「ダメ男臭プンプンの乙坂は良い。が」ラストレター 上田さんの映画レビュー(感想・評価)
ダメ男臭プンプンの乙坂は良い。が
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岩井俊二作品にはリアリティがない。映っている風景は現代の物だが内容はあり得なさすぎるファンタジーだ。そこに入り込んで楽しめるか否かにかかっている。私は無理だった。
リップヴァンウィンクルのように詐欺師のような男が出てきて主人公が極端なキャラクターで結末がどこに行くのかわからない振り切った設定であればそれでも入っていけるが、今回のような手紙を介した恋愛ものは気になることがたくさんあって入り込めなかった。姉(母親)が自殺したのに全員そんなに悲しむでもなくさっぱりしている。酷い状況であったということだがそれでも近しい血縁者が自ら命を絶ったのにみんな明るいのだなあと思った。乙坂も、昔あんなに好きでずっと小説に書きたくて想い続けてきた女性が自死したと聞いたらもっとうろたえるものではないのか。描きたいものを描くためにキャラクターの他の感情を犠牲にしているように見えてしまった。
乙坂と姉の恋愛もよくわからなかった。全てを描く必要はないが、そんなに好きだったのにどうして別れたんだというところが気になった。姉は情緒不安定だったのか、乙坂もダメ男臭がプンプンなので説明を聞いているだけでもまあダメになるのだろうなとは思うが(そこが良いのだが)、恋愛ものとしてはそこのところが見たいのになあ。
全てを美しく飾ったあっさりとしてつかみどころのない詩集のような作品でした。
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