劇場公開日 2020年1月31日

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「AIの黎明期だからこそ観るべき」AI崩壊 さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0AIの黎明期だからこそ観るべき

2020年2月2日
Androidアプリから投稿

突っ込みどころもあるし、既視感あるので低評価も多いのは理解出来ます。
ただ聞いてほしい!

これはSFとして観ない方が良いです。
今現実に浸透しつつある「AI(人工知能)」による希望と脅威を描いた社会派サスペンスです。
今観るべき映画だと思います。

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さて、この映画の製作が発表されたときは驚きました。
大作の邦画で、原作が無いオリジナル作品という事に非常にワクワクしました。
今の邦画でお金を掛けた映画というのは殆ど「人気漫画の原作」や「ドラマの映画化」が多いです。
もちろん、その中には傑作と呼べる作品もありましたが、殆どが失敗していますし、飽き飽きしています。
原作やTVドラマばかりだと、その作品を読んでるか読んでないかでハードルが上がります。
そうなると、ますます映画離れが進んでいく。

何か足りない、オリジナルの作品が観たいと思ってた時にこれがやって来ました!

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さて、前置きが長くなりましたが感想の方に参ります。
邦画でも珍しいSFなので、どうなるかと期待と不安を胸にして観ましたが、面白かったです!

傑作と呼べるほどでは無いとは思いますが、この映画における定義は決して無視出来ないものだと思います。
前述したように、この映画はポンコツな部分もありますが、SFというよりは「今自分達が生きてる現実がそのまま10年後になったらAIはどうなってるか」それを生々しく描いています。

大沢たかお演じる主人公が医療用のAI「のぞみ」を開発したことをきっかけに、AIが生活に欠かせないものになり、AIが人間の健康管理をするようになった2030年。

医療AIというのは癌などの重い病気にかかった際、人間が判別出来ないような所を発見したりするAIで、これは実際アメリカでは技術が進んでいるそうですが日本ではまだまだ進んでいないようです。
AIは普通のロボットとは違い、ディープ・ラーニングが出来るためにかなり重要視されています。

だからこそ、医療用AIは本当に夢のような開発ですし、実現してほしいと思います。
それと同時に、恐ろしいとも感じました。
実現出来そうだからこそ、AIに頼り気味になってしまう可能性も非常に高いですし、だとするとAIが暴走すると大混乱に陥りますし命の危険にもさらされます。

また、この映画では「百眼(ひゃくめ)」と呼ばれる警察の捜査用AIも出てきますが、こちらはアニメ「PSYCHO-PASS」に出てくるシビュラ・システムとは違って10年後に作られる設定なので課題はありつつも、こちらも実現出来そうな気がします。
プライバシーは別として。

劇中のAIの名前がネットでは「ダサい」等と言われていますが、個人的には全然悪くないです。むしろ好きです。

大沢たかおが開発した医療用AI「のぞみ」は希望が込められていますし、「百眼」も無数のカメラを使って調べるので非常に的を射ていると思います。
そして、非常に日本的です。
こういう実写だと、無理に海外の言葉にしてしまうと中二的な感じに思えて寧ろダサいです。

あと好きだったのが、AI「のぞみ」が収納されているサーバールームのデザイン。
出てきた瞬間、「格好いい...」と思わず呟いてしまいました!
何でしょう、近未来的ですしクリアで美しいです。

また、劇中ではハエ型の捜査カメラも出てくるのですが、これも良かったです。
バッテリーはどうなってるんだろうという疑問はありますが、ミニサイズでどこでも入り込めそうな感じで興味深いでさ。

俳優陣に関しては、一番素晴らしいと思ったのが松嶋菜々子でした!
登場シーンは少ないのに、出てきてる時は誰よりも存在感を放っていたし、演技も素晴らしいです。
特に病気にかかった後の演技は名演技でした!
捜査官役の岩田剛典も、「去年の冬、君と別れ」に比べたらだいぶ良くなったと思います。
人間味が無いようなキャラクターでしたが、それを見事に熱演していたと思います。
あとは滑舌が良くなれば完璧でした。

そして、ラストは現実面でのAIに対する「AIは必要なのか?」という問いかけになるのですが、その答えが非常に素晴らしいです。
これに関しては本編を観てほしいところではありますが、単に恐いという投げかけだけでない観客にも疑問を投げかける終わり方になっていました。

なのでこの映画で定義されていることは色々と考えさせられるものになっていて素晴らしいのですが、残念ながらこの映画にはいくつか問題点や突っ込みどころがあります。

まずは警察の描写です。
これは恐らく酷評してる方の殆どが指摘してる事だと思うのですが、あまりにもポンコツです(笑)
大沢たかおが容疑者にされて逃げていて、しかも「百眼」を使って簡単に居場所を特定出来るのに全然捕まえられないというのは正直「何してんの?」と思います。

そして、銃を持っていない大沢たかおに対して複数の特殊部隊がアサルトライフルを向けたり、実際撃ったりもしてます。
いやぁ、さすがにダメだろ(笑)
人権を完全に無視しています。
特殊部隊のデザイン自体は良かったのですが、とりあえずその点は何とかならなかったのかな(^_^;)

あとダメだと思うところは、パニック映画なのに緊張感があんまり無いことです。
この点に関しては編集やテンポなどで何とか出来たと思います。
特に終盤の展開はダレてしまいました。

これは悪い点かどうかは解りませんが、ストーリーの展開自体は既視感が満載です。
「ターミネーター」や「マイノリティ・リポート」、「プラチナデータ」にも結構似てました。

なので展開はだいたい読めたし、犯人も前半の方でおおよそ解ってしまいました。

ただ問題もあるので酷評するところはありますが、今の日本社会におけるAIの重要性と脅威を生々しく描ききっている点では絶賛したいです。

この映画における社会はすぐそこまで近づいています。
AIの黎明期として、絶対に無視出来ない内容だと思うので是非とも観てほしいです。

さうすぽー。