メランコリックのレビュー・感想・評価
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凄く良かったです!
最高でしたよ
シュールな笑い
実にユニークなブラック&サスペンス・コメディでした。
若いスタッフが作った作品のようで、主演に至ってはプロデューサー自身っていう、『カメラを止めるな』のようなインディーズ感満載。
まじめにとらえたら、一般人が強制されて初めて死体処理をしたその帰りに普通にご飯を食べたり、その手で彼女を抱いたりっていうのは、ありえないと思うのだが、だからこそ「これはコメディだ」という主張がにじみ出ていた気がしました。
オチが爽やかなのが、かえって不気味で面白かったです。
なんといっても、浦安市猫実に実在する銭湯をロケに使っていて、絵面がシュール。
「人を焼いて沸かしたお湯」で、「気持ちいい、最高」って言うシーンが最高。
聖地巡礼に、ひとっ風呂浴びに行きたくなりました。
ぼやけた現実
設定と筋立ては秀逸
“melancholic”=憂うつな、というタイトルの映画は主人公の倦怠で始まる。倦怠、緩い家族(これが最後に効いてくるとか誰が思うのか)。そして風呂の湯を抜かれた日に行った銭湯で高校の同級生に再会したことで話は始まる。
このヒロイン像がなかなかに都合が良すぎてちょっとどうなのとは思ったが、銭湯が殺しの始末の場、という設定は秀逸。そして非日常で自分が使えない存在であることに嫉妬を抱く主人公がいちばん面白いところだ。面白いシーン自体はいくつもあるのだけれど、心情描写としてリアルにいちばんくるのはここだった。
詰まるところ、主人公が東大卒のフリーターであるという設定はここで活きるわけだ。明らかに人よりできると思いつつできない。しかも自身は意識していない。殺し屋への関与は即ち主人公の「承認欲求の充足」に一役買うわけだ。
しかし、この映画において人の死は本当に空虚だ。人の死は誰も成長させない(殺し屋の松本君が妙に格好良くなっていくだけである)、主人公は余りにそれを当たり前の日常の中に受け容れており、疑問は持っても葛藤がないので、観ているこっちが葛藤した。そういう意味で主人公には心がない。
ラストにかけ、そのない心が急激に噴出した結果の結末につながる訳だけれど、ラストに穏やかさを感じないのは私だけだろうか。モノローグが不穏だった。個人的はモノローグ以外の映像表現であの表現をやって欲しかった、と思う。それまで一切のモノローグを持たない映画なのだから、それを貫いた方が個人的な美学としては美しかったし、より”melancholic”だったと思う。
筋立てと発想はものすごくいいのに、人物描写が若干薄いというのが悩ましかった。主人公はもっと徹底して突き抜けさせ、ヒロインに一癖が欲しかったなあ...。ご両親があんなに突き抜けてるんだからさあ...(あれも唐突だなと思ったが。普通の次元を超えている)。
仕事と自信と充実感
東大卒で就職経験はない元フリーター実家暮らしの主人公が、気になる女の子の進めもあって銭湯でバイトを始めたら、その銭湯の裏の仕事を目撃してしまい、そこに踏み込んで行くことになる話。
ヤクザの依頼で殺しを請けるオーナーと優秀な殺し屋の従業員。銭湯は殺しを行ったり死体の処理に便利…らしい。
裏の仕事を目撃したことにより掃除の手伝いをすることになるも、ボーナスは貰えるしヘビーな仕事に携わっていることや背徳感からか浮かれ気味の主人公。
自信も出て来て彼女も出来てお気楽な主人公が、考え、決断し、行動しなければならなくなっていく様子が、シリアスだけど時にコミカルに描かれていて、派手な展開こそないものの面白かった。
ユーモアのあるサスペンス
東京国際映画祭2018で観賞
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