岬の兄妹のレビュー・感想・評価
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問題作といえるが個人的にはすき。
自閉症の妹をもち自らも片足をひきづるお兄さん。
生活に困窮するなか、妹を売春させる。
1度味をしめてしまえばいけないこととはわかりつつもやめられない。
うんこなすりつけるシーンがトラウマすぎてもう忘れられない(笑)
どんなラストが待っているかなと思ったけどラストは観る者に解釈委ねる系でしたね。
妹が恋した?小さなお客さんだったらハッピーエンドでいいな(´・ω・`)
目を反らすべきではないが答えもない
倫理だとか理性だとか法律だとか正しさだとか…生きる上で守ることが出来るのは幸運だ。
この映画に救いはない。
生きることは難しい。正しく生きることは尊いが、正しくないことを否定することは乱暴ではないか。
読後感のよいものではないし、見た人に大切な問いを投げ掛けてくれるが、答えなどないし、その問いから目を反らすことも、また許されるべきだと思う。
この映画は兄と妹がただ生きることを描いている。
救い用のない兄と救われない妹。
愚かであることは罪か。人並みの幸せを得られないことは悲劇なのか。悲劇を前に手を差し伸べないことは非難されるべきか。
私は目を反らす。そこに闇があることを知りながら、見ない振りはせず、凝視しながら目蓋を閉じる。
私は罪人として生きていく。
河童の国
芥川龍之介の「河童」には以下のくだりがある。資本主義社会の河童の国では労働者が資本家に搾取され、用無しになった労働者は殺されて肉として食われるのだと。それを聞いて驚く主人公に河童は言う。君たちの国でも同じく社会的身分の低い女性が売春させられているだろう、搾取の構造は人間社会も変わらないだろうと。
貧しく金に困った良夫はやむなく自閉症の妹に売春をさせて金を稼ぐ。なんの力もない彼らに唯一稼げるのが売春という方法だった。
資本主義社会では金になることならなんでも商売につなげる。女性が体を売るのもこの世界では自明の理とも思われた。
金を稼げるようになった良夫は目隠しのボール紙を引っぺがす。たとえ売春という方法であっても自分たちは稼いだんだ、この資本主義社会で一人前に稼いだんだと。障害者だからといって何も恥じることはないんだと言わんばかりに。
新自由主義により行き過ぎた資本主義社会では人間の価値は生産性により判断される。良夫自身もこの生産性を叫ぶ社会にどっぷり毒されていた。
金を稼げるようになったとはいえ、妹に妊娠までさせてしまい罪悪感にかられる良夫。追い詰められた彼は心中まで考える。そんな彼に貯金箱を差し出す真理子。彼女も兄のつらい気持ちを理解しているのだろうか。
運よく職場復帰できた良夫。兄妹は元の平穏な生活を取り戻したかのようだった。しかし、兄の呼びかけには無反応な真理子が携帯の着信音に反応するという皮肉なラストで本作は幕を閉じる。
無垢な幼児の心しか持たない妹を売春させねば生きてゆけない貧しい兄妹の姿。この社会でその搾取される姿を通して、資本主義社会、生産性を叫ぶいまの社会を痛烈に風刺した本作はまさに河童の国という架空の世界を描き、当時の日本社会を風刺した「河童」と同様の作品だった。
賛否両論だなほんとうに
西原理恵子の絵柄の方が
リアルがゆえのグロさ
グロい。この言葉が適切かどうかわからないが、私は終始グロいと思いながら観ていた。
この兄弟の道のりは、どんな選択をしたって苦しくて行き詰まって
それは有識者の正しいアドバイスなんかが届くものではなくて、
人生の蓄積、経験則、思い込み、いや、そのどれもが現実味を帯びた今この瞬間のしんどさに繋がっていて、もうその方法しか見えない、とれない。
そこに愛があるからこそ、切っても切れない縁だからこそ。
どんどん繋がっていく家族の輪も。分かっていないようで、分かっているような妹も、確実に女になり、母となり、そのささやかな感情を願ってあげたい兄がいて。
でも、それが届かない。
感情があるからこそややこしい。行き詰まる。どうしてこうなったのか、もうその原因すら見えない。
最後のシーン、岬に立つ妹に、中学生の言った「潮の香り」を思い出した。母なる大地の海。
しかし、電話がなった瞬間、女の顔になった妹に。
鎖に繋がれ家に閉じ込められていた妹を思い出し、もう何も、先のことなんて考えられなかった。
辛い映画
体が悪いのぢゃない。只運が悪いのだ。
内容は、板野家の生き残りチンバの兄シゲオとハクチの妹マリコが岬近くの借家での筆舌に尽くし難い生活を映像化した昭和の色彩を感じる事の出来る胸詰まる苦しさが見応えのある作品。印象に残った言葉は『逃げないで』産婦人科で堕胎手術を受ける時にDr.が呟く言葉。生きたいと云う気持ちと生きたくないと云う気持ちが映像と台詞でテーマとして伝わってくる。印象的な場面では、クローズダウンで浜辺を低いカメラで3人を押さえながら引いて写すシーンが非常に冷たくて人の内面を表す様な表現は素晴らしい。世間は冷たくも温かくも無く感じる人次第だとは思いますが、その世の中で家族の複雑さと温かさを感じる人間の矛盾が表現されている所は脱帽です。売春を斡旋する兄も妹を性的に見て居た過去を隠しながらも面倒見ようとする呪いにかけられ、売春で出逢う同じ障害者同士の内集団との関係は絶妙で、役者さんの兄と妹役の表現力の凄さには驚きます。岬と云う生死の狭間で生きようとする人々には目を見張るものがあります。物語の最後妹が岬に立ち振り返る時の表情と電話をとる兄の表情には幸せとは言えない刹那的な絶望が胸を打ちました。短い尺の映画ですが非常に人間の矛盾を的確に描いた面白い映画だと思います。でも見た後は元気でないなぁ。
腹にズシンと残る作品
とにかく最初から強烈、頭の30分でかなり疲れます。
妹役の道原真理子が最初からすごい芝居を見せつけて、ギュッと掴まれたようになりました。
決して正しくはない。が、兄妹は必死に生きているんです。
絶望的な負の連鎖ではなく、ゆっくりと二人を締め付けるかのようなのがまたキツい。
逃げ出したいけど逃げ出せ無い兄の葛藤も凄く、叫び声が良くそれを表していました。
ふと思い付いた「結婚」という逃げ方も、そんな心を簡単に見透かされてしまう。
そうしてこの岬からも、妹からも離れる事が出来ず、ただ日々は続いていく。
ハンディキャップに貧困層。少し韓国的なテーマだとは思いますが、どこの国でもこうしてセーフティネットから溢れている人はいるのでしょうね。
腹にズシンと残る作品でした。
役者がいい。
右足の不自由な兄と知的障害のある妹が社会の底辺で懸命に暮らす。 そ...
想像の中の極限
予告を見て「エグい作品なんだろうな」と思っていたけど想像してた一番イヤ残酷さよりも少しだけユルくて助かった。
貧困は思考を奪うという事を上手く伝えていると思う。生活保護を受ければいいのにと思うけど、申請してから受理されるまでの時間が待てないくらい切羽詰まっている状況や、兄が頼れるのは友人の警察官ただ一人だけの状況からプライドが高くて赤の他人に助けを求める事が出来ないのではないかとも想像できる。また、友人の警察官も腐れ縁程度で本気で兄妹に向き合ってはいないのも厄介事に巻き込まれたくないというのが現れててリアルに感じた。
多分だけど、映画じゃない現実でもっと酷い事は無数にあると思う。その中のひとつをエンターテイメント化した作品だと思う。
本編と関係ないけど、マリコを買った未成年の子が行為を録画されていじめのネタにされるのかと構えていたのでそういう胸糞が無くてよかった。ナイス糞
役者の演技素晴らしかった。
兄がプライド高くてキレやすいところとか、妹の自閉症の演技、道で寝転がって泣き叫ぶところとかすごい。近年もてはやされてる美男美女のキラキラ映画では絶対に見れないので人間を観たという感じでほんと良かった。
評価は賛否で別れてるみたいだけどそれはただの好みだと思う。
赤貧の描写に浮かぶ「ユーモアと抒情」
2年半前に観た時は嫌悪感と貧乏描写に辟易して、
やっとお終いまでなんとか見届けた・・・
そんな感じでした。
最近、片山慎三監督の「さがす」を観て、なんとなく
「岬の兄妹」をもう一度観たくなりました。
片山慎三監督はボン・ジュノ作品の助監督を務め、
この「岬の兄妹」は自分で資金を集めてた自主制作映画です。
監督・製作・プロデューサー・編集・脚本を自ら務めて
劇場公開に漕ぎつけて注目を集めました。
作風はボン・ジュノ監督作品の影響か、実際に起こった事件を題材にすることが多い。
《ストーリー》
右足に重い障害を持つ兄の良太が仕事を解雇されて、
生活に困窮する。
兄は思い立って知的障害のある妹の真理子に
売春をさせて生計を立てるようになる。
真理子は時々、行方不明になるけれど、明るい性格で、
売春も「お仕事」と呼び半ば楽しんでいた。
そんな生活を続けていた矢先、真理子が妊娠をする。
常連の小人症の客に「真理子と結婚してくれませんか?」と頼む兄の良太。
小人症の客は、「俺が小さい男だから、釣り合うと思ったんだろう」
と怒って、拒否される。
ユーモアとペーソス漂うシーンです。
すぐに行方不明になる真理子をロープで繋いで、扉に鍵をかけて
閉じ込めたり、売春をさせる酷い兄だけど、
そこまで切羽詰まったギリギリの生活苦を見せて、
お金がないことの辛さをとことんに描写する。
そして真理子は、どうにかこうにか中絶手術を受けることが出来た。
真理子は退院後、ひとり徒歩で岬に向かう。
岬の突端で考え深そうに海に見入る真理子。
その真理子の胸に、もしかしたら、母性が芽生えていて、
育ちつつあった胎児が真理子になんの承諾もなく、
勝手にただ流されてしまった。
そんな悲しみに暮れる賢い女の子・・・
真理子が美しく、そして聖なる母、母になれなかった聖女・・・
そんな寂しい背中が切ない。
そんなラストで、
知恵遅れに生まれた女の哀しみ。
突然、思い至って、私は激しく胸打たれたのでした。
主演2人の演技力に惹きつけられながらも ここまで堕ちていかなければ...
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