記者が大げさに身体を揺らして混乱ぶりを過剰に表現しようとする、など)が目立つなど、いささか定型化した、というか陳腐な演技の連続が物語の緊迫感を削いでしまっています。折角アクションシーンは気合いが入っているのに、その緊張が長続きしないことが残念です。
前述のロゴだけでなく、スクリーンでの情報表示の仕方についてもインフォメーショングラフィックの見本として興味深く鑑賞しました。ただ、本来AIが内部処理している過程を、きちんとデザインされた映像で表現する必然性はないため、これは演出のための演出じゃないかと、少し冷めてしまいました。ディスプレイの様子に緊迫感を持たせるために、何らかの物語上の工夫や説明が必要では、と感じました。
蛇足ですが、劇中で使用している電子機器類のいくつかが、2020年の段階で既に古さを感じさせるものが含まれているため、油断したら10年後が舞台であることを忘れそうになります。デモ隊が使用する、ある道具がいちばん未来的でした笑