「君にまだ恋してるって言ったら、信じますか?」ラストレター 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
君にまだ恋してるって言ったら、信じますか?
相変わらずの映像美に吸い込まれながら、同窓会の案内が届いたところで、観ているこちらはすでに終わった恋だと知っているのに、何故だか”恋の始まり”を感じて、胸が苦しくなり始める。現代的じゃない「手紙」というツールが、ノスタルジックな感傷心をかきたてて、名作の予感がうずうず。
しかし、どこか筋書きに破綻が見え隠れしはじめると、こちらのトーンもクールダウン。
ちょっと冷めた目になってくると、今度はキャスティングに、うがった想像をしだす。
ドン臭い大人になった乙坂になぜ福山なのか?ほんとに冴えなく売れない小説家(本人がそれにしがみ付いているだけだが)を他の役者で演じれば、ただの粘着質の過去を忘れなれないみじめ男でしかない。それを福山の容姿を暗に思い出させることで、この人はほんとはもっとパッとした人なのに、と弁護したくなる気分を狙っているのではないか?
淡い初恋に再会した裕里になぜ松たか子なのか?死んだ姉に比べ精彩のない妹を他の役者で演じれば、昔嘘をついていた嫌な女でしかない。それを松が、今は家族を大事にしている妻をカラリと演じることで、その嫌味が消える。
つまり、映像美やキャスティングに騙されているだけで、けっこうジメッとした映画なんだということ。過去や現在の手紙のやり取りは、その手のかかり具合が面倒で、だからこそ思いがぎゅっと詰まっている気はするのだが、なにかその純粋な気分を、「俺は初めから知っていたよ」で裏切られた気がした。(そこできゅんとする人もいるだろうが)
何か。誰か。自分の口で直接伝えることができない代わりに、別の手段を媒体に相手に伝えることの切なさや、純真さ。この映画からそれを受け止められる人と、冷めてしまう人、両極いるだろうな。