劇場公開日 2019年6月28日

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「エリーゼのために」ホットギミック ガールミーツボーイ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5エリーゼのために

2019年7月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

誰かが何かを言い誰かが何かをして話が進むたびにどんどん心が後退していく。

キャラも大雑把な本筋もセリフも少女漫画のド定番なのに、描き方が全くミスマッチで中途半端。
心情の機微が肌に沁み渡るような瑞々しさもなければ突き抜けた個性による引きつけもなく。
映画の自由な表現を広く感じて楽しむことをスタンスとして色々観てきたけど、自分でも驚くほどこの映画の魅力を感じ受けられなかった。悲しい。

三人の男子と一人の女子をメインにした恋愛模様ではあるけど、言ってることもやってることもしっちゃかめっちゃかすぎて終始ドン引きしながらの鑑賞。
わざと抑揚のない話し方を演出しているのかもしれないけど、実力のある俳優ですら演技が下手に見えてしまったのも良くない。

それぞれの初恋の行く先や人間関係の変遷も親同士の後ろ暗い事情も死ぬほどどうでも良く思ってしまう。
話の挟み方も行動も唐突すぎて正気を疑う。
テンポは死亡、テンションは低下、ストーリーへの興味は消滅。ただスクリーンを眺めるだけの状態に陥る。

やっていることがステレオタイプで深みがない割に、描き方が突き抜けていないのでフラストレーションが溜まる。
全員気持ち悪いし何言ってんのか何がしたいのか全然分からない。
分からないことを楽しめる余白は無く、共感や理解はできずとも面白く観られる引力も無かった。

梓の復讐は復讐にしてはなんとも温い。いやめちゃくちゃ嫌だけども。
亮輝のアプローチは完全に追い込みにきてるし、凌のジレンマはあっさりしている。
もどかしい感情を上手く表現できずにこじれてしまうのは分かるけど、それにしてもあんまり。

常に音楽が流れ、クローズアップしたカットに静止画を多く挟み、光の当て方を工夫した演出はかなり面白いはずなのに、ただただあざといだけに感じてしまう。
ビッチな妹茜と初の触れ合いのシーンなんて完全に狙ってるでしょう。

何よりキャラクターに魅力が感じられなかった。
モテまくりの無自覚気取り女子、初はやることなすことあざとくて鈍臭くて、自分を卑下しまくり「わからないよぉ」と連発するのもイライラする。
可愛くて擦り寄る先も多くて非常に羨ましいこと。

少女漫画の典型的ドSキャラを本気でやってしまっているヤバい亮輝、奴隷になれだのなんだのって、どこの黒王子だよ…それ中島健人じゃないと言っちゃいけないやつだよ。
頭が良くて会話の単語選びが独特なのが面白い。

ドSキャラの典型的ライバルは優しい初恋の王子様、モデルの梓。どこの白王子だよ…。
白王子らしい甘い口調は良いものの、彼の「チェッ」がこの映画の分岐点。
私はこれで完全に後ずさりしてしまった。
でも撮影スタジオの色とりどりの光の中のキスシーンはめちゃくちゃ良かった。この映画の中で一番良かったし軽率にドキドキしちゃうじゃない。

義理の妹にガチ恋拗らせちょっと気持ち悪い兄の凌、一貫して優しいし包み込んでくれる姿勢は嬉しい。
しかしそこに明確な性欲があるかと思うと結構吐きそうになってしまう。
いや、義兄と禁断の恋なんて胸キュンするんだけどね普段は。あまりにも凌が思いつめて「最後に辿り着く先」になろうとすらしているから、その感じが生っぽくて。

もう開き直ってイケメンハーレムの胸キュンを味わおうとしてもそれすら上手くできなかった。
でも敢えて挙げたい推しメン。
ドSの亮輝、白王子モドキの梓、メンヘラ兄貴の凌、さて誰が良いだろう?
うーーーーーーん、凌かな!お兄ちゃんっていいよね、憧れちゃうね!

KinA