劇場公開日 2019年8月3日

メランコリック : 映画評論・批評

2019年8月1日更新

2019年8月3日よりアップリンク渋谷ほかにてロードショー

バイト先の銭湯で殺人…なのに共感度高めなお仕事ムービー!?

昨年、「カメラを止めるな!」がヒット前に観客賞2位を受賞したウディネ・ファーイースト映画祭で、新人監督作品賞を受賞。ぜひ「カメ止め」に続くヒットになって欲しい快作だ。

東大を出たものの、フリーター&実家暮らしでうだつのあがらない30歳の和彦(皆川暢二)が近所の銭湯でバイトを始める。同時に面接にきた金髪の松本(磯崎義知)も採用され、一緒に働くことに。ある深夜、和彦は銭湯に灯りがついているのを見つける。そう、この銭湯は閉店後、別の顔を持っていたのだ――。

まあズバリ言うと「人を殺す場所」として使われていたわけです。ヤクザに頼まれて拉致してきた人物をここで殺す。掃除がラクだから(苦笑)。松本もそれを手伝っていた。そして和彦も殺しの後始末を手伝うことになるが……? という展開。

フツーじゃない状況なのに、妙に「筋」が通っていて、登場人物たちが妙に淡々としているところもおかしい。優しげな顔で血みどろのタイルを「掃除しといてね」と言う銭湯オーナー(羽田真)のシュールさ。チャラそうな松本のある才能の意外さ。バイオレンスにほんわりする恋愛に、30歳ダメ男の成長にコメディにどっきりホラーと、様々な要素が見事に集約されていく。

一番うまいなと感心したのが、ある種の「お仕事ムービー」になっているところ。殺人がルーティンワークになっている様子もそうだが、そもそも和彦が銭湯の裏の顔を知るきっかけは、バイト仲間の松本に感じた「やっかみ」からなのだ。松本がオーナーに話しかけられているのを目撃し、「なに話してたの?」と聞くも、「いや、なんでもないっす」。同時に仕事を始めたはずなのに、なんかアイツのほうが可愛がられてる? とモヤモヤ。底に潜む「東大卒」のプライドの発露なのかもしれないが、このへんのビミョーな心理描写が見事で、お仕事経験者ならば誰もが共感することだろう。

本作は和彦役の皆川暢二がプロデューサーを兼務し、監督の田中征爾、松本役の磯崎義知も別の仕事を持っている、いわば“兼業映画作家”チーム。彼らの社会での経験値が、この映画をおもしろくしている大きなポイントかもしれない。

中村千晶

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