「魅力的なヒーロー像だけでなく、人情話としても秀逸」居眠り磐音 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
魅力的なヒーロー像だけでなく、人情話としても秀逸
すでにテレビドラマ化や漫画化もされている、時代劇の本命、待望の映画化である。
日本映画としても今年前半の必見級だ。「キングダム」のスケール感や迫力は別格だが、オーソドックスなサムライフィルムとして、松坂桃李演じる主人公・坂崎磐音(さかざき いわね)が生み出すヒーロー像は、実に魅力的である。
おそらくヒットするだろうし、シリーズ化すれば、松坂桃李の代表作になるだろう。
原作は佐伯泰英による、全51巻+スピンオフ1巻で累計発行部数2,000万部超えという、"平成で最も売れた時代小説"といわれる(映画化原作は「決定版」のほう)。
今回は原作の序盤のエピソードが映画化されている。
3年間の江戸勤番を終えた坂崎磐音は、祝言を控えた許嫁・小林奈緒(芳根京子)の待つ、九州の豊後関前藩に帰った。しかしそこで親友2人を失うあり得ない事件が起きる。しかも磐音が斬ってしまうことになる親友の琴平は奈緒の実兄だった。
傷心の磐音は、奈緒に顔向けもできず、藩を離れ、浪人となって江戸に戻る。昼間は鰻屋で下ごしらえの仕事をし、夜は直心影流の剣術で用心棒稼業を始める。そしてまた事件が起きる。
形は、勧善懲悪のお約束フォーマットに基づいているものの、江戸時代の政争エピソードだけでなく、普遍的なラブストーリーの側面もあり、人情話としても面白い。奈緒と磐音がどうなるのかが見もの。
とはいえ。原作では今後、磐音と おこん(木村文乃)が夫婦になって、いずれ息子の空也が生まれ、さらに代替えして活躍していくという大長編なので、ぜひシリーズを続けてほしい。
(2019/5/18/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ)