「圧倒的映像美と人生と葛藤する主人公」天気の子 とまとさんの映画レビュー(感想・評価)
圧倒的映像美と人生と葛藤する主人公
まずはじめに、今作は愛に生きる人向けの作品でした。
「銃」この存在がこの映画がハマるかハマらないかの分かれ道だと思います。
銃をただ単に悪の象徴と捉えてる人はこの映画をただの非行少年の映画としか捉えられません。
この「銃」は愛する人を守るための物です。アメリカでは護身用として扱われるものですが、ひとつ間違えれば身を滅ぼす存在でもあるものです。
ラストの象徴的なシーンで、帆高は警察に、また恩人でもある須賀さんに銃を向け「ぼくの何も知らないで、知らないふりをして、ぼくはただ陽菜さんに会いたいんだ」と言います。
ここで帆高は、須賀さん(現実の親のような存在)に銃を向けてまで、陽菜さんを救いたく、陽菜さんに会いたく、なにをしてでも会わなければと思ったのです。
「知らないふりをして」この言葉はこの後須賀さんを大きく変えます、須賀さんにとってもう会えない妻、という存在は自分にかりそめの姿を与えていました。だから、「あなた泣いていますよ」のシーンで須賀さんが自分の気持ち、感情に気が付かなかったのです。そこで、再び帆高に「知らないふりをして」と言われ、自分の気持ちに気付いたのでした。
注目すべきは須賀さんの反応ではなく、先述した帆高の感情にあります。帆高は親のような存在である須賀さんにまで銃を向け、自分のやりたいこと、やらなければいけない事を貫き通します。これは現代の若者にある熱い恋、いわば素晴らしい青春をここで、描いているわけです。
だから、今作は私小説のように、多くの大人を巻き込まないように描いているため、ある程度の批評を貰うわけです。しかし、やはりその私小説感がこの映画の本質であり、これ以上にない最高の作品に出会えたなと思いました。