「圧倒された」ホットギミック ガールミーツボーイ yuyuさんの映画レビュー(感想・評価)
圧倒された
ストーリーについて言えば、原作が少女漫画ゆえにツッコミどころはある。登場人物は全員クセがあり、かなり屈折していて、ありえない展開に笑ってしまうところもあった。だけどエンドロールを含め見終わった後、心が揺さぶられ、作品が持つパワーに一言圧倒された。これが映画体験なんだと思った。見終わった後もずっと不思議な感覚が残っている。どの映画にも似てない。パッケージは青春映画ではあるが、「キラキラ映画」というジャンルにはおさまりきらず、高校生の恋愛映画を期待していくと肩透かしを食らう。青春映画にありがちな部活や女友達や日常の学校生活などは描かれず、あくまで恋愛だけに焦点が絞られた完全な恋愛映画であることは間違いない。マーケティングが難しい映画なんだろう。
映画鑑賞後に原作も全巻一気に読んだ。原作にあった登場人物を語るうえで重要な多くの前提条件が大胆に省かれ、シンプルな設定になっていることに驚いた。その一方で映画には、山戸監督の文学性と生身の若い俳優たちの躍動感が追加されていた。映画の終盤で圧倒的な力を持つ主人公たちの台詞の数々は映画オリジナルであることも確認できた。
ストーリーの舞台が架空の町ではなく、豊洲の今の風景が全面に映し出されることでリアリティがあった。開発途中で、どこか不安定な新しい東京の景色と、アイデンティティを模索し悩む若い高校生の姿が絶妙にリンクした。
俳優陣も若手・ベテラン全員素晴らしいのだが、特に吉岡さんと間宮さんがよかったと思う。私と同世代の女性監督の活躍が勝手ながらとてもうれしい。次回作が今から楽しみだ。もっと多くの人に今作品を体感してほしい。