「結局何がしたかったのか分からない 一貫性がない」天気の子 (@_@)さんの映画レビュー(感想・評価)
結局何がしたかったのか分からない 一貫性がない
映画館ではなんだかんだで見ることはなく、昨日地上波であったので見てみた。
最初に言っておくと、序盤は非常によかった。前作「君の名は」でもあったが、身体中に鳥肌が立つ感覚があるほど素晴らしい場面もあった。君の名はで使われた台詞の使い回し(?)的なのが少し気になったが、もう使い回しが多すぎたのでこれは新海誠監督の一種のファンサービスなのではと考えた。(だがまあそれで私の気持ちが少し冷めたのも事実)。しかしそれを置いても私がわくわくさせられたのが、ヒロインである陽菜が天気の巫女であり、やがて消えてしまうことが物語冒頭から示唆されていたため、これをどうエンディングまで持っていくかということだった。
だが蓋を開けてみれば、ラストは結局主人公である帆高が「みんなのための世界」か「自分の好きな世界」かを選ぶことになり、後者を選ぶというものだった。つまりテーマとしては「自分が好きな世界を選べ(?)」みたいな感じなのだろうか?
しかし私はここに疑問を呈したい。新海誠監督は本当に最初からこういうラスト、テーマにするつもりだったのだろうか? 言ってしまえば最初は割と、わかりやすく言えば、どうにかなりそうに物語を描写しているように見えた。既に言ったが序盤で陽菜の身に何かしらのことがあることが描写されている以上、それを阻止するための方法を帆高や周りの人たちが見つけていくような物語かと思った。だが結局どうにかはならず、東京は沈んでしまった。まるで、作り始めた時はノリノリで作っていたが最初に作った設定のせいで最後にエンディングをどうするか迷ってしまい、結果的にそのまま一番簡単だが感動も何もないつまらないラストを選んでしまったようだった。その際無理やり「自分の好きな世界を選ぶ」というスローガンに紐づけることによってそれっぽく見せたのではないか? 私が作文を書く際、最初はノリノリだったが後にとっとと終わらせたくなったときによく使う手法だ。これはまるで中身がぐちゃぐちゃで整理できてない物たちを、テーマというリボンで無理やり縛ったかのようだ。
もちろん「自分の好きな世界を選べ」というのもテーマとしては大変良いものだ。だがもしそういうテーマにしたいのであれば、「例えば、最初は主人公がみんなのためと思いなかなか自分の為の選択をできなかったが、最後には大切な人のために自分の為の選択をする」のようにするべきだ。それの方がわかりやすくテーマも伝わる。だがそのようにしなかったのは途中どうすればいいかわからなくなって、無理やり最後にテーマを決めてそれに紐付けようとしたからだろう?
世間的には割と高い評価をしている方々もいるようだが、おそらくそれはリボンで無理やり縛られた最後の姿を見て、「おー!(?)」と悪い言い方をすれば無理やり形にされたものに騙されているのではないだろうか? 映像や音楽もすごく綺麗だったが、それらの効果も相まって、マトモに見えたのだろう。私自身見て最初は「おー…??」となり、冷静に考えたところ酷かったと考えれたのだった。
上であげた意外にもリボンで縛られたところはいくつもあり、例えばそもそも天気が神の力で変わるというファタンジーを取り入れてるのに、所々に現実的な場面を描くのも分からない(これの最も極端な例がラストの「結局どうにかならなかった」というものであるのだが)。どっちかにしろよ笑
私がここまでいうのは、今作に多大な期待を寄せていたからだ。前作「君の名は」が自分の見てきた映画史上No. 1に食い込むくらい記憶に残る作品で、何度でも見たくなり、これこそが映画というものを見せてくれたからだ。正直今作は私のように期待を寄せていたものが多すぎたせいで新海誠監督にプレッシャーがかかり、急げ急げとした結果こうなってしまったというのがあったかもしれない。だが「君の名は」の一ファンとしては、急いで作られた適当な作品よりも、10年かかってもいいのであのまたみんなに感動を与えるような作品を期待している。また天気の子公開後のインタビューで監督が語ったそうだが「今作は前作(君の名は)で非難されたとこを全部入れた、前作では代償なしに幸せを手に入れれるのはおかしいという非難があったので、今回は代償を入れた。」と。確かにリアルを描くのであればそういう非難も一理あるのかもしれないが、これはあくまでみんなに感動を与える「映画」であるはずだ。そんな代償がいるとかいう意見を聞く必要は全くない。映画のストーリーを変えれるのは脚本を手がけた監督だけなのだ、全て彼にかかっているのだから、もっと感動を与えるようにしてほしい。おかげで映画を見たものの中に「こういう自分勝手な若者になってはいけない、という反面教師の面では非常に優秀な映画」という皮肉な意見もあった。そういう映画もあっていいと思うが、深海監督はそれが作りたかったわけではないでしょう?
ここまでいったが、最後にまとめ。今作も所どこに深海監督なりの工夫が光っていてなかなか見応えはある映画だった。だがそれだけに、ここまで適当なラストに持っていかれたのが、ひじょーーーーに残念だった。また映画を変えれるのは脚本を書いた監督だけであり、適当にしたような非難を聴く必要は全くない。次回作は何年かかってもいいので、またみんなに感動を与えるような作品を期待しています!!!