カーマイン・ストリート・ギターのレビュー・感想・評価
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腕がいいのは無論のこと、卓越した「聴く力」が職人リックの最大の武器
楽器好きにはたまらない企画。事前に「NYの古い建物の廃材でエレキギターを作る職人」と知り、音質よりも希少性が価値なんだろうなと先入観を抱いたが、間違いだった。老舗ギターショップの主が木材に固有の響きを聴き取り、成形し、その魅力を最大限に生かすべくピックアップなど音を増幅させるパーツを加え、磨き塗装して完成させる。出てくる音が、あたたかくぬくもりがあって実にいい。豊かな倍音が心地よく、生で聴けたら一層素晴らしいだろう。
リックが店を長年続けられている秘密はもう一つ、顧客たちの記憶や思いをさりげなく引き出す「傾聴力」にある。店を訪れギターを鳴らす客たちは、音色に感激して子供のような表情を浮かべ、自らのキャリアにまつわるエピソードを店主に語り出す。顧客にとってはリックと語る時間も付加価値なのだろう。客たちが逸品のギターを演奏する音と、彼らが語る思い出の両方が、まさに滋味あふれるエンタメなのだ。
のほほんとした空気のすき間から世知辛い時代の風が吹いてくる。
ニューヨークに実在するハンドメイドギターショップのドキュメンタリーで、次々と現れる豪華ゲストが一曲弾き語りをしてくれたりするので、まるで金太郎飴みたいに同じことを繰り返す構成も楽しく観ていられる。店主や弟子とミュージシャンとの語らいのレイドバック感にも、つい微笑んでしまう。
ただ、このギターショップがあるのはマンハッタンでも指折りの人気地区であるグリニッジビレッジで、普通の人間が住めるような家賃の場所ではない。幸運にも店は続いているようだが、近所のおなじみさんが残っているとしても、相当な金持ちしかいないはずだ。
そういった時代の変化は、映画の中でも語られているし、マーク・リーボウのような名ギタリストが「クレームが来るから家では練習できない」とボヤくのは、現代の世知辛さが象徴されている。都会のオアシスのようなギターショップの映画だが、このオアシスがいつまで存在していられるのか? 心のどこかで心配しながら観てしまいました。いつか行ってみたいから続いて欲しいです!
これを観ると、伝説のギター店に行ってみたくなること間違いなし
グリニッジビレッジにあるお店の柔らかい空気感や、凄腕ギタリストたちが恍惚の表情でギターを見つめる姿に、映画を観ながらとめどない幸福感が沸き起こった。ここは解体された建物の廃材を使ってギターを製作する伝説のお店。今日も多くのお客さんが訪れる中、店主と見習い店員が作り上げる名品の数々は、さながらNYという街が歩んできた歴史の生き証人のようにも見えてくる。
ドキュメンタリーだが、その間合いはどこか劇映画のようにも見える。なんだろう、このジャームッシュ映画っぽいふわふわした感じは・・・と思いを巡らせていると、スクリーンにまさにそのジャームッシュの顔が映し出されたので驚いた。彼もこの店を愛する一人で、今回のロン・マン監督にこの店を紹介したのも彼だったそう。
この小さな店が、歴史と文化を繋ぎ、さらに人と人とを繋いで小さな輝きを放ち続ける姿はずっと観ていられる。ここにはそんな不思議な磁力がある。
ジム・ジャームッシュが突然!でもネー!
日本は木材の国。1850年以前の建物は沢山建っているはずだ。
つまり、古い物が良い音が出ると言うなら、日本でこそ廃材ギターの職人が出ても良いと感じた。
ここでは平板の木材からエレキギターを作る所だけ映しているが、周りを取り巻いている商品の半分が、薄板をはって箱を作ったギターである。
はたして、どちらの音色が良いのか?手間と経費を考えて、平板エレキギターの方を優先して作っているのだと思う。
良い音を追求する職人である事は認める。その職人が、平板エレキギターの創造にこだわるのは、アンプを通せば、箱型ギターよりも良い音が出るか、同等の同種の音が出るのだと思う。しかし、厳密に言えば、現在の技術力をもっても、箱型のギターの方が良い音が出るのではないだろうか?
だから、販売している訳だし。
ジム・ジャームッシュが突然!でも。
黒人のお客さんが1人だけって何か意味があるのか?
多分、経済的な理由だろうな。
廃材だけれども歴史的な付加価値を価格に反映させて利益にしている。廃材だけどもね。資本主義的マジックだ!!
追記
ここで弾くエレキギターの音が良く聞こえるのは、映画で使う録音用のアンプを通して映画に直接取り入りているから。
木の匂い
前から観たかった作品。
木の匂いがぷんぷんしてきそうな作品。
雑然と置いてあるように見える工具も、使う方にはちゃんと規則性?があるらしい。
小さい頃からこんな工房で遊べたら最高だな。
店を訪れるミュージシャン?との会話のシーンも織り混ぜ、工房の作業風景と共に淡々と時は流れる。
特に何事もないが、お客さんとの会話の端々から、何気ない日常の非日常が垣間見える。
すごいのは古い店の解体の際に出る古材を貰い受けてギターを作っているところ。
大部分は今はもう手に入らないと言う。
環境の変化により、木が持つ害虫への耐性がなくなった(弱まった?)結果らしい。
街への強い愛着も感じられた。
作り手、使う人、古いものを大切にする心がいいなぁ。
盛り上がりもハラハラも
なく淡々と進む作品だが琴線の揺れはバッチリディストーションされる内容だった。エレキギターの持つエレクトリックと木の饗宴に、木の持つ歴史と経験を掛け合わせたオリジナルギターの数々。音は適度に聴く程度だが、十分揺さぶられるほど響いてきたよ。偶然にして本当に滋味溢れる良い映画に出会えた物だわ◎
【”古きNYの骨を再生しエレキギターを作る。”ロックンロール好きには堪らない、エレキギター職人の姿を切り取ったドキュメンタリー作品。】
■ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにあるギターショップ「カーマイン・ストリート・ギター」。
職人のリック・ケリーは、街の建物の廃材を使ってギターを作っている。
そして、それを支えるパンキッシュな風貌の、女性シンディ。
彼女は、パソコンも携帯も持たない昔気質のリックを支えるように、店の品をインスタグラムにアップしていく。
今作は、この二人の日常を淡々と、けれども店を訪れる、ジム・ジャームシュや、チャーリー・セクストンが嬉しそうにギターの調律をして貰ったり、ギターを弾く姿が実に自然に描かれている。
◆感想
・「カーマイン・ストリート・ギター」のルール。
それは、NYのバー、ホテル等の廃材を利用して、ギターを作る事。
且つては、街のシンボルであった店、ホテルに敬愛の念を抱いているリック・ケリーの想いが伝わってくる。
・リック・ケリーと、パンキッシュな風貌の、女性シンディとの関係性。
深くは描かれないが、彼女がリックの店で働き始めて5年目の時に、彼らの仲間が持ってきたギターの形をしたケーキ。
それを目にしたシンディが思わず、涙するシーン。
そして、言った言葉。
”この店のとの出会いが無かったら・・。”
- このセリフで、彼女がこの店で職を得るまでの生き方が分かった気がする。リック・ケリーは、優しく微笑むだけだ。-
・ルー・リードが、「カーマイン・ストリート・ギター」のギターを愛用していた事を語る男性。
- ”ドローン音”久しぶりに聞いたよ。そう、”ヴェルヴェット・アンダー・グラウンド”でもソロになってからでも、ルー・リードのギターは”ドローン音”だった・・。-
<今作は、劇場で観たかったのであるが、漸く鑑賞出来、感慨深い。
ギター職人、リック・ケリーのブレない姿勢と、彼を慕ってやってくる高名なミュージシャンたち。
そして、リックを支えるパンキッシュな風貌の、女性シンディの姿。
ロック好きにはタマラナイドキュメンタリー作品である。
繰り返し書くが、漸く観れたよ・・。>
■私の好きなギタリスト(除く有名なギタリスト。)
1.ドゥルッティ・コラムの、ヴィニ・ライリー。ホントに好き。アンビエントミュージックの様でありながら、ソリッドなギターが堪りません。
2.ヴィサージや、スージー&バンシーズで活躍した超絶技巧プレイヤー、ジョン・マクガフ。
3.フェルトのボーカル&ギターを担当した、ローレンス。ファーストの儚いエレキは堪りません。因みに彼に影響を受けた英国ギタリストは数知れずです。
4.有名ではありますが、矢張り英国ロックのギタリストと言えば、ザ・スミスのジョニー・マーですね。ディス・チャーミングマンなどの軽やかな3分間ポップから、重いロックまで自由自在に弾いています。
以上。 お勧めのマイナーギタリストをご存じの方は、教えて下さい。
ギターも弾けない人間が、この映画を観てみたw
ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにある一風変わったギター屋さんの1週間ドキュメンタリー風。
(あえて風)
タイトル名はギター屋さんの名前である。
解体された建物の廃木材にてギターを作って販売している少し奇妙なギター屋さん。
オーナーのリックは幼い頃木材職人だった祖父から木材加工道具をプレゼントされたのがキッカケで木材加工にハマったらしい。古い木材からギターを作成する工程が意外と面白く、美術・工作が好きな人には興味が湧くだろう。
リックがギターを愛してるのは元より、それ以上に木を愛してやまない事をギタースケッチなどから伺える。
リックの母:ドロシー。店番、掃除係など。
どこにでも居そうなお婆ちゃんw
もうね、あるある行動をしてくれるもんだから笑ってしまい憎めないw
有名音楽客が店に来てギターを弾くので音楽・音質は素晴らしい。
ドキュメンタリー風で悪くは無いんですが、客が映画の為のサクラにしか見えない部分もあった。(ジム・ジャームッシュ。自前の変わった木材ギターを持ち込むフロントマン。リックの木材へのこだわりを映画内で引き出そうとするが、わざとらしい。etc)
1週間ドキュメンタリーに脚本詰め込み過ぎたかな。
(1週間なんてしなきゃ良かったのに)
いつ立ち退きに会うか分からない土地で、自分を貫きギター屋を営む、ごく普通の生活が観たかった。
ギター文化の厚さと熱さ
狭い工房兼店内に、カメラが2台以上回ってることが信じられないくらい、人びとの表情や立ち居振る舞いが自然で柔らかい。
店のスタッフ3人が、とびきり個性的かつ魅力的な人物なんだ。
親父さんは、ロックの歴史のなかを生きてきて、ギターを自ら弾き、制作し、素材や構造、歴史まで知り尽くしている。やって来るお客を暖かく迎え、ギター談義に目尻を下げる。
ひとたび客のニーズを捉えると、ベストの解決策をさりげなく、即座に示して、真のプロフェッショナルの凄みを見せる。
相当なご高齢とお見受けするが矍鑠と働いているのは、親父さんの母上だ。
若いギター職人は、芸術の才と、鋭い感受性を窺わせるブロンド美女だ。
店の一週間が来店する客とのやりとり中心に描かれていく。
隣のビルを買い取ったという、やり手らしい若いビジネスマンの登場など、オイ本当にドキュメンタリーか?ヤラセじゃないの?と突っ込みたくなるほど出来すぎている。
文化というのは、ただ商品と金を交換するなかではうまれず、一緒の時代を生きて同じ空気を吸い、相手の顔を見て会話し、受け止める、そうした人の分厚い交流のなかからうまれ、支えられるんだなぁ、とか、こいつら、いい歳だけど熱いよなぁ、とか。
シミジミ羨ましく見入ってしまった。
ギターの音もいいし。
こんな映画、見たことなかった。
出て来る人達と、彼らが共有するみせの佇まいが、とっても、よかった。
テレキャスター
何も起きないしギターの音が気持ちよくて幸せになれる映画。
壁に飾ってある写真のうち、ロバートクワインのだけが何度直しても曲がるのがおかしいです。
エレキはテレキャスに始まりテレキャスで終わるのかな
職人のこだわりドキュメンタリー。
音楽は好きだけども、ギターについては全くの素人ですが、楽しめました。
毎日繰り返されているであろう、ギター職人の日常の切り取り。ニューヨークのまちの古い建物の解体現場からでる廃材を利用して作り出される、廃材ギター。見た目も廃材っぽさ満点で、個性的で音が最高って!客とのさりげないやり取りや、弟子とのやりとりやら、コメントは一切ないから淡々と進む日常。
途中途中でビックネームな方達が来るんだけども、個人的にはジム・ジャームッシュはぶっ込みでしょうよと思います。弦くらい自分で替えようよ…。
ギター好きには堪らない?!
ギターに興味ないけど、ドキュメンタリーを観たくて訪れた作品。ギターの音色に眠りを誘われてしまったが。
NYの歴史的廃材から名品を作る匠。信頼を寄せる名だたるミュージシャン。匠に憧れ、継ごうとする弟子。
これらは日本の伝統や文化、職人技にも通ずるものであり、途絶えさせてはいけないものだと思った。
しあわせな気持ちにさせてくれる作品。
やっぱりギター手作りなんてあんま聞かないものね
修理してくれたりして、奏者に渡して演奏してもらったりすると、「いいね」と言われてるのだけど、いかんせん演奏もしなければ構造がわからないので、どうなっているのかわからないけど、魔法みたいで面白い。
知らないプレイヤーもいましたが 素晴らしい演奏に知らず知らず顔がほ...
知らないプレイヤーもいましたが 素晴らしい演奏に知らず知らず顔がほころんでしまいました。ギターの音色も材質が変わるとこんなに違うんですね。演奏を聴いている時のリックの幸せそうな顔がなんともいえませんでした。映画終了後 展示されていたギターの前におじ様方が沢山集まって 撮影会のような賑わいでした。
ニューヨークの片隅で音楽文化を支える人々
ニューヨークの片隅の小さなギターショップ「カーマイン・ストリート・ギター 」の1週間を体験する。
そこでは、ミュージシャン達が入れ替わり現れては、ショップの個性的なギターを奏でていく。
ちょっとしたメンテナンスや消耗品の交換も普通に受ける。
オーナーは、古い建物で材料の古材をもらい受け、それでハンドメイドのギターを作る。
貯金もなく、決して儲かる仕事ではないが、好きの情熱で、なんとかなると音楽を支えるショップの人々。
登場するミュージシャン達も、皆さん自然体で音楽を奏でて、なんと魅力的なのだろう。
カメラは、ほとんど動かず、ナレーションもなく会話だけで静かに進行するし、劇中の音楽、店に来たミュージシャンが弾くギター音だけだが、とても豊かでシンプルなライブに遭遇した気分。
ショップと同じ小さな作品ですが、心地よく楽しめます。
しかし配役にあるカーク・ダグラスは俳優ではなくて、ヒップホップバントの「ザ・ルーツ」のギタリストのキャプテン" カーク・ダグラスでした。映画.comのデータはいい加減だなぁ。
ギターの形のケーキも三角カット
ちょっとしたライブを聴きに行った感じだった。
ニューヨークの建物の廃材を使って作られるギターは風合いだけでなく、音や響き方も違って、また、店を訪れるギタリストの奏でるスタイルも音も異なり、これ程、千差万別なんだと改めて思う。
おまけに、ジム・ジャームッシュまで登場して、なんか得した気分にもなった。
最近は、日本人の日本人による日本人礼賛番組が多いように思うが、世界のあちこちにも、こうした手仕事を大切にして、リサイクルを通して、作品に魂だけではなく、歴史も刻み、沢山の人を魅了する職人がいることは、もっと多くの人に知ってもらえたらなと思った。
リックが、廃材の傷は、人が顔に刻んだシワと同じなんだと言う。
リックのギタリストに向けたメッセージは、時には詩のようでもあり、場合によっては哲学のようでもあり、そして、寄り添う言葉となって心に響いていく。
シンディへの気遣いも、シンディのリックに対する感謝にも、何か胸が熱くなる想いだった。
そして、ギターの形のシンディ5周年記念ケーキも、結局は三角にカットしちゃうのかと思って、少し笑わせてもらった。
なんかステキなドキュメンタリー映画だった。
因みに、インスタでカーマインストリートギターズに行くと、ちょっとだけギタリストの演奏シーンがあります。また、シネマカリテに展示してあるギターもちゃんとアップされてました。
是非、チェックを!
"ニューヨークの骨"
電話を取り店名を挨拶がわりに、母親のユッタリした行動がそのまま店を流れる優しい時間に。
互いに背を向けそれぞれの仕事に勤しむ時間が静かに流れ、様々なミュージシャンとの出会いや世間話が、大切で知的な雰囲気を醸しながらギターの音色が心地良く。
月〜金までの日常を飾る事なく映像に、そのどれもが刺激的であり師匠が弟子を祝う古材からケーキに材料を変えたギターを前に、涙腺もゆるみ。
音楽好きからギター好き、それよりも職人気質の人には堪らない映画だと思うし、ヘタにTVドキュメントで放映とかの形にならなかったのが救いでもあり、ドキュメンタリー映画として素晴らしく、切っ掛けを作ったジャームッシュの為せる技でもあるような!?
グレイト・ヴァイブ!
NYの築200年以上の建築物の廃材(よって材料費はタダ)を、ギターとして蘇らせることに情熱を燃やす職人リックの店の物語。「42 Carmine Street」でググれば 、ストリートビューで見ることができるが、平凡な通りに面した小さな店に見える。
アコースティック・ギターも多数あるようだが、映画では話はエレキに集中する。さすがにネック部分は普通にきれいに仕上げてあるが、ボディはまさに廃材というものも散見する。材の継ぎ目あり、節や模様あり、表面にはキズや凹凸あり・・・。
ピックアップがたった一つのものもあった。また、弟子のシンディは、元グラフィックアーティストのようで、焦がして絵を焼き付けるなど、自由なギターが手作りで生まれている店だ。
こういうギターは、エフェクトを抑えて、生の音をそのまま増幅し、いかにも材木で反響・共鳴しているといった感じの響きを堪能した方が良いように思われた。
音響学的には、決して優等生ではない異端児だろうが、要は、誰がどう弾くかである。名人が弾けば、独特の味わいを持つ「Great Vibration」を聞かせるのだ。
実際の制作過程はあまり映されず(ちょっと期待外れだった)、(事情通の人は別として)一般の鑑賞者には80分の長さは必要ない感じなので減点したが、観ていて、いや、聴いていて至福の時間であった。
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