劇場公開日 2020年3月6日

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「賛否両論あるこういう事実は作品として残すべき」Fukushima 50 北枕寝二さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0賛否両論あるこういう事実は作品として残すべき

2022年2月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

レンタルDVDを4回に分けて鑑賞
公開当時から観ることを迷っていた
100円になってからもしばらく躊躇っていた

この監督は最近もWOWWOWドラマなどを観ていて
誠実な人柄を感じさせる内容で信頼できる人物だ
公開当時地元のテレビ局からインタビューを受け
こんな素晴らしい作品を是非観てくれというでもなく
批判もあると思う…と逡巡している様子がうかがえた

エンターテインメント作品とするために
東電本社や首相官邸をある程度の悪に見立てる必要があり
佐野史郎とか篠井英介のキャラクター設定はそういうことかと
ただ 悪者に振り切れている訳ではなく
ギリギリの状況の中でそれぞれの立場でこれがベストだと
判断した行動という風に読み取れる

誰かが悪者というたぐいの問題ではない
地元住民 マスコミ 東京都民 西日本の住民など
立場によってこの事故に対する感じ方はそれぞれ異なる

佐藤浩市と渡辺謙は大好きなので出演はうれしい
価値がある一作となった

> 佐藤浩市には20数年前に渋谷の飲み屋で
> 握手してもらったことがある
> 映画好きを装って「魚影の群れ観ました」なんて言ったら
> 「あれは撮影が大変で死んでました」なんて返答して貰えた
> 凄く嬉しかった

きわめて高い緊張下の中でのユーモア
渡辺謙と安田成美とのちょっとしたやりとり
地元の高校とか短大を出た優秀で気立ての良い女性がきっと
あぁいう総務の仕事をしてるんだよなとリアリティ
東電職員の妻が避難所で東電のジャンパーを脱ぐシーンも

暴走する原発を収めようとする様は
ゴジラやモンスターに立ち向かうのと何ら変わりない
何もないところから強力なパワーを生み出す優れた技術だと
あの事故が起きるまではオラも誤解していた
神の領域 倫理哲学の領域だった

徒弟制度みたいなものの美しさを描きたいとの意図
行ってくれる奴は手を上げてくれ
俺に行かせてください いやダメだ みたいな

小泉以降の権力者や新自由主義者のとりまきたちが
そういうものをなくしてきたんじゃなかったのか
それをいまさら日本の底力だとか現場力だとか
お前らに言われたくない
オラは嫌いだ まやかし ごまかしだと思う
このタイトルも嫌いだ 50人だけじゃない

普段メディアで見聞きする原作者の考えにどうしても相容れず
この作品を色眼鏡で見てしまうので勘弁
しかしながら賛否両論あるこういう事実は作品として残すべき
参加した監督スタッフ役者に敬意

北枕寝二