劇場公開日 2019年4月19日

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キングダム : インタビュー

2019年4月18日更新
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“ハマり役”を超えた“役への没入” 山崎賢人吉沢亮大沢たかおキングダム」で見た天下統一の夢

原泰久氏のベストセラー漫画を実写映画化した「キングダム」が、4月19日から公開を迎える。超人気かつ超壮大な漫画の実写化とあって、その第一報はネット上をざわつかせた。不安の声も多かった。しかし完成した今作を見れば、その思いは即座に払拭されるはずだ。信役で主演した山崎賢人(崎はたつさきが正式表記)、えい政/漂役の吉沢亮、王騎役の大沢たかおは、ハマり役どころではないインパクトを残している。(取材・文/編集部、写真/間庭裕基

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「生まれ変わり」といっても過言ではないほどの、役への没入。3人にインタビューを行う間、そんな思いが脳裏に焼きついて離れなかった。山崎と吉沢の燃える瞳に、大沢は信と政が目指す天下統一の夢を見た。大沢の屈強な背中に、山崎と吉沢は王騎が待つ遥かな頂を見た。「大げさだ」と思うだろうか。筆舌に尽くしがたい彼らの“本気”が注がれ、紀元前の中国で繰り広げられた戦乱の歴史と混交した撮影現場に、しばし思いを馳せていただこう。

――王座奪還のクライマックスで、信と政は王騎に相対します。長期にわたる中国ロケの序盤でそのシーンを撮影したそうですね。中国ロケはいかがでしたか。

山崎「映画の信は、子どものころに見た王騎に憧れているという設定。大沢さん演じる王騎を最初に中国で感じられ、圧倒され、そこから日本に帰ってきました。良い撮影順だったと思っています。セットもすごい。馬の数も圧倒的。中国でのクランクインは、本当に意味のあるものでした」

吉沢「大沢さんの王騎と一緒に芝居する緊張感……。体から出る説得力やオーラ、お芝居、いろんなものがすごすぎて。その王騎を納得させないといけないシーンだったので、吐きそうなくらい緊張していました(笑)。その経験が非常に貴重でした。豪華な方々ばかりのなか、僕は王としていなければならない。その緊張感や責任感が、王騎と対峙したからこそ芽生え、その後の撮影に大きく影響しました」

大沢「主人公の2人と対峙するシーンを序盤に撮影してもらったのは、非常に良かったよね。2人は役というよりも、そこに“人間”としていた。びっくりするくらい本当にいい目をしていて、『これから天下を取る人は、きっとこういう目をしているのだろう。この2人は本当にこの国を統一していくのだろう』と思った。僕だけじゃなく、他のおじさん俳優やスタッフたちもすごく影響されたと思う」

――3人が対峙するシーンでは、それぞれがその場で何を感じ、何を得たのでしょうか。

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山崎「大沢さんの大きさを感じ、今後、自分がこの仕事をやる上で見ていく景色を(大沢は)見ているんだろうなと思いました。そのとき、自分たちが見据える先は途方もなく遠いと、リアルに痛感したんです。信としては、憧れでもある最強の大将軍に名乗ることすら本当はびびっている。でも絶対に目に留めてもらいたい。そんなリアルな緊張、リアルな武者震いをしていました。役を通り越して大沢さんの大きさを感じる、すごく良い時間でした」

――プレッシャーに押しつぶされそうな瞬間はなかったのでしょうか。

山崎「プレッシャーに押しつぶされそうな瞬間は、たしかにありました。でも、この作品はそういうこともパワーになりました。信の力になっていった。過酷になればなるほど『やってやる』と力がみなぎってきて、自分でも不思議な感覚でした」

吉沢「緊張感や責任感がものすごかった。そのシーンを演じる前より、肝が座った気がします。あの空気感とぶつかって乗り越えていく。こんなにカメラが回ることが緊張する現場はなかった。人生において何度か経験しなければならない山場や壁が、『キングダム』にはたくさんありました。『もう並のことじゃびびらねえぞ』という精神はかなり備わったと思います。怖いものなし、というわけではないですけど(笑)、今後の役者人生にも必ず生きてくると思います」

大沢「芝居って、本気で対峙していくことしかできないんですよね。それを改めて、2人から見させてもらった。僕の年齢でも、本作を見終わった後に『夢って良いな』と思った。エレベーターの中、1人で『アツいのって良いよな』とぶつぶつつぶやいた。何言ってんだおっさん、って感じだけど(笑)。2人のように命がけで恐怖に対峙しながら乗り越えて、人間として男としてぶつかってきたからこそ、これほどの作品になったんだろうなと心震えた。それを僕は現場で見ていた。これほど期待されている大作ですから、ボロクソ言いたい人も当然いらっしゃるじゃないですか。でもこの2人とスタッフ、監督となら、どこまでも勝負したいと思った」

――これだけの大作の主役を、山崎さんと吉沢さんの年齢で経験できるということは、大沢さんから見てどうでしょうか。

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大沢「最高ですよね。でも、それは選ばれし者だから。世界中、何人しかその場にはいられないし、この役は1人しか演じることができない。役をとるとかとらないじゃなくて、縁なんです。神様が決めるんですよ。それを担うだけのものを持っていて、乗り越えられる人にしか、あの役はできない。ぶっちゃけ僕、信役を狙ってたんだけどね(笑)」

山崎&吉沢 爆笑

――信のアクションについてお聞きします。朱凶に剣をガンガン振り下ろす動作など、アクションに信の激情のすべてがこもっていたように感じました。大事にしていた点なのでしょうか。

山崎「アクション監督の下村勇二さんと『見たことのない、信にしかできない野性的なアクションをやりたい』と話していました。ぴょんぴょん飛び跳ねたり、型にはまっていない動きをどんどん作っていきました。そのなかで、気持ちが大事だと感じていたんです」

「ある程度アクションの型は決まっていましたが、気持ちが入ると、どんどん型と合わなくなっていくんです。しかし型からはみ出していくことが、実は面白かったりします。型どおりに撮影した後、『怒りに任せて自由に叩き込んで』と言われたり。そこはひたすら打ち込んだり、思いを十分乗せられました。いろんな敵と戦うことは面白かったし、いろんな種類のアクションができ、自分のなかで成長を感じられました」

――大沢さんの王騎には、その存在感に何から何まで驚がくしました。立ち方、口調、オーラ、すべてが王騎そのものでした。

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大沢「原作のキャラクターは、人間離れしているじゃないですか。さすがにイコールは厳しいですが、近づけられるものは近づけようと思った。そして原作では、その存在によって信と政が何かを得ていくという意味で、王騎はキーパーソンでもあります。そんな存在ではありたいと思った。だから見た目のインパクトを強くだとか、キャラを濃くだとかは一切しなかった。それをやってしまうと、あまり面白くないとも思った」

――信と政が洞窟内で殴り合うシーンでは、山崎さんの熱に感化され、吉沢さんのボルテージも上がっていったそうですね。

吉沢「僕は最初、暴れる信に対し冷静に言い聞かせる芝居をしようとしていたんです。でも、賢人があまりにもすごい熱量で来て。そのとき『これは冷静では無理だ。言っても、この信は話を聞かない』と感じたんです。熱に感化され、自分が想像していたよりも声を張り上げたり、取っ組み合ったりと、熱い芝居になりました。予定していたものとは違いましたが、それが逆によかった。賢人に引っ張ってもらったシーンでした」

――お互いが高め合ってレベルアップしていることが、よく伝わる素晴らしいシーンでした。

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山崎「今回で4回目の共演ですから、安心感と気を使わない部分もあって。『ここはいくよ』『OK』と、言葉をそこまで交わさなくともつながるんです。洞窟のシーンも、生のやりとりが生まれてよかったです」

インタビューが終わっても、3人は肩を寄り添わせて言葉を交わし続ける。「洞窟のシーン、山崎くんに感化されて、吉沢くんの目がポン、と変わったでしょ。すごく良かった。素晴らしかった」「2人とも、爪の跡と傷で血だらけでした」「猫と戦ったのか、みたいな(笑)」。そこには年齢もキャリアも垣根も存在しない。ただただ純粋に、演じることに人生をかける男たちが、天下を極めんと発する情熱が渦巻いているだけだ。3人の後ろ姿に、信、政、王騎が重なりまぶしく見えた。

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