「剥き出しのナイフを無意味に振り回してくる作品。」タロウのバカ マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
剥き出しのナイフを無意味に振り回してくる作品。
以前から気になっていた作品でやっと観賞しました。
で、感想はと言うと…う~ん、なんと言うか…観る人を選ぶ作品と言うのは間違いなくて、いろんな事が衝撃的でパワーがあるんですか、そこに意味を見出ださない虚無感の漂う作品かなと。
タロウとエージとスギオの3人が日々を刹那に生きていき、その中で拳銃を手にした時から、いろんな事に自分の欲望をぶつけていくんですが、これが共感出来る部分が正直少なくて、観ていて不安と不快感がモヤッと感じられるんですよね。
「時計じかけのオレンジ」程のメッセージや拘りを感じられず、それでも何処か時計じかけのオレンジ的なのがにわかに顔を出したりする。
学校に1度も行った事の無いタロウは社会との繋がりが殆どないからこそ、自身を縛る物が無いから強烈な程自由で天真爛漫。
スポーツ推薦で高校に入ったエージは膝を怪我してから、自身の価値を見失い、反発するかの様にワガママに暴走する。
いろんな事に流されがちなスギオは気の弱さもあって、次第にいろんな事を踏み外していくが、好きな洋子の事を思い、自分の立ち位置を流されながらも見つけようとする。
三者三様で周りから弱者とされる事に反発し、ワガママに思うままに疾走していく。
動物的なタロウ。動物になろうとするエージ。動物に成りきれないスギオ。
そんな3人の葛藤でもあるんですが、この作品の共感出来そうで出来ない部分でもあります。
3人だからこその青春の暴走とも言えるし、社会を始めとしたいろんな事から見放させれてきた鬱屈した気持ちの爆発とも言えるし、自身の解放とも言えるんですが、強烈にワガママで、無意味な疾走でもあるんですよね。
大人だから感じられないのかも知れないけど、かと言って共感出来る様にはあんまりなりたくはないですw
あと個人的にちょっとどうなの?も思えるのが障害を抱えた人をストレートに弱者とした所。
勿論、社会的強者ではないし、かと言って、タロウ達が弱者の代弁者として振る舞っていくかと言うとそうでもない。
単に世間から縛られている部分が少ない未成年がワガママに暴走していく部分が多くて、障害を抱えた人が無意味に可哀想感で表現しているのは正直嫌な気持ちになると言うか、そこに意図が感じられなかったです。
終盤のスケキヨマスクの面々の戦いの狼煙的な表現も急にああいった場面が出てきて?な感じ。
生々しい現実の中の無常感を描いているのに、あの場面だけいきなり演劇チックで意味の分からなさにより拍車を掛けました。
勿論、作品の伝えたい事はなんとなくではありますが、感じようとしていても、分かんない事や唐突な事、生理的に合わない事、イラッとする事が沢山散りばめられていて感が単に個人的に合わなかったにしても、ここまで無意味的感じる事を青春の咆哮と疾走でまとめる様に描かれるとやっぱり合わないかな。
監督はあえて共感出来ない青春のワガママな暴走を描きたかったのかなと考えたりします。
あと、舞台が足立区の綾瀬で過去に凄惨な事件があって、都内23区の中でも何処か鬱屈した空気を醸し出していて、取り残された様な下町感は舞台とした合ってはいますが、住んでいる所のご近所過ぎて、“そこまで変で悪い街じゃないよ”と思ったりしましたw
救いな所は変に性に走ったのが無かった(少ない)事。
ドキドキ感が少なくて、ちょっと残念でもw、安易に女性を凌辱するとかの表現が無かったのは、まだ救いで、そう言う表現は表現方法の1つであっても個人的には嫌いと言うか、それを出されると乗り切れないです。
タロウ役のYOSHIさんは強烈にタロウを演じていてハマり役と言えばハマり役。
ただ、タロウ役以上に感じられる事がそれ以上でもそれ以下でも無いので、次の作品でどんな演技をされるのかは気になります。
エージ役の菅田将暉さんは流石に振り幅が広い。
1ヶ月程前に公開された「アルキメデスの対戦」の演技とは真逆ではありますが、菅田将暉さんはどちらかと言うとインディペンデント系の作品で本領発揮される役者さんかなと。
この作品はYOSHIさんの足りない所を菅田将暉さんが上手くカバーしてます。
國村隼さんの使い方は贅沢だなぁw
先日観た「永遠に僕のもの」程のメッセージも感じられないし、時計じかけのオレンジ程のスタイリッシュも感じられない。
剥き出しのナイフをブンブン振り回して、分かってくれよ!と言われても分からないし、正直分かりたくない。
でも剥き出しのパワーを嫌らしいくらいに意味なく振り回してくるちょっと稀有な作品です。
観ないと始まらないし、観ても合う合わないは個人的な評価でしかありませんが、いろんな事を大森監督的に詰め込んで、いろんな意見の中に敢えて否定的な部分を強調したのかなと解釈したいです。
大森監督が担当した「日日是好日」はかなり好きな作品なので、真逆過ぎてこう考えます。
他の方も書かれてますが、なかなかパワーがあって、観る側に何をこそげ落としてくる作品ですw
インディーズ好き姉さん
コメントありがとうございます。
感想は人それぞれなので、様々な意見がある中の一つとして捉えて頂ければ幸いです。
もしかしたら、改めて観ると感想が変わるかも知れませんが、鑑賞後の今でも何か引っかかり残る作品であるかと思います。
でも、こういう作品は好き嫌いは別として、何かを産み出すパワーを秘めているのは確かです。
また、お暇がありましたら、覗きにきて下さいね。