「考えろ」運び屋 hideaquiさんの映画レビュー(感想・評価)
考えろ
スクリーンの中の90歳の クリント・イーストウッドと、麻生太郎や松本人志を隔てるもの。観ながら考え続けていたのだけれど、身もふたもないけれども、想像力なのだと思う。もちろん前記のおふたりにもまだ時間はたっぷりある。僕にだってあるはずだ。
LGBTって言葉が浸透したのもつい最近だと思ってたのに、いつの間にかそれにQがついてたりして、この世界のグラデーションの細分化の速さについていけない。
それがアメリカ南部の90歳男性、朝鮮戦争に従軍した退役軍人ならなおのことだろう。
見ず知らずの困っている他人を人種差別的呼称で呼びながら、いまどきの若者はやれやれと助けてあげる老人は、人種差別主義者なのか? 90歳になっても女性をモーテルに呼び出しデレデレと遊ぶ男性は、やっぱり女性蔑視のスケベジジイだろうか。それとも色男だろうか?
考えろ考えろ考えろ。
どれだけ努めて想像してもたどりつけない、当事者の知覚と思考と感情に少しでも近づこうと、脚色や演出を慎み深く研ぎ澄ました先に、表れ出るのが「生きろ」というリアリズムなんだと思う。
グラン・トリノのイーストウッドも朝鮮戦争の帰還兵だったな。ハートブレイク・リッジからもう30年以上経つのか。ソウル五輪からも30年。朝鮮半島が30年後どうなってるかなんて、想像したこともなかったな。鈴木大地が大臣になってるなんて。ましてや北朝鮮に核兵器とミサイルがあるなんて。
久しぶりにスクリーンに立てば、相変わらずのオレ様ぶり。ダーティー・ハリー。やっぱ最高だよ。
(オマケ)撮影監督はイーストウッドとの初めての仕事だったそうですが、何者?とググらずにはいられない秀逸な仕事ぶりです。