「これはサイコサスペンスだ」ラストレター ネコ庭さんの映画レビュー(感想・評価)
これはサイコサスペンスだ
乙女チックなファンタジーにああだこうだ言っても詮無きことです。
ですから無理くり設定は目をつぶりましょう。
同窓会での松たか子の異常行動、いわれなき夫の暴力で携帯壊されても平然として日常を続ける松たか子。
妻への嫌がらせのために大型成犬を2匹(あの大きさなら2頭だね)も突然買ってくる狂気の庵野秀明。
世話は当然松たか子と言い放つ庵野秀明。松も働いてるよね。平然として受け入れる松。
出だしからそこはかとなく流れるサイコ臭。
妹が姉になって、娘が母になって三つ巴の文通、どうなるかと思いきや、そこは投げっぱなしだ。
そこ興味あったのになぁ。筆跡が違う同一人物との文通。
福山の反応も描かれず、無かったような扱いされてガッカリ。
他いろいろ目をつぶります。
でも福山雅治の異常設定は、考えると相当ヤバイです。
以下、邦画はほとんど見ず、ディストピア・暴力映画ばかり見ている私の感想です。
神木君の変化に乏しい能面顔、返事もないのに大量のラブレターを送り続ける。
しかも毎日学校で会えるのに、電話というものもあるのに、本人に言わず。
他人には絶対読まれたくないはずのラブレターを他人の妹に渡し続ける。
怖いですね。恐怖のストーカー気質が見てとれます。
「手紙」を映画の軸にしたいためとは思いますが、異常人物の誕生です。
大学で付き合っていたというのですが、そこはほぼ描かれません。
妹と知ってて声をかけて、「ずっと好きでした」って怖すぎます。
ここがこの映画のキモです。
未咲と間違えてなら兎も角、わかっていながらの言い寄りと怖いメール。
監督としては観客をミスリードしたかったのでしょうけど。
妹ともあわよくばとの気持ち悪い人物設定です。
バスを待つベンチでの松の怯えた顔と雅治のブキミ悪い演技がサスペンスを暗示します。
途中で住所がわかるなり押し掛ける福山雅治。怖いです。
行く前に普通の人間だったら手紙で知らせるよね。異常な自分勝手さが垣間見れる事象です。
そんなこんなで、怖いサスペンスは続きますが、唐突に出る豊悦の悪魔のような人物。
裏読みしましょう。
未咲は付き合っていた福山の異常性を目の当たりにし、怖くて豊悦と駆け落ち。
しかし未咲のお腹にはすでに福山の子が・・・。
美咲は黙して語らず、豊悦は托卵をうすうす感じ、それが引き金となり生来の凶暴性が目覚め悪魔化。
ですから彼の暴力は託された卵から生まれた鮎美にも及びます。
全てを知っている美咲は現実を受け入れられず自ら死を選びます。
悲しいお話です。
それなのに吞気にストーキング小説を書いたり、尚且つそれをストーキング被害者本人に送りつけたり、
妹である松にちょっかいを出したり、知らぬこととはいえ実の娘にサイン本を渡したり、
吞気に思い出写真集を松に渡したり、、、、
そして写真に写っているのは、サスペンスの発端となった高校と生き残った実の娘。(いとこと共にちょっとだけシャイニングの双子風)
なんかすごく肌寒いコワさです。
連続殺人こそ起きませんが、横溝正史の世界です。
福山の手紙が実家に届いたときの颯香のセリフ
「おばさんが死んだの自分のせいだって言ってるよ。・・・えっ犯人ていうこと?」
そうです。福山が犯人です。
綺麗綺麗な映像と綺麗綺麗な役者たちの裏で流れるノイズのような不整合性。
ストーキング小説以降、小説が書けない小説家。
サイコです。
あ~コワかった。
それにしても滅多に邦画を見ないワタクシ。
珍しく2本続けて見た邦画の両方に神木君が出てるとは!
ちなみにもう一本は「ゴジラ-1.0」です。
最後に流れる曲、子供に歌わすには難しすぎない?こんなところにもサイコ風味が。