「鳥肌ッ!」イエスタデイ U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
鳥肌ッ!
なんと大胆な脚本か…見事なIFの世界に誘われた2時間だった。
今の現代にビートルズが無かったら。
この発想に至った事が目から鱗。
主人公が奏でるメロディを僕たちはどこかで必ず耳にしている。でも、作品の人達は聞いた事がない。ファーストコンタクトがもたらす衝撃…僕らは当時のビートルズがどれだけの爆弾を抱えてたかを追体験していく。
それまでの世界をぶち壊す程のエネルギーだ。こんなリスペクトの仕方があるだろうか?
ビートルズを知らない世代もきっと多い。
ビートルズの楽曲が、世界にどんな風に受け入れられていったかを知る事になる。
作中の現代のエド・シーランは言う。
「かなわない」と。
こんなリスペクトのされ方、いや、やり方が残っていたとは思わなかった。
良いものは良い。
だが、それをなぞるのではなく再認識させちゃうなんて…感嘆しました。
そして、この主人公がまたいい。
このキャラを大絶賛したい。
彼はずっといい人で、ずっと控えめで、ずっと自信なさげで…ずっと弱者だった。
その背景がビートルズの楽曲がもつ優しさや愛とリンクしていく。
至高のカップリングに思える。
そして…
ネタバレとの注釈をつけても具体的に書くのをはばかられる程に、とんでもない隠し玉を、この作品は用意していた。
海岸にポツンと建ってる静かなコテージ。
彼がその扉を開いた時、俺は思わず右手で口を押さえ座席の背もたれに貼り付いて、文字通り固まってた。爪先から一気に鳥肌が立つ感覚を明確に覚えた。
その慈愛に満ちた瞳を携え、少しかすれた声で話す彼に心打たれた。
もし、あなたが未だに愛を発信できていたのなら、この世界はいくらかマシな世の中になっていたんじゃないだろうか?
78歳…その架空の年月に目頭が熱くなる。
「yesterday」から始まったセットリストは、どれも耳に心地よく、終始僕の体を動かそうとする。
いや、若干リズムを刻んでたと思う。
海外の映画館なら拍手喝采の幕引きだったろう。スタンディングオベーションの文化のない日本が悔やまれる。
エンドロールに流れる「hey Jude」が終わり映画館が明るくなるまで、ささやかな拍手を送り続けてた。
優しさに満ちた作品だった。
全てのキャストとスタッフに感謝を!