「アメリカ人はヒーローやヒロインに飢えている?」ライリー・ノース 復讐の女神 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカ人はヒーローやヒロインに飢えている?
ポスターから受ける印象ほど軽いママさんではなくて、それなりの痛みや重さを引きずりながらのリベンジ劇です。
意外なところで科学的捜査が出てきたり、登場時間の割に応援したくなるFBI女性捜査官なども出てきて、尺の割に濃密な作品です。
最近出たばかりのジョン・グリシャム(ジュリア・ロバーツのペリカン文書やトム・クルーズの法律事務所などの原作者で、リーガルサスペンスの巨匠)の新刊『Rogue Lawyer』(邦題:危険な弁護士)でも描かれていたのが、司法制度の問題点や警察への不信でした。金や金から生じるしがらみ(癒着と言った方が適切?)が大手を振るい、〝正義〟は一体どこへ行ってしまったのか?
反権力側のアウトロー弁護士の方が、困難な状況に置かれた中でも、実は正義の為に闘っている、という早く映画化して欲しくなるような、とてもサスペンスフルなリーガル・ヒューマンドラマです。
その流れで見ると、この映画も批判精神を結構、発揮してました。
・証人の服薬状況の一方的判断…反証の機会すら与えられず、精神を病んだ人と断定され、強制入院すらさせられそうになるリスク。被害者の方が救われないという衝撃。
・目撃証言がどれほどたくさんあったとしても〝ホームレス〟というだけで、証人として採用されない(認められない)現実…そういう背景を現場で知っているからこそ、あの癒着刑事は平気であの場でFBI捜査官を撃てたわけです。
〝悪徳〟に続く言葉を連想する時、多くの人が浮かべるのが、悪徳政治家、悪徳弁護士、悪徳刑事なのではないでしょうか。悪徳常務とか悪徳映画監督などとは言わない(笑)。
アメリカでは、無抵抗の黒人を殴る白人警官がよくニュースに出てくるし、本当に切実な思いでヒーロー・ヒロインを待ってる人が多いような気がします。
本当の正義の実現のためなら、超法規的手段であっても正義を実践してくれる人なら、ヒーローやヒロインを名乗る資格がある、ということだと思います。