蜜蜂と遠雷のレビュー・感想・評価
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執着と呪縛と好きの解放
コンクールとは不公平で残酷なものである。
どれだけ打ち込んで練習しようとも、審査員に評価されなければ意味がない。
どれだけ情熱を込め気持ちを昂らせて演奏しても、クールな正確さや緻密さがないと点数は上がらない。
かといって完璧なだけでも物足りない。
審査員の好みや何を評価するかも人によってバラバラだし、絶対的な数値で結果は出ないので本当に難しい。
と、学生の頃に団体でコンクールに出場していた身なので、痛いほどの実感がある。
本番直前のステージ裏の風景に見覚えがありすぎて、まるであの頃に戻ったかのようにドキドキした。
ピアノのような個人戦なら見られる点も格段に多いだろうし、プレッシャーも格段に大きいだろう。
母の死をきっかけに舞台から遠ざかっていた亜夜、米国で技術を磨き「完璧」を背負うマサル、妻子持ちで仕事と両立している明石、ピアノを愛しピアノに愛されている塵。
予選を重ねるごとにだんだん混ざり合い変化していく4人の様子と、彼らがたどり着く至高の演奏を描いた作品。
ストーリーやキャラ設定自体はわりとベタなものの、繊細で説得力のある演出と演技がスッと入ってきて、とても面白く観られた。
ほとんどピアノの前で進む物語。
明石以外のプライベートの生活にはほとんど触れず、ただひたすらに彼ら彼女らとピアノとの距離を徹底的に詰めた描き方が印象的。
ピアノに対面する人間というものが濃縮して伝わってくるし、明石が目指した「生活者の音楽」というものが際立って感じられる。
課題、練習、苦悩、本番、の順で繰り返されるたびに成長して何かを掴み取っていく姿に、一つ一つ涙してしまった。
最後の圧巻の演奏には号泣。
それぞれがたどり着いた答えの形があまりにもかっこよくて、惚れ惚れとしてしまった。
私からしたら全員超絶レベルの演奏。
しかし四人とも音の聴こえ方がちゃんと違っていて、各人の目指すものや感情がビンビン響いてくることに感動した。
ほとんど執着や呪縛とも思える「ピアノを弾きたい」「ピアノが好き」の気持ちが、これでもかというほど身体に伝わってくる。
あーちゃんとまーくんの再会の時が好き。
亜夜のちょっと子供っぽい話し方が好き。
月夜の連番で目を合わせる表情と、月光の当たり方が好き。
互いを認め合い影響し合い、仲の良い四人の関係性が好き。
子供に微笑みかける劇場入り口のスタッフのお兄さんが大好き。
飢餓感すら覚える潔い締め方も本当に好き。
ダラダラしない美しさ。
シンプルな結果発表からまた色々と読み解ける。
深読みと希望を重ねて余白を楽しめる最高のラストシーンだった。
ショートボブの髪の毛がちょっとした動きでサラサラと揺れうねる様子がとても好きで、そんなちょっとしたフェチ的なものを満たせる映画でもあった。
亜夜の綺麗なボブヘアーがピアノを弾く時に乱れに乱れる様子、もう本当に堪らない。存分に堪能させていただきました。
ロングや段付きのショートヘアよりも切り揃えられたボブヘアって、少しの振動や動きであちこちに揺れるんだよね。ハァーー好きだなーーー!
身を切るようなコンクールの緊張はもう勘弁かも…と思いつつ、あの頃の一生懸命さって今ではなかなか経験できないよな、と改めて思った。
あーあ、またティンパニ叩きたいしまたボンゴコンガ叩きたいしティンバレス叩きたいしサッシン叩きたいしまたバリサク吹きたいなーーー。
でもあれね、演奏聴いてる時にベラベラ私語する審査員って絶対嫌だね。
原作が読みたくなる作品
原作と映画が違いすぐる
小説読んでからの鑑賞
天才の苦悩
天才の苦悩
楽しかったピアノが
いつしか苦しみにすり替わっていく瞬間
何が原因で彼女が一線から姿を消したのか
母親の死やオーケストラのプレッシャー、
周囲の目など、映像から想像することはできても
詳細に本人の言葉や思考で語られることがないので
もう少し深く知りたいところではある
ただピアノが好きでたまらない
世界を鳴らす人を探す
そんな少年に出会って、元天才少女が
自分のブランクとその間に閉ざされてしまった
心の傷を癒していく
天才ピアニストたちの世界はわからないけど
過去の栄光をなんらかの形で乗り越え、
自分自身の芯を強くしていく、
過去に捉われずに
今を鮮やかに生きていく決意をする。
そんな経験に少しでも覚えのある人なら、
天才でなくとも
共感できる部分があるのではないかと
思います。
原作を読んでいないと理解が飛んで、謎の部分が多くなるのではないだろ...
別世界‼️
引き込まれる作品であった事は間違いない。
ピアノの世界は分からないけど、登場人物がコンテストに込める思いは、他の職業に置き換えて感情移入できると思う。
華やかな職業がエンタメとしてはいいのかもしれないけど、
やはり、ピアノや音楽に精通してない人からすると置いてけぼりにされる感じは否めないかも。
作品のクオリティによっては業界人から叩かれる可能性も大いにある。
芸術をテーマにした映画やドラマは雰囲気作り以外にも登場人物のバックボーンを作り込む必要があるし、演奏シーンも役者は人物の複雑な感情を表情一つで表現する為に繊細な演技が求められるから、話題性だけでキャスティングすると作品の品質を下げるリスクもある。
蜜蜂と遠雷は、原作があるので登場人物のバックボーンはしっかり描かれていた。
キャスティングは知名度も演技力もある俳優を揃えていたので、そんなに違和感は感じなかった。
風間塵を演じた鈴鹿央士君は演技の型にはめれば不自然なんだけど、風間塵という人物に擬態してると考えればエグいほど自然体な演技だったから、逸材感は凄い感じた‼️
その他、気になった点
・鹿賀丈史が本物の指揮者にしか見えなかった‼️
・作品の緊張感は片桐はいりでは緩和出来ない…
・ブルゾンちえみのセリフ量が多い。
いい作品でした。
原作を読んで無いので、これを期に拝読しようと思います。
松岡茉優が震えていた
消えていたピアノの天才少女が7年ぶりに戻って来てコンクールに出場するところから物語は始まります。
3人の天才と1人の努力家の対比。
大好きな母の死から弾けなくなってしまった天才少女の苦悩。
あの時……亜夜がドタキャンした時にも担当していた
このコンクール会場支配人の田久保寛役として平田満の言葉のない彼女への思い。
この世界は音楽で溢れている、この世界の音はあなたが鳴らす。亡き母の笑顔に天才は蘇るのか?
松岡茉優が震えていた。今までのあらゆる想いに。
松岡茉優のラストシーンが圧巻でしたね。
コンテストの順位に物言いを入れたかったりして。
でもあの結果でよかったんですよね。
一般人は「天才の苦悩」には共感できない
まず第一に、原作は「天才がいかにスゴイか」を筆を尽くして書ききった作品であり、そこがとにかく素晴らしかった(ここでいう「天才」には、個人的に努力し続ける才能を持つ高島明石も含めている)。
しかし今回の映画化にあたっては、2時間という枠に収めるうえで「天才の苦悩」という分かりやすいドラマにはめ込もうとし、そして失敗をしている。
「苦悩」を描くのが悪いわけではない。事実、同日に公開された「JOKER」は主人公の苦悩を延々と描いて素晴らしい作品になっている。「蜜蜂と遠雷」の劇場版のダメな点は、「苦悩」の本質を描くことから逃げ、敵役(ジェニファ・チャンと小野寺)を登場させることで彼らを一時的に葛藤させただけで終わっている点だ。
「天才の苦悩」に私たちのような一般人は共感できない。だから、天才を描く作品では、「天才のスゴさ」にフォーカスするべきなのだ。本作では4人の天才たち(繰り返すが、私自身は努力する才能を持つ明石は天才の一人であると思っている)の「天才」を描ききれていない。亜夜にいたってはラストシーンでのみ突如天才然とした演奏をしてみせるのだが、それまでの展開で彼女の天才性が描かれていないため、突然過ぎてまったく説得力がない。
ピアノコンクールの話なのにほかのコンテスタントの演奏シーンがほとんどない点、原作におけるキーパーソンであるナサニエル・シルヴァーバーグと嵯峨三枝子の関係性が描かれなかった点(三枝子がシルヴァーバーグの離婚に言及するセリフがあるが、あれは当の相手が三枝子だと分かるようなセリフではなかった)、「木の鍵盤」という安直なツールを出すことで風間塵の天才性が霞んでしまった点、小野寺とオーケストラにされたダメ出しを3人が克服するエピソードの描き方に不足がある点 (そもそも、あんな状況ならもう1回ずつリハをやるでしょう?) など、数々の要因により、原作のエッセンスすら感じられない映像作品になっていた。原作の絶大なファンとして残念でならない。
末筆ながら。本作にはほとんど登場していないが、本戦の協奏曲はもちろんとして、第一次予選、第二次予選、第三次予選(そう。原作で予選は第三次まであったし、映画の中でも冒頭で「3つの予選がある」と英語でアナウンスされるのに、映像では二次のあといきなり本戦でしたね…)で4人が弾く曲の全てを、実際に4人のプロピアニストが演奏して録音したアルバムが発売されている。映画を見て興味をもった方は、ぜひ聴いてみて欲しい。まあ、そこまで音楽に労力をかけておきながら、映画で4つの「春と修羅」と、3つの協奏曲のさわりしか聴けなかったのは非常に物足りなかった… (砂浜のシーンとかいらないから、もっと曲が聴きたかった…)。
求めよ、されば与えられん
良くも悪くも音楽映画
ピアノ演奏シーンの配分に不満
小説読んだ時から映画化を楽しみにしてて、曲名でメロディーがすぐに浮かぶ程のクラシック通でも無いし、読んだ後にyoutubeとかで聴いてもイメージ湧かないから、大分端折られるだろうけど小説のダイジェスト版みたいに演奏シーンのいいところが聴けるんだろうなって思ってたら。。
⚫︎一次審査の演奏全飛ばしでいきなり春と修羅?いいけどちょっと耳慣らししたかった、あと小説読んでない人おいてけぼりじゃない?
⚫︎なんか演奏シーンのいいところは会場外のモニターで喋りながら見てる。。
⚫︎最終審査もマサルとジンはぶつ切り。。ジンの演奏シーンに挟まったアヤと母親の回想シーンであくびが出た。
⚫︎アヤの演奏シーンだけなんとかまともに聴けそうだけど、途中で母親の亡くなったシーンとか、なんか挟まるんじゃないかと思って安心して聞けなかった。しかもマサルが優勝のはずなのにまるでアヤが優勝するかのような配分の不公平さ。もうちょっと他の2人にも見せ場をあげて誰が優勝か最後までハラハラ分かんないってくらいにして欲しかった。
メインの配役は明石以外小説とイメージ違ったけど、これもありだなって感じで良かった。(マサルは西洋人顔の王子様オーラ全開な感じ、ジンは純日本人顔で想像してた、浮世離れした妖精みたいで可愛い)
ジェニファー・チャンは感じ悪すぎて名前が出る前に直ぐに分かった。ただの意地悪な奴みたいでちょっと可哀想だから一次審査とかでちょっと演奏シーン入れてあげても良かったかも。
もうちょっとぶつ切りじゃなくコンテストの緊張感が伝わるピアノ演奏聴きたかった、春と修羅作曲してくれたのはありがたいからしょうがないか。。なんか良くあるダンス映画みたいに最後の数分で見せ場作ったら満足でしょ、みたいな配分だった。やっぱりちゃんとCD買って小説読み直そうかな。
台無し
いやもうストーリーとか演技とか間の取り方とかマジで最高だった。
張り詰めた感じが最後までずっとあるのに全然見にくくない。
メインの4人が4人ともしっかりと印象に残るし、かと言ってクドくない最高の演技だった。
塵役の鈴鹿央士さんは新人とありましたが「本当に新人?」と思うような素晴らしい演技でした。これから凄く楽しみです!
松坂桃李さんは流石!日本アカデミー賞俳優!って感じの演技でした。高島明石の一般人としての優しさとピアニストとしての葛藤というか狂気みたいのが凄い伝わってきました。
森崎ウィンさんもレディプレイヤー1のイメージが強くて大味な感じかと思いましたが、とても繊細でかつ自分の中の完璧を目指すエゴがとても良かったです。
そして松岡茉優さん!いやもう良い意味で裏切られた!
過去のトラウマを乗り越えたくて、乗り越えられなくて。
でもそれを塵、明石、マサルの演奏を聴いて力をもらい、最後は自分で閉じこもっていた感情を解き放った感じがしました。
最近の彼女の演技を見ていませんでしたが、どこかもう一押し足りない俳優さんだと思っていましたが、今回はガツンと!胸を打つ演技でした!
が
もう本当に残念なんですが、
松岡さんの演奏シーンが露骨に弾いてない!
完全に当てぶりだし、違う人が弾いているというのがあまりにも!分かり易すぎる!
これだけ素晴らしい作品なのに!
もう少し何とかならなかったんですかね?
あとの3人は何とか違和感も少なく見れましたが、もう本当に残念でした。
それさえ見なければとても良い作品でした。
次の日本アカデミー賞には是非ともノミネートしてほしい素晴らしい作品です。
それだけに本当に惜しい。
音が良かったです!
蜜蜂はどこに行った?
コンクールに臨む4人のピアニストの物語。
それぞれの背景をまるでドキュメンタリーを見ているような演出で描写
それぞれ異なる手法での演奏シーン
ほんとうに演奏シーンは圧巻でした。
クラッシック音楽になんの造詣もない自分でも
最後の亜夜の演奏シーンでは息するのも忘れるほどの迫力でした。
あの原作をとてもよく練り上げられた脚本と編集で2時間という枠の中に上手に収めたのは
素直にすごいなと。
でもなんです。
原作を知っている一観客としてはちょっと置き去りにされてしまったような
この物語の主演のひとりはあくまで「蜂蜜王子」でもあり
すべての既成概念を壊す象徴として塵が描かれていたと思うのです。
原作者の恩田さんが描いたものは亜夜の覚醒復活物語だけではなく、ホフマンが残した「ギフト」も大切な主役なんだと思うのです。
この脚本だと蜜蜂も遠雷もみえてこない
水平線の向こうに見える雷雲も安直な描写だなと感じてしまう
雨の馬の描写だけでは、残念ながら亜夜が幼少の頃に聴いていたギャロップが聞こえてこない
無数に飛ぶ蜜蜂を音符に例えて、その蜜蜂から聞こえる羽音が音楽を奏でる
世界は無数の音楽に溢れているという情感が沸いてこなかったのが寂しいのです。
個人的に映像として見たかったものは
復活の亜夜に「お帰りなさい」と声をかける田久保寛であり
亜夜の演奏に胸がいっぱいになる奏が存在する物語でした。
原作を読むこと必須の作品かな
自身がピアノにずっと関わってるので、単行本が出てすぐ読んだけど、不思議と本の方が情景やメロディーが頭にスッと入ってきた。
映画は勿論、音が直接聴けるし4人の弾き方の違いなどしっかりしていて、素晴らしいんだけど、、
やはり、2時間では描ききれていないところが沢山あるのが残念。
ピアノ演奏がとても多いし、春と修羅はカデンツァはあるものの同じ曲を4人とも弾くし、プロコフィエフやバルトークも少々マニアックなので、あまり音楽に興味がない人だとつまらないだろうなぁと感じた。
でも個人的には、ライブの様な臨場感もあって、映画館まで行ってよかったなと満足できた作品。
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