ディリリとパリの時間旅行のレビュー・感想・評価
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リアルで洗練された絵が凄すぎる
絵がとにかくすごくて、美しくて、話も分かりやすくて面白かったので、常に見入っていた。 音楽の使い方も秀逸だと思ったし、音楽による感動がもっとも強かったように思う。 街並みのあまりのリアルさが、たまに人物と相反しているように感じたけれど、細部までこだわり抜いたであろうその形状を目の当たりにすると、そんな違和感など吹っ飛んでしまう。 偉人がたくさん出てくるという面白さよりも、この絵の凄さ、素晴らしさを是非とも堪能してほしい。 衝撃的なアニメーションでした。
にゃんこスター
ニューカレドニアから来た少女が、パリの少女連続誘拐事件に挑むというフランス製のアニメーション。少女がパリでうろうろするあたりは「地下鉄のザジ」みたいだが、なわとび少女と男性のコンビという点では(最近見ないが)にゃんこスターのようでもある。
洗濯船時代の画家や彫刻家、音楽家があれこれ出演しており、いつぞや映画で見た黒人芸人のショコラもダンスを披露する。配達人の部屋には、広重の「庄野白雨」が貼ってあったり、とにかくにんまりするような小ネタが入っている。彩色もアメリカのアニメーションとは一味違ってよりアートな感じだ。
とは言え、犯罪の真相がいくら何でもおぞましすぎる(まるで“人間椅子”だ)。もうちょっと楽しげな事件にしてほしかった。
あと、邦題の「〜時間旅行」って何なんでしょう。SFと勘違いされそうで、意味不明です。「〜パリ大追跡」ぐらいでよくないですか。
ベル・エポックとは無関係なドタバタ劇にがっかり
字幕版で鑑賞した。
「ミッドナイト・イン・パリ」のような、パリの黄金期の風情を楽しめる映画を、自分は期待していた。
確かに、街中のポスターやアイアンワーク、建物の壁面、最後の方で出てくる豪華なサラ・ベルナール邸などでは、アール・ヌーヴォーの香り高きアートを見ることができる。オペラ座も新しい。
だが、残念ながら、たったそれだけだった。
ベル・エポックと何の関係もないストーリーには、正直がっかりした。本作においてベル・エポックとは、単なる小道具にすぎない。
ラストの電飾された飛行船も、取って付けたような印象だ。せっかく飛行船を使うなら、「魔女の宅急便」くらい、しっかりとやって欲しい。
ごく普通に、当時の様々な人々とふれ合う展開だけで良かったのに、よりによって架空の“誘拐団”を持ち出して、表社会に背を向けて地下に潜るとは・・・。
なぜ残酷なテーマを、中途半端な形で持ち込んだのか理解に苦しむ。海外のレビューを観ると、「子供が見るにはふさわしくない内容」という批判が、意外にも目立つ。
それだけでなく、主人公ディリリの、ニューカレドニアとフランスの混血という出自が、(冒頭以外は)ストーリーと関係がないのは疑問だ。
確かに、「今度は私が観光する番よ」と、パリの何もかもが目新しい少女という設定が欲しいのは分かる。また、普通の子とは反応が違うという、面白さもある(紳士の服装を見て「喪服なの?」と尋ねるシーンは微笑ましかった)。
しかし、フランス系カナカ人に対する人種差別に触れるのならば、もっと掘り下げるべきだろう。結局、話としては、アメリカ人でも誰でも良かったように思える。
当時の文化人が、お約束のように、多数登場したのは、予想通りだった。
キュリー夫人、プルースト、レイナルド・アーン、サティ、コレット、アンリ・ルソー、マティス、シュザンヌ・ヴァラドン、ルノワール、ドガ、ロダン、カミーユ・クローデル、サントス・デュモン・・・。
その存在が明示されていなくても、「ウォーリーを探せ」的な楽しみ方もできるだろう。自分は、バーでディアギレフを見つけた。
また、ディリリのニューカレドニア時代の先生というのは、ルイーズ・ミシェルというアナーキストらしい。
なお、(ディリリやオレルと共に行動する)エマ・カルヴェ役の声優が、有名なオペラ歌手のナタリー・デセイと知って驚いた。
しかし、文化人の出演の仕方は、ほとんどの場合、単なる“こじつけ”であって工夫がなさ過ぎる。
彼らの存在で“箔付け”をしているだけの「虎の威を借る狐」の映画であって、この点が一番不満なところだ。
例えば、ピカソやモネと出会うのだが、画家とするべき会話内容ではないだろう。ドビュッシーは、ちょっと会話して去って行く。パスツールを出したいためだけに、犬にオレルを咬ませている。ポール・ポワレは、売り出し中とはいえ単なる仕立屋だ。ロートレックは、なぜか探偵の手伝いをする・・・。
せめて何人かは、ストーリーと密接に結びついて欲しかった。
出演の仕方が面白かったのは、英国皇太子エドワード(のちの七世)だけで、のほほんとした感じがキャラに合っているように思われた。
それでもともかく、ストーリーさえ面白ければ、許せるだろう。
しかし、混血のディリリ、ベル・エポック、組織的誘拐事件という3者が、全くかみ合っていない退屈な作品だった。
「男性支配団」という誘拐組織との対決が本格化すると、ドタバタした劇になってしまったのは残念。「当時の女性差別を象徴的に扱っている」という論調があるが、それなら象徴的ではなく、表社会を直接描くべきではないだろうか?
正直なところ、最後の方は、眠くて仕方がなかった。
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