「What we believe」バイス ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
What we believe
What we believe!?
ラムズフェルドが、ディックの問い掛けを笑い飛ばす。
だが、この映画を観てる間中、この問いがテーマのよう頭の中を廻る。
アメリカのネオコンはかつて、欧米的・イデオロギー的自由主義と民主主義の守護者のように振舞っていた。
ディックはネオコンの躍進に重要な役割を果たした人物だ。
だが、ディックは自由主義的とも民主主義的とも言い難い異質な感じだ。
何か思想やイデオロギーを代表しているようには見えないのだ。
ジミー・カーターの当選で職を失い、止むを得ず、民主主義的な選挙に出たりしたが、その後は、暗躍に次ぐ暗躍で、市民のことなんか考えちゃいない。
議員時代は調整役として優れていたということらしい。
では、家族主義的なのか。
同性愛者のメアリーが世間の目に晒されることを嫌い、政界から一時引退していたところを見て、そうなのかなとも思っていたが、リズが立候補した時にメアリーは切り捨てられる。
では、何なのか?
運良くドナーが現れて、一命を取り留めても、ディックは神に感謝することも祈ることもない。
神なんかどうでも良いのだ。
せいぜい、新しいハート(心臓)に変わったんだから、同性愛や家族に対する考えも変わったのだと言いたいのかもしれない。
そう、いかにも場当たり的で、一見考えているように見えて、実は衝動的なのだ。
その場、その場で考えて、自分に、或いは、自分達に一番都合の良い理由を、その時々で見つけて、行動を起こしているだけなのだ。
メアリーを理由に政界から身を引いたのも、単にその時は切り抜ける自信がなかったからに違いない。
実は家族だって方便にすぎないのかもしれないのだ。
富裕層の相続税を死亡税って言ったら、国民は反対するよねというアプローチには笑わされれるが、肝心なのは、イラク戦争の方だ。
戦争する相手はアルカイダやタリバンじゃ何と戦っているか分からないし、賛同は得られ難いから、やっぱり戦う相手は国家が良いんじゃないか?
不謹慎とも思える発想が、映画をブラックジョーク化する。
戦争はマーケティングの対象じゃないのだ。
人命は消費の対象じゃないのだ。
映画のエンディングで如何にもという表情でディック役のクリスチャン・ベールが、こっちに向かって語りかける。
「あなた達が、私達を選んだんだよね!?」
僕に責任はないよ。あるとしたらあなた達にだよ…、僕は反省なんてしないよ…と言わんばかりだ。
そして、その先には、「トランプだって、あなた達が選んだんじゃないか」という言葉が、米国民には突き付けられるようにも思える。
日本だって同じだ。
あれこれ文句言ったって、他に良い候補がいないからって理由で私達を選んでるのは、あなた達じゃないですか…と。