ちいさな独裁者のレビュー・感想・評価
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「服は人を変える」の悪い例
日本版のポスターが秀逸だと思う。主演俳優の顔をカットして軍服を全面に押し出す。主人公は軍服に操られる存在に過ぎない、真の主役は軍服なのだと力強く訴えている。
着る服によって気分が変わることは誰でもあるだろう。しかし、その効果は強すぎた場合、この映画が描くようなことは誰にでも起こりうるかもしれない。服は人を変える力がある。これはそれが悪い方向に変わってしまった場合の物語だ。ナチスの軍服は、その意味で非常に完成度が高いと言える。ただの若造にあれだけの威厳と権力を与えてしまうほどに強力なデザインだったということだ。
しかし、服だけであれだけ人間性が変わってしまうことがあるのだろうか。服という外部要因だけでまるで違う人間に変身してしまうとしたら、人間の本質とは何なのか。玉ねぎの皮のように剥き続けたら、中には何も残らないもので、どこまでも外部要因の積み重ねでしかないのだろうか。そういう人間の本質の空洞さのようなものが見えるから本作は恐ろしい。
胸糞映画
普段戦争映画は観ないのですが何となく観てみました
脱走兵の虐殺シーンは終始胸糞悪かったです。
それにしても収容所での電話のやり取りで何故バレ
なかったのかが不思議、だって存在しないはずの大尉のはずなのに
なんで全権任せられる事になっちゃうの?
まぁ本人の才能+戦争末期での混乱等色々要素は
あったのでしょう。
それと戦争映画という事で今のウクライナ情勢も重なりました
ロシア軍による民間人への虐殺などヘロルド達がやってた
脱走兵への無慈悲な大量虐殺とやってる事同じ・・・いや現実は
子供を含めた非戦闘員が犠牲になっているのでそれ以上の悪逆非道な
振る舞いですよね。
ロシア側にも大義がない戦いに駆り出されたであろう若いロシア兵の
中には訳もわからず死んだ者や当然脱走した者もいるんじゃないかな、
映画での極限状態での狂気ぶりを見ていると今これと同じ事が
たった一人の権力者のせいで現実に行われているんだと思うと
胸が痛むばかりです。
口から生まれた
エンドロールで、ハロルトが21歳だったという若さに驚いた。天才的に人を騙す口が達者で、度胸もあったのだろう。脱走兵のハロルトは偶然、大尉の軍服を盗み、初めは空腹のため、食料を手に入れたが、仲間を引き連れ、次第に権力そのものに取り憑かれていく。初めはバレやしないか、ヒヤヒヤしたが、脱走兵を虐殺シーンは胸糞悪い。しかし、映画の後半に、退廃的なシーンがあり、何を伝えたいのか、よく分からなかった。狂い出したということなのか。人は身なりで判断してしまう典型、気を付けよう。。
脱走兵が偶然見つけた軍服で大尉になりすます。弱い立場の主人公を最初...
脱走兵が偶然見つけた軍服で大尉になりすます。弱い立場の主人公を最初は応援してしまう。今にもバレるのではとハラハラドキドキ。
この主人公の変貌っぷりが最大の見どころ。グロ描写注意!エロは終盤、少しだけ(笑)
ほぼ実話というのが衝撃。生きるためなら人はこんなにも…戦争の恐ろしさよ。
ナチスの映画を観ると、つい自分の国のことを考えてしまう。
ハリウッド映画では残虐な悪役を一手に引き受けている感のあるナチスだけど、この映画を観ると、脱走兵の処分に司法を介在させようとしたり、少なくとも自国の兵士の人権については配慮されていたんだね。
そうなると、つい人権どころか人命さえ軽視された、わが国の軍隊はどんなだったか、なんて考えちゃう。
ひどい話がいくらでもあったんじゃないかな。
そんな話が映画化されたら、って思うけど、この国じゃそんなこと、まずありえない。
だって、この国って、いまだに大日本帝国だもん(笑)。
アナログな時代だったからこそあり得た
脱走兵がたまたま乗り捨てられていた車両から大尉の軍服を発見。これを着て大尉になりすまし道中で出会った兵士たちを自分の傘下に置いて権力を振りかざすという今までにないナチスもの作品。
今じゃありえないけどアナログな動乱時代なら有りかと。え〜っ実話なの。終戦間近だとナチスは弱っていたんだね。支配される側が支配する方にまわった際の残酷さに言葉を失った。
誰でも「なれる」怖さ
1945年、ドイツ軍脱走兵ヘロルトは、命からがら逃げる中で偶然にも大尉の制服を手に入れる。初めは同じ脱走兵を、民家に着けば民間人を、「自分は大尉である」と毅然とした態度で欺いていく。罪を犯した脱走兵達の収容で食い扶持がなくなりつつある屯所ではその脱走兵達を殺すことにもっともらしい理由をつける。幾度も正体がバレそうになりながら、偽りの権力は増長を続け……
ヘロルトの正体がバレる?バレない?というサスペンス。本来脱走兵のヘロルトが「脱走兵は軍規に違反する売国奴だ!」と追及するお前が言うななシニカルコメディ。そして笑えない大量虐殺。
事実は小説より奇なりを地で行く話。
そんなの簡単にバレそうなのにバレない。怪しいと思っても借り物の権力に付いていく兵士もいる。創作ならご都合主義だなーと呆れますが、この映画は不自然じゃない。なぜなら実話を基にしているから。
戦乱の弱った人々が毅然とした態度と口先だけの男に扇動されていく様子はどうしてもヒトラーとナチスに被ります。
直接グロはありませんが、人が人を容赦なく殺すシーンはたくさんあります。戦争映画でならそういうのもあるだろうと見るのですが、この映画の場合敵国ではなくドイツ兵がドイツ兵やドイツ民を殺すので後味の悪さがすごいです。
この映画で人が殺されるシーンはほぼ遠巻きに眺めるようなロングショット。派手な殺戮による恐怖を目的には撮られていません。
アップが多用されるのはヘロルトの表情変化。
身分証を求められた時の焦りつつも大尉らしさを失うまいとしている所や、「どこかで見た」と言われてややぎこちなくなる所。
「完全に怪しい」じゃなく「違和感がある」くらいの挙動になっているので、視聴者側も「もしやバレた?まだいけるのか?」というスリルをヘロルト視点で味わってしまいます。
バレたら殺される。バレなければ好き放題できる。ヘロルトの立場に立ったら自分はどうするでしょうか。
自分のために権力に従うふりをする奴、権力者に心酔したように媚を売る奴、やり方がおかしいと思いながら別の権力に従うしかない奴、やり方がおかしいと訴えて殺されてしまう奴…ヘロルトが増長していく点だけでなく、周囲の人間のさまざまな考えもかいま見える所が面白いと思いました。
また、これなら騙されてしまうかもという堂々演技するヘロルトを描く一方、大量虐殺シーンで銃声に合わせて叫ぶ所や、ラストの字幕で保身の嘘をつきまくったことを描写することで、やはりヘロルト自身は卑怯な虎の威を借る狐であり、裁判などでの模範軍人的言葉は虚構であったと示しています。
間違っても「ヘロルトけっこうカッコいい奴じゃん」とならない演出をしっかりしている辺りに作り手のバランス感覚の良さを感じました。
スタッフロールでの、現代の街でへロルトら即決裁判所連中が横暴をふるう様子は「帰ってきたヒトラー」に通じるものを感じました。
この映画が怖いのは、「権力への盲従による愚行」がまた今も繰り返されそう、若しくはすでに今も形を変えて繰り返されているからです。
え!実話なの!?
盗んだ制服で、どんどん偉そうになっていくヘロルト
実際二十歳の男に周りがどんどん騙されていく。
当時のドイツ、ヒトラーの威光、勲章や制服に惑わされ、どれだけ権威主義体制なのかがわかる。
それにしてもヘロルトの口のうまさ、結構堂々としていて確かにその辺の才はあるのだろう。
だがラスト、悪事がばれてまた脱走するあたりが所詮口先だけなんだなぁと落胆する。
まあ、日本もこんな風に口先だけのバカが多いので大して変わらないんだろう。
エンドロールは滑稽でとても良かった。
狂気的
前半はなんとなしに面白おかしく観ていたが、気づいた頃にはある意味引いてた自分がいた。
その狂気的な振る舞いは他の兵隊たちをあざむき、むしろ自分たちが略奪や殺戮を繰り返しエスカレートしていくわけだが、考えてみたら騙すヘロルトも騙される兵隊たちも初めからクズなわけで、最後にはお互いの立場も理解しながら止められない流れの中愚行を繰り返していく。
これが事実だということがにわかに信じられないし、劇中の最後の一言には衝撃だった。
ほんとに本当の出来事か??今の感覚でははかれないほど、めちゃめちゃな時代だったのだろう…
いやぁしかし話変わりますが、はきはきとしたドイツ語ってかっこいいですな!
《鑑賞履歴》
2022/9/12
期待以上!!
予告編から面白そうだなと思って観に行ったら完全に期待以上でした
実話の物語ながらストーリーは面白いし、役者さんの演技すごいし
この映画を通したメッセージ性も考えさせられるところがあり多くの人に観て貰いたい映画
人間の心の闇を見せ付ける
唖然としてしまうような話だが、実話ベースの作品なのだそうだ。
一兵卒の脱走兵が、将校の制服に身をやつし、嘘と演技で言い逃れる内に、残虐な指導者へと変貌していく。
恐らく最初は、脱走兵として処分される事への恐怖、殺らなければ殺られるの心情だったのだろう。
それが次第に、明らかに行き過ぎた虐殺行為へと変わっていったのは、従わせる権力に、他者を虐げる暴力に、快感を覚えたからだろうか。
彼だけではない。部下となった兵士、助かりたい脱走兵、将校の妻までもが、処刑すべき罪人とされた人間に対し、いたぶるように背後から、銃を向け発砲し撃ち殺す。 部下の一部は彼の嘘に薄々感づいているようにも思えるが、それを暴く事はしない。
自分は殺されたくない、という恐怖からの自己保身が強く働くのだろう。人を殺してでも自分は生きたい。責められない欲求だ。けれどそれだけだろうか。
被害者になるより加害者である方が、安心だしマシだし楽しいのだ。狂気のように見えるその行為の、根底に流れる感情は、生き物として人間として、多かれ少なかれ誰もが当たり前に保持しているもののように思える。それが心底恐ろしく、腹の底がずうっと冷えていく。
とうとう捕らえられ、裁判にかけられた時、軍人の上官は、彼の行為を正当化する。「我々も昔はよく銃でやんちゃしたもんだ。それに彼は度胸があるし、友軍に害は加えず、役目を果たしている」大変なブラックジョークだが、これが普通にまかり通る戦時の恐ろしさ。
正に、英雄とは稀代の殺人者なのだ。
エンドロール、主人公率いる即決裁判部隊は、現代の街並みを闊歩し、手当たり次第に人々を捕まえては、難癖をつけ持ち物を没収していく。人々は彼らを不信な目で見やり、憤慨したり反発したりする。
現代では明らかにおかしいと感じられる行為が、当然で仕方がないとして受け入れられていたかつての異常さを浮き上がらせると共に、彼らは過去の人間ではなく、現代にも存在する危険なのだと警鐘を鳴らしながら、物語は終了する。
あなたの隣に、私の中に、ちいさな独裁者は存在する。
怖さと苦さが、消えない後味として残る映画だった。
「小さな独裁者」は今でも世界中にいる。
こんな恐ろしい事実が第二次世界戦争末期のドイツで
起こっていとは、少々驚きでした。
映画のエンドロールになると、主人公たちは、現代のドイツに迷い込む、というか、現れてスマホを手にした普通の人々に傍若無人な振る舞いを行う、これが移民排斥や経済的混乱に揺れる今のヨーロッパの現状とだぶって見えました。このエンドロールのシーンは、単なる
監督のサービスカットなのか、ここがこの映画のコアなのかは観る人次第でしょう。私は前者だと思います。
だって、本編は本当に良く出来た映画だからです。
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