劇場公開日 2019年3月1日

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「「人間の肯定」を魅せてくれる傑作」グリーンブック Garuさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「人間の肯定」を魅せてくれる傑作

2022年1月22日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

 ジャズピアニストとして名声を得た育ちの良い黒人シャーリーと、粗野なイタリア系白人ドライバーのトニー。

 正反対の個性を持つ二人が、実に人間味のある友情関係を築いていく。 プロセスの描き方が自然で、後味の良い感動にひたれる。 アカデミー作品賞と脚本賞の受賞は、文句なしで納得。 何度観返しても楽しめる、極上のロードムービーだ。

 激しい差別が渦巻く南部のツアーに乗り込んだシャーリー。
世間知らずで頼りなく見えるが、様々な災難に遭っても挫けない。 彼を守っているのは、信念を貫く強さ以上に、人間を信じる純粋さだ。

 一方のトニーは、場数を踏んで現実を身につけた男。
無学で無頼。 時には、暴力で問題を解決する。 そんな彼がシャーリーと信頼関係を築いていくことになるのは、人間に対する肯定感で通じ合っているからだろう。

 優しさで人間を否定しないシャーリーに対し、暖かい家庭と多くの経験の中で多様性を身につけた大人のトニー。 様々なエピソードを観るうちに、この二人が、違うようで実は同じステージに立つ同類だということが分かってくる。

 鑑賞後の後味が良いのは、いつまでも忘れずにいたい「肯定的な感動」を味わえるからだと思う。

 ピーター・ファレリー監督の「いとしのローズマリー」を観た時、 作品に関わったスタッフ全員のチームワークの良さを強く感じた。 同監督の映画創作の根底には、「人間を肯定的に描きたい」という強い思いがあるのではないだろうか。 グリーンブックは、そんな監督のこだわりが見事に結実した完成品である。

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Garu