劇場公開日 2018年10月26日

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「何が飛び出してくるか分からない緊張感」search サーチ カミツレさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0何が飛び出してくるか分からない緊張感

2018年10月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

知的

 本作は全編PC画面の映像で展開していくサスペンス・スリラーです。「全編PC画面の映像」と言っても、ずっとリアルタイムで進行していくわけではなく、早送りになったり、時間が飛んだりといった編集も当然入りますし、画面も固定ではなく、情報的に重要だと思われる部分にカメラがフォーカスする等、ちゃんと観やすいように配慮されていますので、ご安心ください。(「予告編」ではそこが分かりにくかったのですが、ネットで公開されている「冒頭映像」や「本編映像」を見ると、本編の大体の雰囲気がつかめると思います。映像はどちらも「映画.com」で見ることができます。)
 映像面での斬新さもさることながら、本作の一番の見所は、インターネットを活用したネタがふんだんに盛り込まれているところにあると思います。映画におけるインターネット描写も、本作で一気に最新版にアップデートされたと言えるのではないでしょうか。
 インターネット上では情報が洪水のようにあふれ、価値のある情報と無価値な情報を峻別するのが非常に困難になっています。本作でも、ネット上での何気ないやりとりや、SNSに上げた写真や動画が、思わぬ形で重要な手がかりとなる場面が出てきます。普通は気にも留めないようなところに意外な伏線が潜んでいますので、初見で気が付くのはまず無理だと思いますが、手がかりが全て画面上に映し出されているという意味で、ミステリーとしての公平性は担保されていると思います。

※以下、本編の内容に言及しています。具体的な物語のあらすじや事件の真相など、直接のネタバレになるようなことは書きませんが、鑑賞前に何も情報を入れたくないという方は気を付けてください。
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 個人的には、SNSから娘のマーゴットの足取りをたどる序盤が一番ハラハラしました。SNSの「どこの誰とつながっているか分からない」怖さと、画面の目新しさとが相まって、「ウィンドウを開くたびに、何がポップアップして(飛び出して)くるか分からない」という緊張感に満ちています。
 中盤にはマーゴットの失踪事件についての報道が加熱し、流言飛語が飛び交い、デビッド(父親)の言動にネットが過剰に反応するという事態が描かれます。ただし、ここでの描写は割とあっさりめです。この部分をもっと膨らませれば、本作とは違った面白さをもつ“劇場型”(もしくは“炎上型”?)のサスペンスが一本作れそうな気がします。
 終盤で明らかになる意外な真相は、ちゃんとインターネットならではの設定を活かしたものになっていますし、前半に散りばめられた伏線が機能して、二転三転するストーリー展開も見事だと思いました。ただ、良くも悪くも“よくできたミステリー”に落ち着いてしまった感は否めないかなと思います。

 今後、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『パラノーマル・アクティビティ』が流行った時と同じように、本作を模倣したB級・C級のインディーズ作品が大量に作られそうな予感がします。
 本作はこのスタイルの先駆けとしては映像的にも洗練されていて、かなり観やすく工夫されていますし、ミステリーとして終盤の話の畳み方も上手く、きれいにまとまっていたと思うので、これを超えるのはなかなか難しいと思いますが。

カミツレ
浮遊きびなごさんのコメント
2018年10月28日

カミツレさん、
はじめまして、浮遊きびなごと申します。
コメントと共感、ありがとうございました!
勝手にお名前出してしまいすみませんでした……。

見たくないものが突然ポップアップするのではという
緊張感と怖さ、という点に同感です。一方で僕が興奮
して書き殴った部分(二転三転)も冷静に書かれてますね。
カミツレさんのレビューを少しだけ拝読致しましたが
(残念ながら『インクレディブル・ファミリー』
 と『カメラを止めるな!』しかカブらず……)、
丁寧ですね。非常に丁寧ですね。落ち着いた読み心地に、
作り手と映画への敬意、読み手への配慮が感じられて
素晴らしいと思いました。『search/サーチ』に登場する
ネット住民に爪の垢を煎じて飲ませてあげたいです。

ああ、ところで、僕の好きな映画は死人と死霊が多めの
映画が大抵なので、たぶんカブらない方が健全ですよ(笑)。
とはいえ、カミツレさんと鑑賞のカブった映画の
レビューが読めるのをまた心待ちにしております。
長文レビュアーのよしみで(?)今後ともよろしくお願いします!
コメントまで長くて申し訳ないですが……
またお会いしましょう! それでは!

浮遊きびなご