「また陳腐な邦題。『VOX LUX』って何の事?ラテン語で voice of light ですと。ちょっと意識高い系。それが日本人受けしない理由かな。」ポップスター もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
また陳腐な邦題。『VOX LUX』って何の事?ラテン語で voice of light ですと。ちょっと意識高い系。それが日本人受けしない理由かな。
①「ブラック・スワン」でヒリヒリ演技を見せたナタリー・ポートマンは今度は徹底してビッチ演技を繰り広げます。②酷評が多いようですが恐らく感情移入できるキャラがほぼいないからでしょうか。③スターになるのを夢見ていたのは恐らく姉のエリーの方だったのでしょう。それが悲劇のヒロインになったことでセレステの方がスターになってしまった(ならされてしまった、という方が正しいかも)。そしてエリーは裏方に回った。セレステがエリーに対して複雑な感情を持ってしまうのは、エリーに対する引け目をいつも感じているからでしょう。④セレステにとっても悲劇だったのは、14才でショービジネスの世界というか大人の世界に放り込まれたこと。荒んでしまうのもある意味仕方ないのかも。17才で娘を生んでもそれで母親になれるわけではないし、またそこでも姉に借りができてしまった。⑤気付いた時にはもう後戻りできなくて、スターとして前に進むしかない。でも元々なりたかったわけでもないので、絶えず恐怖を感じながらスターを演じ続けなければならない。屈折しまくりですね。ビッチになるのも頷けます。⑥世間(マスコミ)は悲劇のヒロインがビッチなスーパースターになったことをいつまでもあげつらう。開き直らずにはやっていられませんわね。⑦考えてみれば彼女の人生はいつも人に左右されてきたと言えるかもしれない。無差別殺人に巻き込まれたことも然り、生き残ったことでスターになってしまったことも然り。出口のないトンネルを猛スピードで走っていく夢も、エリーに話した悪魔と取引したという幻想もそんなところに由来しているのかも。⑧そんなことも全部抱えて今後もスターをやっていくことを、しんどいことだけど逃げないと、ラストのステージシーンは表しているのではないのでしょうか。⑨彼女が抱える閉塞感と今という時代の持つ閉塞感とをシンクロさせているのですが、惜しむらくはキャラではなくそういう物語世界に共感できるところまで映画として昇華できていない点でしょうか。映像的にはハッとするところが所々あったのに。⑩ラストクレジットはちょっと驚きです。はじめて見ましたね、あんなの。