劇場公開日 2020年3月6日

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「コロナ禍で観れなかった作品を遂に!」Fukushima 50 死亡遊戯さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5コロナ禍で観れなかった作品を遂に!

2021年3月22日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

興奮

いきなり大地震から幕を開ける、小細工抜きド直球実録パニック映画。

昨年の公開当時、日本より感染状況悪く映画、ましてや日本映画など観れないはずのアメリカ在住・町山智浩が何故か観もせず悪評を広めていて気になった本作。
実際に観た友人は絶賛していたので、是非とも自分の眼で確かめておきたかった。

結論言うと、日本映画史に残る傑作であり、暴走した原発を食い止める難しさを映像で見せる、半ば教科書のような作品。

震災の数年前、ネットでは有名らしい原発作業員の手記を読み
「電力会社社員と言っても、安全な場所でのうのうと暮らす本社社員と原発現場で日夜作業に従事する最前線社員とでは、環境から考え方、責任感まで、ありとあらゆる面で違う人間」
という認識がそれなりにはあったつもりだが、鑑賞後は

「東電本店社員=上級国民」
「原発作業員=肉体労働者」

という実態が明確に解った映画だった。

本作原作者である門田隆将氏は安倍政権支持者だと一部では言われている様だが、そのせいで冒頭に書いたような「映画評論家とあろう者が作品観もせず動員妨害活動」をしたのだと解るが、内容は安倍も支持していたはずの原発に、むしろ非常に厳しい疑いの眼を持って事故当時の経緯、内情を調べまとめ上げており、リアリティーと緊迫感がスクリーンからヒシヒシ伝わって来る。

ただ、東電本店の隠蔽体質はちゃんと描くべきだったと思う。
首相役である佐野史郎のヒステリックな演技はそれが理由であり、それさえあれば首相のみならず、東電本店社員、放射能流出阻止に従事する東電現場作業員と、三者三様の立場を切り離して考えられる。

電源が失われ、核燃料の冷却が不可能になった原発を収束させるのは容易ではなく、その状況下で当時実際に福島原発で起きた爆発などしようものなら、場合によっては作業員は避難を迫られ、やがて放置された核燃料が溶けて放つ高濃度放射能により日本の約半分という広範囲で人が住めなくなる。

死と向き合いながら最後まで残った50人の作業員たち。

半ば福島原発周辺住民を騙して建設された原発の暴走を収束させて映画は終わるが、現実の「終息」は、まだまだ遠い未来の話なのだ。

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死亡遊戯