「人生の在り方」運び屋 にょむさんの映画レビュー(感想・評価)
人生の在り方
いい意味で退屈な映画だった
映画の満足度ってシナリオも重要だけどそれを誰が演じるのかって事にも左右されるんだなあと改めて感じた
勿論、無名な役者の方が功を奏する場合もあるけど、この映画だったらクリントイーストウッドじゃないとダメだ
自由に自分の思うまま生きてきた男が最終的に家族と向き合わざるを得ない現実に誘導される
その時に妻が、一緒にいてくれた方が嬉しいと言っていたが、失われた時間の本来の在り方は失われたからこそ願望としてこうあるべきと美化されるのでは?
夫は社交的にふるまうのが好きで、見栄をはってお金を調達する手段として年老いた身で運び屋という仕事に偶然だけどありついた
これは社会悪に加担した老人を批判的にみる映画ではない
この老人は紛れも無い悪人であり、観客が思う典型的な悪人と温度差があるとしたらクリントイーストウッドが演じているからだと思うし、映画本編で憎めない役柄を設定してしまったから一見矛盾を感じる
埋め合わせをどこかでするのだろうか?という期待はあったかもしれないがそうじゃない
悪に加担した者は法によって裁かれるというアンサーを結末で明確に示したからもうそれでいいのです
ドラッグが蔓延しているのは「純然たる現実」で、その一幕がこの映画だったというだけ
なので手を替え品を替えというやつだが実は運び屋とかホントは関係ない
実話を元にとしているが完全に脚色されてるし、人生の在り方を振り返るってやつをクリントイーストウッドがやってみせただけだ
だけどそれがいい
そういうオヤクソクがあっていいし、これは"そういうジャンル"の映画だと思うからです
それとは別に映画として、登場人物らの会話も味わい深かった
特に個人的にツボだったのは、イーストウッドがマフィアのパーティで「お前の事なんか屁とも思っちゃいない」とアドバイスをした時「当時何にも無かった俺を拾ってくれたんだぞ!」と言い返されて退散するシーン
そりゃ信奉させて手駒にするなら有能でスペックの高い人材なんかじゃなくてその真逆の人材を選ぶよね
だってそういう人間には選択肢がない
この映画の老人にも当てはまる
違いは残された時間と可能性だけだがそこは伝わらない