劇場公開日 2018年10月26日

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「SNSの真実」search サーチ 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0SNSの真実

2018年11月4日
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鑑賞方法:映画館

知的

 SNSをテーマとした映画は昨年公開のトム・ハンクスとエマ・ワトソンの「ザ・サークル」があった。SNSが参加者による同調圧力で村八分のように弱者を叩く炎上の場と化し、承認欲求を満たすために世界観が極端に狭くなり、衆愚になっていく様子を描いていた。
 本作品はそれとは一線を画し、SNSをツールとして失踪した娘の居場所を突き止め、真相を明らかにするストーリーである。兎に角パソコン画面の転移とポップアップが速い。羨ましいほどのマシンスペックと超ハイスピードの通信環境である。
 主人公は反省のない暴力的な父親だが、その検索能力は大したものである。テレビドラマ「相棒」の杉下右京警部がインターネットや防犯カメラの画像から手がかりを把む場面がよくあるが、この映画ではその場面が頻繁に現れ、目を離すことが出来ない。
 ストーリーもよく出来ているが、SNSの本当の姿を上手に表現しているところが興味深い。人がSNSにアップするのは本当の姿ではなく、こういうふうに思われたいという願望なのだ。そこには常に、同調圧力に気を遣う忖度が働いているし、弱者を徹底的に痛めつけることで強者になった感覚を味わう歪んだ承認欲求がある。
 ショーペンハウエルというドイツの哲学者が、対人関係では第一印象が最も正しいという意味のことを書いていた。知り合いになって話をするようになると、人は自分をよく見せる話しかしないから、第一印象が悪い人でも、話してみたらいい人だった、ということになる場合がある。しかし何か極端な状況が発生した時にその人の本性が現れると、やっぱりそういう人だったか、最初からそう思っていた、ということになる場合もある。
 ネット環境がない時代は対人関係は狭い範囲に限られていたから、場合によっては本音も言うし、愚痴もこぼす。しかしネット上では、無理をして自分を飾らなければならない。SNSはそういう落とし穴が無数にあって、沢山の人がその落とし穴にはまっている。失踪した娘も、例外ではなかったのだ。

耶馬英彦