グリーンブックのレビュー・感想・評価
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ハリウッド版「最強のふたり」
観終わった後、ぱっと思いついのは、2011年のフランス映画の「最強のふたり」でした。観ている最中も観終わった後も、なんだか似た気持ちにさせらてました。笑いあり、涙あり、温かさがあり、そして考えさせられる映画です。
テーマは、黒人に向ける人種差別です。“グリーンブック”とは50年代から60年代、人種差別の激しかった南部に旅をする黒人のために作られた施設利用ガイドのこと。この映画を観て、日本人が思っている以上にアメリカの黒人差別は深かったのかと改めて感じさせられました。
まさに、この凸凹コンビの二人の旅が楽しくて感動的なのです!例えばトニーがフライドチキンを豪快にドクターに食べさせ庶民の楽しみを教えてくシーンは観ていて思わずニヤってしてしまいました。
一方でドクターは、トニーが妻に送る手紙を詩人のようにロマンチックな手紙になるように教えるのですが、これがトニーがまた素直に受け入れるんですよね。
お互いが足らない部分を補いつつ、価値観が合わない時は喧嘩もしながらも、最終的には人種を超えた深い絆へと変わっていく二人を見ているだけで、温かい気持ちになるし、観ていて全く飽きることない映画でした。
心地よいターコイズ・グリーンの残像
アメリカ南部の牧歌的な田舎を走り抜けるターコイズ・グリーンのキャデラック。まるで旅行記の写真集でも見ているような美しい映像がこのロードムービーの全編になにげに散りばめられていて、それだけで心が和みます。この色は、どうやら意識的に、その他のシーンでもバックグラウンドに効果的に使われているようで、その残像がこの作品の印象と織なって心地よく心に残りました。
内容の方も、うん、すんなり入ってきて心地いい。主人公二人のかけあいもおもしろい(特にケンタッキーフライドチキンのとこ)。観る前にあらすじ読んで「またアカデミー狙いの黒人差別は許さない系のかた苦しいやつか」と少し肩ひじ張ってしまいましたが、まったく杞憂に終わりました(実際、作品賞は受賞してしまってるようですが)。特に差別に対する強いメッセージ性はなく、とにかく人種やジェンダーを超えて友情って素晴らしい、人間万歳っていう作品だと私は受け止めました。こんな作品、もっともっと出てきたらいいですねぇ。
ケンタッキーでフライドチキン!
ヴィゴ・モーテンセンのお腹が出てしまった。ロード・オブ・ザ・リングのアラゴルンが格好良すぎたので、そのギャップに最初は戸惑ったけれど、あれから20年も経っているしお腹くらい出るよね...と無理やり自分を納得させていたところ、役作りだったようだ。
トニーという粗野な役が(体型も含め)はまっていて、上品なシャーリーとの対比が良かった。
シャーリーがフライドチキンを初めて食べるシーンがお気に入り。トニーが飲み物をポイ捨てしてバックで取りに戻らされるところも。
すごく感動するとか、興奮するとか、そういうことはないんだけれど、終始穏やかな気持ちで観ることが出来て、最後は二人の友情に心が温まる。
人種の問題は日本にいる限りあまり身近なものではないけれど、私も見た目ではなく、その人自身を知って、関係を築いていきたいなと思った。
名作と言われる所以に納得
1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒として働くトニー・リップは、粗野で無教養だが口が達者で、何かと周囲から頼りにされていた。クラブが改装のため閉鎖になり、しばらくの間、無職になってしまったトニーは、南部でコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリーに運転手として雇われる。黒人差別が色濃い南部へ、あえてツアーにでかけようとするドクター・シャーリーと、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに、その旅に同行することになったトニー。出自も性格も全く異なる2人は、当初は衝突を繰り返すものの、次第に友情を築いていく。(解説より)
アメリカにおける人種差別という悪しき文化の歴史を垣間見た。
本作が実話ということを知らなかった。
トニーとドクターは作中で衝突しながら友情を築いていくが、なんでも生涯素晴らしい友人関係で結ばれていたそう。
間違いなく語り継がれる名作でしょう。
黒人ピアニストとその運転手の白人が差別の根強く残る南部での公演のた...
黒人差別の社会における唯一無二の存在は幸福なのか?
黒人差別について当時相当根深かったことがわかる。
教科書で黒人差別については習うが、そこで習うことよりもこの映画を見る方がよっぽど心に刻まれる。
この映画の主人公は黒人であるが黒人っぽくはない。
つまり、見た目は黒人なのだが、中身は白人の中でも格式の高い教養を身につけており、天才ピアニストである。
その境遇から、黒人でも白人でも無く何者でもない。
そう感じて、いつも孤独な状態。
舞台でピアノを演奏する時だけ歓迎される。
ただし、その会場でさえも裏では酷い扱いを受ける。
終盤に、黒人だけのバーで、無償でピアノを演奏する。
周りはノリノリで主人公も楽しそう。
唯一無二の存在は周りからは熱い眼差しを向けられる。
一方で、孤独との戦いでもある。
逆に、人と一緒で特に取り柄もなくても、周りに人がいて賑やかなことで幸せを感じる。
さまざまな側面で、社会や人の幸福について考えられる映画だった。
ピアニストと運転手
イタリア系アメリカ人というスパイス
黒人と白人
こんなカッコいい友達なら誰だって欲しい
実話を元にした物語。
タイトルになったグリーンブックとは、人種隔離政策時代のアメリカで発行されていた、
『黒人ドライバーのためのグリーン・ブック』
というガイドブック。
【ストーリー】
ニューヨークのクラブで働く用心棒のトニーは仕事上の揉め事で、クラブそのものが閉鎖される。
マフィアのツテで、オペラハウスの2階に住む、黒人ピアニストのドクの演奏ツアーに紹介され、ドライバーとして同行する事に。
世知に長けたトニーだが、どうにも行動の規範がゆるく、生まじめなドクにチクチク当てこすられる。
かみ合わない二人だが、ディープサウス(アメリカ深南部)で出くわすさまざまな社会問題に対面するうち、お互いに敬意を抱くようになり、だんだんと心の距離が近づいてゆく。
腕っぷしと口の達者さで生きるイタリア系の用心棒トニー・ヴァレロンガと、気品漂うアフリカ系クラシックピアニストのドン・シャーリー。
典型的な裏社会で生きるイタリア男と、黒人天才ピアニストの凸凹コンビが、お互いのギャップを埋めて友情を育むロード物。
ロード物とは、目的地まで移動しながら物語が展開してゆくジャンルです。
実話ベースだけあってエピソードはどれも生々しくピリ辛でときに重苦い。
あらゆる事におおらかでいい加減なトニーと完璧主義的な潔癖さをみせるドクとのやりとりが、ユーモラスでいちいち面白い。
愛する妻に日記のような手紙をしたためるトニーに、美しい表現と気持ちを表す文章を教えるドクと、ケンタッキーフライドチキンも知らないドクに、手づかみで食べる骨つきチキンの旨さを教えるトニー。
そしてドリンクをポイ捨てして、バックで道を戻らさせられて、ゴミ拾いするトニー。このシーン最高。
旅が進むにつれて黒人差別を目の当たりにしたり、受けたりしつつ、少しずつ変わってゆく二人の関係。
二人とも行動にぶっとい筋が一本通っているのが魅力的でカッコいい。
そしてラストの温かいクリスマスパーティー。
笑って泣けて、ほっこりできるヒューマンドラマの傑作です。
属性ではなく、相手を知れ
スッキリ見れるバランスの良い作品。ただし人種問題については一歩引いてみた方がいい。
ゴロつきのイタリア人と妙に上品な黒人との組み合わせ。
何しろ脚本がよい。色んな意味でバランスよく描かれている。細かいところにちゃんと伏線が貼ってあるので、人の対比だけでなく、時代背景もイメージしながら見れる。
人種問題を扱う映画はどうしても深い闇を描かれがちで、心してみないと重くなってしまうが、この作品は2人のキャラでいい感じに留まるので、比較的安心してみてられる。
しかし逆に言うと、こんなもんじゃない、という意見はありそうなので、あくまでも入り口、一つの視点、くらいに思った方がいいだろう。
個人的にはバーでピアノを弾くシーンはヒヤヒヤした。(それも制作側は予見してなのか、バーを出た後のドクのちょっと浮かれた感とニックの対応が、その感覚を消化させてくれた。こういうところも脚本が上手い)
差別打破へ女性への期待が込められたラストシーンか…
以前、やはりTVで観たが、
民放の短縮版だったような記憶がある。
その時の私の感性が低下していたのか、
そうではなかったのかは分からないが、
当時は余り感情移入出来なく、
短縮化に罪深く無理栗な編集があったものと
勝手に思い込むほどの今回の鑑賞になった。
結果として、
アカデミー作品賞他の受賞や
キネマ旬報第5位(読者選考第2位)の
評価に値する名作と納得出来た。
この作品は1962年の物語。
1964年の公民権法成立前で、
白人黒人二人の立場のひっくり返り以外は
従前からの差別環境そのもので、
二人の世間から浮いた感じは如実だ。
黒人ピアニストは仕事を通じて
古い差別慣習の打破を目指しながらも、
一徹さだけでは済まない現実的な対応も
あり得ることを知り、
己の孤独心も雇われ白人と
彼の家族の存在に癒やされるようになる。
一方、雇われ白人は
黒人の人間性と
彼の差別環境を目の当たりにして、
己の偏見を正し、彼を己の家族に招き入れる
ことに幸福感まで抱くようになる。
主役の二人のお互いに良い刺激を与え合い
成長する姿は、
心理学者の島崎敏樹さんの
“愛とはお互いの人格を高め合う行為”
との言葉を思い出す。
また、直前にヴィスコンティの「家族の肖像」
を観たが、“孤独と家族への想い”の観点では
同じテーマ性も感じた。
ラストシーンの印象深い名画も数多いが、
この作品も見事だった。
黒人ピアニストを抱擁しながら、
夫からの手紙が彼の作文と見抜いていた
雇われ白人の妻が
「手紙をありがとう」と囁くラストは、
女性の洞察力の鋭さを示すだけではなく、
肌の色の違いを乗り越える見識を持った存在
であることを示唆しているようで、
差別打破への監督の期待が込められた
見事な描写に思えた。
『ニガー』と言うな!
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