グリーンブックのレビュー・感想・評価
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誰とどんなシーンで観ても外さない感動実話。
黒人差別を扱ったノンフィクション映画としては、劇中の過激な描写が少なく、ファニーな描写が多い、気軽に観ることができる作品である。一方で、感情が大きく揺さぶられるような山場が無いのが残念な点。
教養として楽しむなら◎だが、映画として楽しむなら△
※以下ネタバレ含む
黒人差別が残る1960年代のアメリカで、差別に屈せず南部での演奏活動を行う黒人ピアニストと彼の運転手役として旅を共にするイタリア系アメリカ人が友情を育む様子を描いた実話。
鑑賞後の所感としては、理不尽な状況に屈さず、勇気を持って自分の信念に従って行動する主人公2人に感服した。
暴力ではなく品位のある言動で世論を変えようとしたドクターと、周囲に惑わされることなく自分の心に素直に生きるトニーの2人の姿は、自分の行動を省みる良い機会となった。
よい2人…
何度も繰り返し弾くあのピアノの音色には、まあ素敵だなあ…とフラットな気持ちで思っていた。
が、終盤の同胞達に囲まれて弾いたピアノがいつも以上にとても楽しそうで、観ていて腹の下がカッと熱くなる。孤独を感じるピアノと仲間に囲まれて弾くピアノの差に彼の心を感じた。
2人のキャラクターが互いに影響し合い進むストーリーは、飽きる事なく楽しんで見られた。
悲しい現実問題もあるけれども…
一番好きなシーンは
フライドチキンを投げるやり取り。
つい笑った。周りの人も。
今なお残る差別
遅ればせながら観賞。
アカデミー賞の紹介を見ている限りでは、ヴィゴ・モーテンセンがもっと差別的なキャラクターで、彼の心境の変化が主題の映画かと思っていたが、そうではなかった。冒頭こそ、そういった差別的なシーンが出て来るものの、彼はどちらかといえばオープンな性格で、早い段階で黒人ピアニストに雇われることを受け入れている。この物語は、彼の明るい性格に影響を受けて少しずつ心を開いていく黒人ピアニストと、アメリカ南部における強烈な黒人差別との戦いが主題だ。
意外だったのは、黒人差別を当たり前のように行う南部の人間たちが、「土地のしきたり」とか、「昔からの習わし」であるといった発言が多かったこと。あたかも、自分たちがやりたくてやっているわけではない、先祖代々そういう決まりなのだと言わんばかりに。(実際に法律で決まっていたりもするわけだが)本来は、自分たちの勇気や行動一つで、全てを変えられるはずなのに。
こういった土地に根付いた習わしに従って生活習慣をなかなか変えられない感覚って、勝手に日本的な感覚だと思っていたが、自由の国と呼ばれるアメリカでも同じなのだと実感させられた。近年のアカデミー賞も、一時期「白すぎるアカデミー賞」と呼ばれ、揺り戻しのように本作や「ムーンライト」が アカデミー賞を獲った。本作の世界から、60年近くが経つ現在でも、差別がなくなっていないことの証左なのだろうと、映画としては面白かった反面、少し複雑な気分になった。
いろいろ満たしてくれる映画です。
ドクター・シャーリーとトニー・リップ、人種も立場も異なる2人の心地よいロードムービー。
人種差別やLGBTも描きながら、ところどころに笑いも散りばめられていて、しっかり心温まるという満足感いっぱいの映画でした。
もちろん、音楽も最高に心地よい♪
観終わって無性にフライドチキンが食べたくなったのは私だけじゃないはず!
テーマが難しい
人種差別がテーマであるが、現代においては敏感なテーマである為、どちらの立場も立てざるを得ない展開になってしまい、全体的な演出として薄味な印象となっていた。
そもそもドクが南部ツアーを行った理由が差別に対する反骨によるものであり、差別がひどい事を想定の上で問題解決能力の高い用心棒役であるトニーを雇ったわけであるから、行く先々でのトラブルはドク側は予想済みであり、今一怒りや危機感が伝わってこない。
更に司法長官とのコネがあるため、最終的には助かる立ち位置におり、自分から差別を受けるようにツアーを企画しているように思える。
それでもアメリカ人には長年の軋轢から心に刺さるものがあるのだろうと思うが、日本人が本作を理解するには難しいように感じた。
なかなかよかった
私個人の意見ですが アカデミー賞とか、~賞受賞作品って苦手でした。
しかしこの作品は違った。
人種差別が残る時代に 我慢して、腹を立てずに、一歩ずつ前に進む努力をしていたんだと。
最後ニューヨークに戻ってきて 人付き合いにまた一歩を踏み出して 本当によかった。
ラストでほっこりさせてもらいました
勇気ある行動が世界を変える
人の言語が多種多様に存在することの弊害が差別なら、音楽と言う言葉を持たない表現の場において、受け手はみんな等しくその価値を受け取れるのでは?
なんて、妄想よね。
本編では説教臭くなることなく、胸の内に思う偏見や差別を認識させる素晴らしい演出が多々観られた。
台詞回しや物語のテンポなど古典映画のそれと似ているので、どこか懐かしいウィットに富んだ言い回しが小気味よかった。
映画館で観る価値があった。
人種差別とヒューマニズム
今から56年前の物語。
車やファッションなどは当時の雰囲気なのだが、なぜか現代の物語のような印象が残る。
この映画で描かれている人種差別が、現在どのくらい変わっているのだろう。
ITの進化ほどに、進歩をしているのだろうか。
後半、リップになじられたドクターが車を降りて思いの丈をぶちまける。
そこから二人の絆は同士的に変わっていく。程度の差こそあれ、同じ差別を感じる者同士。
人種差別の面では、リップが上でドクターが下。経済階層の面では、ドクターが上でリップが下。
その捻れた上下関係が、対等な横の関係に変わっていくことで、同じ時と場所を共に楽しめる二人になっていく。
場末の黒人のパブでドクターが弾くピアノは鳥肌物だ。リップもどこか誇らしげ。
それにしても、ビゴ モーテンセン演じるトニー "リップ" バレロンガの人間的魅力といったら…
客をボコボコにしたかと思えば、美人な奥さんには優しく振舞い、毛嫌いしていた黒人にもビジネスの為ならボスと膝まずく。一見粗野なのに思いやり深く、浅はかに見えて賢い。
片や、マハーシャラ アリ演じる天才ピアニストは、複雑なプライベートを抱えながら黒人差別に対して勇気を持って行動していく。
この二人が、差別という社会の偏見に抗いつつ、徐々に互いを理解し友情を育くんでいくロードムービー。
理不尽な社会の中にあっても、人を信じられる自分を投げ出さない二人の物語には、万人の琴線に触れ、いつの時代も人の心を動かすヒューマニズムが、絶え間なく流れていて心地よい。
思いの外良かった!
なんとなく、ありきたりなストーリーを想定していて、あまり期待もせず。
とはいえ、アカデミー賞を受賞したのだから、と淡い期待も。
良かったー!
ドクターが徐々に心を開いていく(半ば強引に、は想定内)様子に泣けたし、随所に笑いも。
ドクターの指導によってトニーが奥さんに宛てて書く手紙が「脅迫状」(笑)からどんどん上達し、それを読む奥さんも何かに気がついていくところも心が温まる。
それにしても理不尽な差別には怒りと悲しみを覚えた。
演者としては歓迎されてもその待遇は酷いもの。
どんなにすごい才能があっても、Coloredである以上成功するチャンスが少ないという事実と葛藤するドクター。
その後幸せな人生を送れたのかな…。
いい話だ
良い作品ではあると思うが、映画としてはどうだろうか。
シャーリーがBARでピアノを弾いて、みんなを笑顔にするシーン、ラストのシーンなど、どれも「こうなるんだろうなぁ」と予測できてしまって面白さに欠けている。
細かなところまで練られた脚本
そもそもいい話なのね。反目してた二人が、お互いを認め合って、互いに唯一無二の存在になるっていう。
それで二人のキャラクターをしっかり描いてくんだよね。
トニー・リップの抜け目なさを示す冒頭の帽子のエピソードや、黒人嫌いを示すコップのエピソードとか。
シャーリーの方もカティサークを毎晩一本あけるエピソードや、オーバーヒートで車を止めたときの他の黒人の様子とかね。
それで『あ、互いにこういうこと思ってんのか』と解らせた上で「黒人でも白人でもない私はどうしたらいい!?」みたいな台詞をとどめで入れてくんの。
展開も簡単には進めないで、一つフェイント入れる感じなんだよね。
「ジョーパンは誰でもやれるけど、あんたの音楽をやれるのはあんただけだ」ってトニーが言って『良いこというじゃん。これで解り合えたね』って感じにしといて「私がひくショパンは私だけ」って凄いパンチを出してきたり。
ラストの訪問シーンもチャイムがなって『良かった。シャーリーが来たんだ』って思わせといて質屋さんで、『なーんだ』と息を抜くと! とかね。
あと白人を全部悪い奴にしてないんだよね。ひっどい差別する奴もいるけど、それを躊躇する白人もいるっていう。それで、却って差別のリアリティが出た感じがしたな。
警官に車を止められるシーンは、二回ともシャーリー寝てんだよね。だから『シャーリーが寝てると悪いことが起きる』と思って観てると二回目は!
トニーのエピソードシーンも良く練られてた、警官を買収するときの台詞や札をめくっていく仕草ね。ベルトに銃を隠しているとブラフをかけたと思わせて、後のシーンで実は……とか。
普通にやっても良い話を練りに練った作品で観せてくれるから、本当に面白いよ。
演奏が泣けた
ドクターの抱える寂しさが演奏に滲み出ていて、なんだろうと思っていたら、、
黒人にも白人にも、なれない。普通の幸せな家庭を持てない?持たない?さみしさだったのかな。。
複雑な感情が心に沁みます(´°‐°`)
実話、か〜
品位を保つ=勝ち
バレロンガがシャーリーと出会い変わっていくようにシャーリーもバレロンガと出会って変わっていく姿がなんともいえない心地良さを感じさせてくれた。
黒人差別を受けながら品位を保ち平然と装いながら
内面に隠した鬱憤や不満を力強いピアノの演奏で晴らしているように見えた。
最後のドロレスの一言には涙腺を揺らされた。
The deep south. ケンタッキー食べたい
ケンタッキー・フライド・チキンが食べたくなる。ケンタッキー州の本場で。いや、現実問題ケンタッキー州に行くとかは無理なんですが・・・でも、いつか行ってみたいなぁ。
言わずと知れた2019年度アカデミー賞受賞作品。確かにアカデミー会員が好きそうな優等生な物語なのですが、いやいや、純粋に面白かったです。あまり重くなりすぎない所がまた良かった。だって重いストーリーって観てて心が苦しくなるじゃないですか?もう重く苦しいのは日頃の生活だけで十分なんです!本作は差別はしっかり描いていましたが、観た後には爽快になるいい話でした。
なんと言ってもトニーのキャラクターがいい!粗野でも情に熱い男。ヴィゴ・モーテンセンってずっと「ロード・オブ・ザ・リングス」のアルゴルンのイメージだったのですが、もう本作ではいかにもトニーって感じでしたね。この役の為に20kg太ったとか。役者魂を感じます。そして、今が旬のマハーシャラ・アリ!アカデミー賞取った時は「またポリコレなんじゃないの~?」なんて疑ってごめんなさい!繊細さを兼ね備えた天才ピアニストを見事に演じていました。や~、双方良かったですわ。
ラストでドクがトニーの家にやって来て、一瞬静まるけどすぐにわーって受け入れちゃうイタリア人気質っていいですよね。暖かな気持ちになれます。
結局差別って良く知らないから起こる事だと思うんですよね。差別する側には根拠なんてなくって、ただ違いを認められない心の狭い話なんですよ。日本人にはこれまで人種差別ってちょっと縁遠い感じだったんですが、これからはどうなるかわかりませんしね。ますますダイバーシティが進む世の中で、自分は「日本人だから偉い」とか勘違いした人間にならないようにしたいと改めて思います。例え差別が無くならない人間の業だとしても、できるだけ少なくする事は可能。そんな可能性を信じさせてくれる作品でした。
笑顔
愛に溢れた映画だった。
このレビューのタイトルを「尊厳」とつけようと思ったのだけど、ラストカットで、こっちにした。
まだまだ人種差別の風潮が残る時代。
黒人のピアニストが南部へツアーに出向く。自ら死地に赴くようなもので、そのドライバー兼ボディガードのイタリア人との話。
どおやら事実から着想を得た話のようだ。
作品はとてもテンポが良く、時代背景やメインキャストの人柄など凄くコンパクトかつ印象的に紡がれる冒頭が秀逸だった。
この鮮烈な印象を残す冒頭の数シーンが、後に続く会話劇を何倍にも膨らませてくれる。
この冒頭のシーンといい、ラストといい、その手前に登場する警官のシーンといい、脚本もそうだけど、見事な構成の作品だった。
人種差別を扱う映画は幾度も見たけれど、このアプローチは見た事がなかった。
耐えるでもなく、訴えるでもなく、怒りでもなく…貫くとでもいうのだろうか?
人としての尊厳を保ち続ける。
世相を思えば、言う程簡単な事じゃない。
そこから見えてくるのは肌の色ではなく、人格であり品格なのである。
ドライバーであるイタリア人は、共に過ごす時間の中でその偏見を取り除いていく。
彼は彼で、強面の外見とは裏腹にとても情に厚く、大らかな人物だった。
そんな2人が緩やかに邂逅していく様は、心地よい温もりを与えてくれる。
天才的なピアニストは言う
「私は何者なんだ?白人からは迫害され、黒人からは疎外される。私はずっと孤独だ。」
やさぐれたイタリア人は言う
「俺はあんたより黒人だ。白人だけど黒人のような扱いを受けてる。」
お互いの本音を、立場を抜きにして、唯一ぶつけたような台詞だった。それぞれどんな気持ちでこの言葉を聞いたのだろうか?
この作品には胸に刺さる台詞に溢れてた。
俺は英語が分からない。
でもなぜだかこの作品の和訳に「戸田奈津子」の名前を見た時にホッとした。
戸田さんで良かったと、なぜだか思った。
その予感は的中し、俺は今、非常に戸田さんに感謝してる。
凄く細やかに丁寧な仕事をしてくださったんだと勝手に感謝してる。
タイトルの「笑顔」について説明すると、やっぱり要所要所で気になったからだ。
演奏を終え観客に振りまくピアニストのまるで、貼り付けたような笑顔。
ドライバーが「ガハハ」と笑い飛ばすような笑顔。
白人のクライアントがピアニストに向ける社交辞令的な笑顔。
2人がお互いに向ける暖かな笑顔。
ラストシーンでピアニストはドライバーの家を訪問する。
世間はクリスマス。ドライバーの家には友達が集まりホームパーティーの最中だ。
予告なく現れたピアニストをハグで迎えいれるドライバー。冒頭、黒人が使ったグラスを、汚物であるかのようにゴミ箱に捨てた、あのドライバーがだ。
集まった友人達に誇らしげに紹介する。
静まり返る一同。
ピアニストは、ここでもまた観客達に向けたような笑顔を作る。
そこに現れるドライバーの妻。
彼女は尊敬の眼差しを彼に向け、訪問を心から喜びハグをし耳元で呟く。
「素敵な手紙をありがとう」
彼女は捨てられたコップを拾い上げた人物だ。
驚き彼女の顔を見るピアニスト。
再びハグをしたピアニストの笑顔は、名も無きバーで、黒人たちとの即興のjazzを心底楽しんでた時の笑顔だった。
ラストカットは、その奥様の笑顔。
その笑顔は、肌の色など関係なく、彼の全てに敬意を抱き、愛に満ちた笑顔だった。
とても素敵な作品だった。
ドクは最高だけどもね…
ドクターシャーリーは頑張ったと思う。
フロリダ生まれだけどヨーロッパで音楽教育を受けているから、アメリカの一般的な黒人と同化することは難しい。
しかもゲイみたいだったし、60年代ではかなり異端。
そのことを本人はよく知ってるから、より違いをきわだたせようと突っ張ってる感じがした。
音楽の世界では一応敬意を払われている。北部でも南部でも。
でもその実は本人が言うように、教養人ぶりたいから褒めそやすんだってやつで、(南部の)白人だけど黒人の演奏家を贔屓にしてるぜ?差別しない教養人でしょ?ってゆうアピールをする場になってる演奏会を、それと知りながらこなしていたってことなんでしょう。
そら、毎晩1本酒、飲むかもね。辛すぎるよね。
黒人向けの宿で、他の黒人たちと全然馴染めない彼が、悲しかった。
黒人向けバーの調律したことない見たいなピアノで弾いたショパン、かっこよかったです。
ピアノ、マハーシャラアリさんが弾いてるように見えましたが、ボディダブルありですか?どやって撮ったんやろ?
弾いてるように見えましたよー(しつこい)。
で、トニーのほうは、当時では標準的なレイシストで、ドクには友好的になったけれども、それで彼の人種差別的な言動がチャラになったわけじゃないんでね。めでたしめでたしとは思いません。特段の悪い人とも思いませんが。
南部の街のそこここで差別されるドクに同情はするものの、差別する人へは大した働きかけしてないんだから、いじめで言うところの傍観者は加害者だって論法と一緒だよって、私は思います。
まぁ見やすくはできてるので、黒人に対する人種差別は他人事だと思っている人にはサイコーな映画なんだと思います。
書き忘れ!1番大事なとこ!
ドクターシャーリーの執事?みたいな役の人、gleeのマッキンリー高校の校長先生やってた人でした。校長先生お久しぶりです!お目にかかれて嬉しかったです!
友情の道行き最後にあるものに感動♪
本年度のアカデミー賞の作品・助演男優・脚本賞を受賞したということもあって、
是非とも鑑賞したかった作品♪
とっても楽しく、感動的な映画でした!
黒人差別を主題、あるいは背景にした物語はたくさんありますが、
この作品が面白いのは、白人と黒人の2人の道行き友情物語であり、
更に、黒人のボス、白人の付き人という立場にあるところ。
しかし、この二人の間には縦の主従関係というものはどうしても見えてこない。
トニーは確かに差別の目を持っているが、白人至上主義や意識的にではなく、
ただ毛嫌いしているだけなように見える。
彼自身も、アメリカの中では イタリア系移民 だし、
(そういえば、採用面接には "チャイナ" もいたし、彼がそういう言葉を使うように、
同じアメリカ国内にあって外国人というのは差別の対象になりやすかったのかも)
ただ、彼自身は
「イタリア人が全員パスタ好きと思われても気にしない」
タイプの人間なのであろう。
「俺の方がよっぽどブラックだぜ」の台詞はなんだか妙に説得力がある。
さすがトニー・"リップ"!
一方で、ドン・シャーリーが一番葛藤するのは、黒人差別社会に対してだけではなく、
その中で利口に振る舞い、自身の音楽をも変えてしまった自分に対して、
という点がすごく切なく、
労働者として働く同じ人種の視線が彼に向けられるところはすごく印象的でした。
そんな彼が、高級ホテルではなく地元のバーで、
スタンウェイではないピアノで弾くショパンと、その場のバンドメンバーとのセッション、
そして最後に、
エジプト王の様な出で立ちや、コンサート用の正装ではなく、
セーター姿で立つ彼の姿が、何よりも幸福で輝いて見えてくる☆
ケンタッキー・フライドチキン
当作品の監督は、私がもうDVDで100回以上は観たであろう、
「愛しのローズマリー」の監督(当時は弟と共同監督)でしたので、
かなりハードルを上げて期待して観た次第です。
観た結果としては、ハードルを上げ過ぎたせいか、
良い作品だとは思いますが、少し物足りない気持ちとなりました。
その原因としては、監督がもろアカデミー賞狙い的に、
映画のいろいろな場面のエピソードをソフトに
描いていることからかもしれません。
兄弟監督の持ち味はどぎつい下品さで差別的表現もいとわず、
それでも下品さと差別的表現の中には必ずやさしい目線が入っており、最後は泣かせるというものでした。
この作品は黒人差別や性的マイノリティも取り扱っていますが、
当然下品な表現はなく、ものすごい悪人も登場しない、
アカデミー賞を意識したのかどうか、
万人向けの内容となっていると思います。
設定的には、黒人と白人で正反対のキャラのバディもの
という映画の定番の設定です。
私的には物足りないと言っても面白くないわけではなく、
一応コメディ映画ということで、爆笑とはいきませんが、
笑えるシーンもたくさんあります。
特にケンタッキー・フライドチキン(上品な黒人は食べたことがない。)
の場面では笑いと感動を覚えるものでした。
※ケンタッキー・フライドチキンを食べたくなります。
主人公の黒人を演じるマハーシャラ・アリは、前回観た
「アリータ/バトル・エンジェル」では、なんともさえない悪人役でしたが、うって変わって好演しています。
トニー役のビゴ・モーテンセンは、この作品のために14キロも増量して、いつもの繊細な感じからはかなり離れていると思います。
ただし、お腹にだけ脂肪のつくタイプのようで、
顔つきは「ロード・オブ・ザ・リング」の時のように精悍な感じです。
私的な難点は、彼はデンマーク生まれなので、
イタリアのチンピラにはあまり見えなかったことですが、
それでもがんばって演じており、観ているうちに気にならなくなりました。
ひと昔前であれば、この役はジャック・ニコルソンが演じるのだろうとも思いました。
先日のアカデミー賞の作品賞を受賞してからは、
白人目線の物語(トニーの息子が製作・脚本に携わっています。)
で差別表現もぬるいと、スパイク・リー他から非難されていますが、
父親から聞いた昔話を一種のおとぎ話として描いた作品だと思えば、そんなに目くじらを立てるような話ではないとは思います。
ものごっつうえげつない人物は出てこないので、
決して不快になることはない映画であることを保証します。
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