「スピード展開のプロレス的なエンタメ志向。4DX3Dが楽しい」ゴジラvsコング Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
スピード展開のプロレス的なエンタメ志向。4DX3Dが楽しい
「ゴジラvsコング」(原題:Godzilla vs. Kong)。
ワーナー・ブラザースとレジェンダリーによる、ハリウッド版"ゴジラ"「モンスターバース」シリーズの第4作。
第1作の『GODZILLA ゴジラ』(2014)から、東宝の協力も得てオリジナルゴジラをリスペクトしつつ再構築されているのが好感のシリーズ。前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)にいたっては、『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964)のリメイク要素もあったので、当然今回は『キングコング対ゴジラ』(1962)の復活となるのか。そうなると結末は“引き分け”。しかしタイトルの名前序列が逆転しているのが、このシリーズにおける“王様”ポジションを明確に表している。
ここからは超ネタバレ含みますのでご注意。
今回はとにかく爽快スピード展開。ここまで丁寧に描いてきた設定やストーリーを深く掘り下げるタイプではなく、米国人の大好きなプロレス的なエンタメ映画である。プロローグから、シリーズ過去の怪獣同士の“対決”をトーナメント表で構成したうえで、コングvs.ゴジラは、古代からの宿敵の決勝戦と位置づける。
とはいっても、設定やストーリーが軽視されているわけではなく、これまでの作品をちゃんと見てきていれば、“地球空洞説”(Hollow Earth=ホロウアース)をもとに特殊機関モナークの活動が進行していることや、それぞれの登場人物と家族関係の前提はしっかりと踏襲されていることが理解できる。ゴジラ単体のストーリーと、『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)側のストーリーが本作でキレイに融合する。
逆に“ここでソレを説明しないのか!”とツッコミたくなったり、余韻もなくゴジラが去っていくところなど、賛否分かれる作品かもしれない。観ていて“捨てカット”も相当あるだろうことが容易に想像できる。3時間くらいのアナザーバージョンがあっても良さそうなくらいの潔さ。なので本作だけを初めて見ると、単なるプロレス映画になってしまうかもしれない。
ハリウッドデビューとなった、小栗旬は前情報どおり、まっとうに演技させてもらえていない(というかほとんどカット)。小栗演じる芹沢蓮役は、渡辺謙が演じた芹沢猪四郎博士の息子のはずだが、その設定すら触れられていない。
名字が同じ研究者ということで推し量るしかない。最大の見どころになるはずの“メカゴジラ”のパイロットであり、ほんとはメカゴジラを開発するに至った芹沢蓮の心の葛藤が脚本にあってもいいはずだが、本作がスピード重視なので仕方ないかと思ったり。やっぱ英語がダメだったのかなぁ。次に期待。
2D字幕・吹替、IMAX、4DX、MX4Dのほか、久しぶりの国内3D上映映画である。2020年度はコロナでハリウッド作品が国内上映を休止したため、記憶では3D上映作品はなかったのでは? 本作の3D字幕版はIMAXのみ、3D吹替は4D系のみとなる。字幕の4Dはない。ワーナーの英断というべきか、本作はアスペクトがシネスコなので、IMAXレーザーのメリットを3Dなら享受できる。全バージョンを観る価値あり。
4D系は必然的に3D上映になるが、本作はぜったいに“4DX”で観るべきだ。通常版やIMAXで観ているとは全く感じない“水シーン”満載だからだ。3Dメガネにワイパーが欲しくなるほど、けっこう水浸しになる!ので注意だが、これこそ4DXの醍醐味。
海中からゴジラが現れる、コングを水上移送する、最初にコングをゴジラが襲うときは雨の中だが、これ、4DXじゃないとちゃんと気づいてもらえない(特に字幕派の人は画を見てないからね)。4DXは横風を加えて暴風雨となる。
さらに南極大陸にコングの最終移送先である南極大陸に到着したシーンで、雪(泡)の効果を使用する。
匂いのシーンもある。メカゴジラの格闘ドッグに潜入したとき、生臭い匂い(怪獣の死臭)を表現する。映画館はむしろ芳しい匂いだが。
4Dならではのモーションシートは本作に登場する各種乗り物を描き分ける。船や戦闘機はもちろん、なかでも香港行の貨物カプセルの発進時の急加速はなかなかのもの。
ホロウアース専用探査機ヒーヴ=HEAV(Hollow Earth Anti-Gravity Vehicle)が、地下空洞から地上(香港)に舞い戻った瞬間に、コングを避けながら高層ビルの間をすり抜ける飛行は、本格的な遊園地アトラクションより楽しい。
地下空洞へ突入するときのVFXの表現はなかなかの見どころ、瞬間的に完全な“ブラックアウト”したあと、HEAVの飛行軌道の光線が出るので、ここは漆黒を表現できるドルビーシネマ版で見たら、もっと美しいはずだ。このシーンのドルビーシネマ版は必見だろう(まだ未見)。
さて吹替版についても触れておこう。“吹替の帝王”こと平田勝茂氏による意訳も含めた流れるようなセリフが楽しめる。字幕版の松崎広幸氏は標準的な翻訳だが、平田翻訳は、文字数制限のある字幕版より正しいニュアンスの部分もあったりして、情報を踏まえた字幕を見てから吹替版を見ることで、より楽しめると思う。
なお吹替版はエンドロール後に、日本語吹替キャスト&スタッフの特別エンドロールが追加されており、ここで日本版のイメージソングである「INTO THE DEEP」が流れ、本作カットを背景にMAN WITH A MISSIONの演奏シーンが見られる。これは字幕版にはない。
(2021/7/2/ユナイテッドシネマ豊洲/Screen10/I -16/シネスコ/字幕:松崎広幸)
(2021/7/3/ユナイテッドシネマ アクアシティお台場/Screen8/E -8/シネスコ/吹替翻訳:平田勝茂)