劇場公開日 2020年3月6日

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「迫真の再現」Fukushima 50 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0迫真の再現

2021年2月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

WOWOWの放送で観賞。

『Fukushima 50』のタイトルが写し出された瞬間から胸にこみ上げるものを感じた。
本編が始まる前に、海外メディアが敬意を込めてこの名で呼んだ人達の崇高な戦いに思いを馳せてしまったのだ。

東日本大震災は、これまで多くの映画やテレビドラマの背景として取り上げられてきたが、本作は原子力発電所の被災事故に対応した人々の姿を背景としてではなく直接的に描いている。
考えてみれば、東電や協力会社のスタッフはサラリーマンに過ぎない。民間人を残して撤収できないと語る自衛隊員もそこにはいたとは思うが、命を危険にさらして責任を全うしようとした人のほとんどはサラリーマンで、その姿に全編を通して涙を禁じえない。
そこには、出演者たちの迫真の熱演と、美術、CG、撮影技術などが結集して成立した圧倒的な再現力があった。

ただ、劇映画としての本作の意義を探ると、レベルの高い「再現ドラマ」に止まったと言わざるをえない。
称えられるべき主要登場人物は実名だったが、政治家は匿名で会社名すら架空のものにしているあたり、事故の根本原因や、対処が最善だったかの検証を試みる意思はなかったようだ。

実際の大惨事だから、実在する当事者やPTSDに苦しんでいる人達を慮らずにはいられないとは思う。が、年末のテレビ特番ではないのだから、もっと人間に食い込むようなドラマがつくれなかったものか。
原作のノンフィクションのタイトルにもなっている吉田昌郎氏(渡辺謙)の葬儀で幕を閉じるなら、平常時の部下や同僚たちとの関係で彼の人となりを見せるなどしてもっと人物に迫る方法があったのではないか。
映画の主人公伊崎利夫氏(佐藤浩市)を彼の家族との美談エピソードでお茶を濁すのではなく、吉田氏との関係性を描いた方が結末が活きてきた気がする。
素晴らしい俳優たちが揃っていただけに、残念だ。

鑑賞中に何度となく溢れた涙は、この映画への称賛よりも、モデルとなった人達への尊敬と感謝の念からくるものだ。
映画の最後に画面に表れる2020復興五輪のテロップを見て、コロナ禍で2021年を迎えて開催すら危ぶまれている今、複雑な思いだ。

kazz
レモンブルーさんのコメント
2021年2月4日

お返事ありがとうございますm(_ _)m そうだったんですね。本当に有難い事でしたね!

レモンブルー
レモンブルーさんのコメント
2021年2月3日

Kazzさん 共感をありがとうございますm(__)m
Kazzさんのレビュー 頷ける事が多く考えさせられるレビューだと思います。たしかに 皆さん サラリーマンだったんですよね!私がレビューを書いた後だったのですが、TVで渡辺謙さんが「2号機の爆発が何故起きなかったのかは未だに不明ですが、 僕は あの原発に誇りを持って懸命に働いて来た方々の必死の”想い”が止めたと思ってます!」と仰るのを聞き、スゴく納得してしまいました。 感動しました。
本当に 50名の職員の方々には 感謝しかないです。
吉田さんのエピソードがもっと有ったら本当にもっと深みのある作品になったでしょうね!

レモンブルー