「無意識の領域を可視化するという高度なテクニックに熱狂」アス ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
無意識の領域を可視化するという高度なテクニックに熱狂
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自分とそっくりな訪問者が、我が身に襲いかかってくる。そんな「ドッペルゲンガー」をモチーフにした物語は数多くあるが、ジョーダン・ピール監督のこの強烈な一手が世界中を震撼させている理由はひとえに、これまで視界にすら入っていなかった世界をエンタテインメントの文法で可視化したことにある。
SNSの浸透などで、人と人とが容易につながりあえる一方、都合のいいことだけを見て、それ以外には蓋をする時代となった。隣人がどのような顔をしてるかなど気にもとめない。経済格差、移民問題、政治をめぐる分断。アメリカの問題は、今や世界共通の課題となりつつある。
「無意識の闇を可視化する」という意味において本作は、ミヒャエル・ハネケ監督の「ファニー・ゲーム」や「隠された記憶」とも重なる。かつては先進的だった語り口を、今やピールがエンタテインメントの領域でよりわかりやすく炸裂させていることに、高まる興奮が抑えられない。
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