劇場公開日 2019年9月6日

タロウのバカ : インタビュー

2019年9月5日更新

大森立嗣監督が見出した、型破りの新星YOSHI「俺みたいな奴が変えていかないと」

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大森立嗣監督が、デビュー前からあたためてきたオリジナル脚本を映画化した「タロウのバカ」が9月6日公開される。社会の枠組みから外れ、無軌道に生きる3人の少年の無垢な狂気と暴力性が、見る者の心に傷を残す問題作だ。主演は、日本映画界を揺るがす型破りの新星YOSHI。演技未経験ながら、菅田将暉仲野太賀という若手実力派に支えられ、「時計じかけのオレンジ」のアレックスさながらの存在感を見せつけた16歳は、「俺みたいな奴が変えていかないと」と閉塞感溢れる現代社会に挑みをかける。(取材・文/編集部 撮影/松蔭浩之

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--大森監督が、デビュー前に書かれた脚本をこのタイミングで映画化することについてお聞かせください。

大森 最初に書いた脚本で、自分が中学生くらいだった頃の思いなど、いろんな記憶がいっぱい入っているので、他の作品とはかなり異なっていて。原作ものとは違うオリジナルですし、誰かに頼まれて書いたわけではないので、自分の分身みたいなものです。ずっとやりたかったけれど、内容も内容だから実現はなかなかな難しかった。これまで映画をいくつかやってきて、撮りやすい環境ができてきて、ああ、できるかもしれない、ということで。だから、今このタイミングで、ということではないんです。20年以上書いたものを、ずっとやりたいと思い続けられているということがよかった。

--YOSHIさんにとって、映画出演も演技も始めての経験ですね。

YOSHI 映画は好きですけれど、こういった日本の(インディペンデント)作品は興味がなくて。たっちゃん(大森監督)の映画も「セトウツミ」の予告編くらいしか知らなかった。だから、こうやって出会えて、すごく面白いなと思いました。この映画は、たっちゃんズ、スペシャル。撮影現場はもう最高でした。毎日「ぶりぶりちんちん!」とか下ネタが飛び交う、下品な現場(笑)。(菅田)将暉のことも名前しか知らなかったけど、現場に入る前に、一度飯に行って、そのときに仲良くなって「将暉、よろしくね」って。そして衣装のフィッティングのときに彼の家に泊まったりもしました。自分だけでタロウになれるのではなくて、やっぱりスタッフの力が合わさっての「タロウのバカ」。自分でもタロウだったけど、みんなが作ってくれたタロウだと思う。愛のある現場でした。

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--YOSHIさんと出会うのを待っていたかのような運命的なタイミングで映画化されたと言っても過言ではないですね。これが大森さんのデビュー作だったら、YOSHIさんはいなかった。

大森 完成を見たときに、本当にそういうことだな、と思いました。YOSHIのパワーをそがないようにするのが、今回の俺たちの仕事だと考えていて。怖いおじさん達が「あの子どもどうにかしろよ」とか、そういうことは絶対言わないように、YOSHIを受け止めることが俺たちの仕事だって、それを菅田たちも理解していたと思う。

社会に絶望してるとか、言葉で言ってしまうとよくないな、と思うんです。映画を見てもらえれば分かるし、今はなんでも分かりやすい言葉で言いがちになっている気がして、いろいろと言い淀んでしまいます。たとえばYOSHIに演出するときは、分かりやすい言葉で説明はせずに、「いいから、やってくれない?」って言っていました。今、SNSとかでいろんなことが言いやすくなっていますが、言葉にして規定することって、本当はもっといろんな可能性があるのに、自分のことを規定してしまうのではと思うんです。もう少しいい加減に、言い淀んだり、どもること、そういう感覚の方が面白いと思うんです。YOSHIはプロの俳優ではなかったし、これまでの俺とプロの俳優との付き合い方とは全然違うんだけど、それは俺の中の言い淀み、プロには伝えることをYOSHIには言えないなって、そういうことに気づけたのが面白かった。そしてそれが、彼の可能性も広げていくんじゃないかな。

YOSHI 俺は、プロとプロじゃないとか、どうでもいいと思ってる。それは第三者が決めることだし。この前、「みんな人間の原点を忘れてる」ってたっちゃんが言ってたけど、今は、その行方を完全に見失っている社会になってると思う。俺たちみたいな人間が、型に押し付けられてるのがつまらなくて。この映画は、欲がすごいんです。欲するがままに突き進んでいく。なんか、人間って、そういうレトロな心を持っていたほうが面白いと思う。この映画を通してそういう気持ちをフラッシュバックさせたいし、俺みたいな奴が変えていかないと。

--レトロな心を具体的に言うと?

YOSHI 欲だったら、男のロマンと言われたものが、今はないと思うんです。例えば、カッコいい時計が欲しい、家が欲しい、スポーツカーが欲しいとか。俺はそういうの、超好き。今の子達って、生きてる目的や憧れがないんだと思う。あと、とにかく経済のギアが動いてない。俺にとっては、目的が無くなった時点で死んでるのと同然です。みんな単純に人生を楽しんで欲しいし、この映画を見て、それに気づいて欲しい。

--大森監督がこの物語を構想された当時は、今とはまた時代がまた違いましたよね。

大森 今は、排除や規制をしていくことがものすごく強くなりすぎていて、これで本当に人間幸せになれるのかな?っていう感覚があるし、みんなこれおかしくないか?と思いながらもルールに従ってる感じがする。そういった社会のルールでしか物事を見ないことに寂しさを感じます。でも、俺は社会的な何かを訴えようと思って、この脚本を書いたわけではなくて、自分がその瞬間に思ったことを、YOSHIみたいに衝動的に書いたんです。何かを強く言いたい、とかではなく、それよりはこういう人を撮りたい、こいつら何を話すんだろう、ピストル持ったらどこに行くんだろう、ということを考えていました。

YOSHI たっちゃんには、そうやって突っ走っていって欲しいよね。

大森 歳だから、足は遅くなってるぞ(笑)。

YOSHI でも考えは突っ走れ、そうじゃなきゃ人生終了しちゃうよ。

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--そんなYOSHIさんが今、目指すものは?

YOSHI 俺が今後やりたいのは、日本と海外の距離を近づけるグローバルなこと。日本の映画界がハリウッドのレベルに達したらすごいと思うし、そういうことを、俺はやりたい。マイケル・ジャクソンカート・コバーンデビッド・ボウイジミ・ヘンドリックスとか、俺は日本人として、そのレベルまで行きたい。俺はカルチャーが本当に好きで。今の俺の世代の人たちは、追い求めることをあまりしないのかな。情報がたくさんあるからか、すべての物事が軽い。たくさんの物事を見て、俊敏に扱うことも大切だけど、それをある程度掘り下げないと。

今、アーティストとして、いろんなことやってるんです。今回俳優をやって、音楽、アート、ファッションデザイナー、モデルを同時にやってます。自分のいいところは、自分を第三者感覚で見られること。普通の芸能人はチームがいて、そこから始まっていくけれど、俺は完全にひとりで始めたんです。だから自分がマネージャーでもある。自分の第三者感覚を、自分という第一者が追い求めているんです。第三者の自分を常に追いかけてるのが自分。俺、結構まじめなんです。セルフプロデュース力は世界一ですよ(笑)。俺は、世界に行きますよ。だから、たっちゃん、いっしょにやろうよ。

--そういったYOSHIさんの気概も含め、若い世代に見て欲しい映画だと思いました。

YOSHI 賛否両論がある作品が増えて欲しいよね。誰もが同じ意見にたどり着くんじゃなくて、みんなが違う意見を持つ作品が面白いと思う。

大森 あとは教育も大事だと思います。例えば東京国際映画祭で、若い世代が見たほうがいい1本を紹介するとか、そういうことをやったらいいと思う。まずは映画を見る習慣をつくらないと。

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--YOSHIさんのような存在が映画界に現れたことは、明るい話題だと思います。

大森 こういう奴を受け取る側、映画界に受け取る土壌があるのか、破天荒でバカをどこまで才能として認めるのかが重要ですよね。これまで、こういうめちゃくちゃな奴らをつぶしてきたと思うので。

YOSHI 俺は時代の3歩くらい先に行きたい。1から10のことじゃなくて、0から1をやりたい。場数を踏んで、大変なことを成し遂げたいんです。

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