「子供向けがあっても良いじゃない」スパイダーマン ファー・フロム・ホーム alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
子供向けがあっても良いじゃない
アベンジャーズシリーズにあって唯一の子供向けなのかもしれない。何も考えずサラッと見られます。
あらすじ:
サノスの指パッチンから生還した人々の混乱がまだ残る、ある夏休み。同級生のMJを好きになった主人公ピーターは、ヒーロー業をお休みして束の間のバカンスを楽しみたいと考えていた。旅行先でMJに告白したいと色々計画を練っていたピーターだったが、敵の襲撃に遭い、ニック・フューリーから呼び出され、結局旅先でもスパイダーマンとして働くことになり計画は台無しに。そんな中現れた、陰のある実力者ミステリオ。ヒーロー業ももちろん大事だが、普通の人生も大切にしたいという気持ちの間で揺れるピーターは、「自分はあくまで『ニューヨークの隣人』であり、『世界を救う』ような大役はミステリオのような実力者に任せた方が良いのでは」と考えるが…
今作では前作の騒動なんか無かったかのように、最初から突然ピーターがMJのこと大好きになってて目が点(・_・)
前作ではまだアイアンマンが生きてたし、ってことは『エンドゲーム』以前の話で、今作は『エンドゲーム』後の話で、随分時間が経ってる設定だから仕方ないんだけど、スパイダーマンシリーズとして連続して見るとちょっとビビる。
少年の揺れ動く恋心みたいなのもスパイダーマンシリーズの醍醐味のようだから、ストーリー上いつまでもいなくなった子のことをウジウジ言ってるわけにもいかないし、どのみち仕方ないのかなとも思いますが。そういうところも含め、スパイダーマンシリーズは全体的に色々とご都合主義。
アベンジャーズシリーズに限らず、DC然り、過去のスパイダーマンシリーズ然り、とにかくアメリカのヒーローものは暗い話になりがち(たった一人で敵に立ち向かうも味方は少なく国民からは叩かれまくり失意のまま終わるみたいなやつ)だけど、MCU版スパイダーマンは15歳の少年ならではの悩みとか失敗とか、すごーーく子供らしいシーンがチラチラ出てきて、(最初に叔父が死ぬ以外は)敵以外誰も死なないし、重い空気になることもほとんどなく、大人向けのアベンジャーズシリーズと合流したものの、本シリーズはかなり子供向けの雰囲気が漂い、良いバランスを保ってると思います。
前作も子供の成長物語感が強かったけど、成長したとはいえ今作もそんな感じ。そりゃいきなり1つ山場を超えたからって、急に大人になれるわけじゃないもんな。
冒頭、「トニー・スタークの後を継ぐ気分は?」と訊かれたスパイダーマンは「もう行かなきゃ…」と濁して逃げ出す。
いや、荷が重いでしょ。特に世話になってて、父のように慕ってたアイアンマンが亡くなって、まだ心の整理もできてないのに、世間からは死んでしまった有名ヒーローの「後を継ぐ」とか言われて、「自分はまだまだだ」と痛感したばかりなのに期待ばかりされて持て囃されて。
前作ではあんなに「自分だってやれるんだというところを見せたい!」「ヒーローの仲間入りしたい!」ばかりだったのに、今作では自分の実力を理解して、逆に「クィーンズの隣人」以上のことはできない、したくないと自信を失っている。
急に世界平和のためとか、平行宇宙がどうとか言われても、聞いてる分にはワクワクだけど、いざ自分が、自分の人生を犠牲にしてまで世界を守れとか言われたら、そりゃビビっちゃうよ。自分だったら100%真っ先に逃げ出す(断言)。
特にピーターは、人生楽しくないわけでもなく、オタクだけど恋に勉強にと結構楽しんでて、そういう人生を捨ててヒーローになるかと言われたら、そりゃね。悩むよね。
そんなところに現れた実力充分の救世主!ミステリオ(ただの「怪しい奴」の意)!
ヒーロー業はコイツにやらせときゃ良いんじゃね?となるよね。そりゃね。
ミステリオ役のジェイク・ギレンホールの顔が、以前からどうしても嫌な奴にしか見えなくて(失礼だな)、実を言うと原作無知すぎて鑑賞前は本気でミステリオを新しい仲間だと思ってたんですが、ジェイク・ギレンホールの顔が出てきた瞬間「お、コイツいけ好かねーわ絶対裏切るわコイツ」と思ったらほんとに敵じゃねーか。
で、トニー・スタークが死んだ後まで迷惑をかけるというトラブルメイカーっぷりを発揮してますが、ピーター・パーカーのおマヌケっぷりももちろん発揮。トラブルメイカーとおマヌケのタッグって(人に迷惑をかけるという意味で)最強じゃないか…?
案の定ミステリオとかいう明らかに軽薄で裏切りそうなぽっと出のクソダサスーパーヒーロー(失礼だな)を簡単に信頼し、大事な物を譲り渡してしまう。裏切られ傷心のピーター…でもディズニー版アベンジャーズと合流したので軽やかなコメディ感は今作も健在。暗くなりすぎず自分には好印象です。それもやっぱり子供向けっぽく感じさせる1つの要因なのかもしれませんが。
『キャプテン・マーベル』から何故か唐突にギャグ要員になったニック・フューリーが、今作でもちょいオモロキャラとして出ています。何なんだろうね。好きです。
その他、ピーターの叔母さんの恋の行方とか、全然モテそうにない(自覚あり)のに何故かモテるMJとか、稀代のゆるキャラ兼みんなの大親友ネッドとか、シリアスな中にポツポツと入る日常の楽しい小話もあり。
MCUシリーズの中で突出して良かったかと言われると自分の中ではそうでもないですが、低評価するほどでもなく。ただ、今作は前作よりもハッキリと「次作に続く!!!」感を残して終わったので、どちらかというと次作の方が気になります。今後はドクター・ストレンジシリーズやヴェノムシリーズと繋がっていくようですね。
レンタルやVODでご覧になるなら、ぜひ2作目(今作『ファー・フロム・ホーム』)と3作目(『ノー・ウェイ・ホーム』)は同時レンタルしてみては。
しかし叔母さんの「ピータームズムズ」のネーミングセンスが良すぎる。