女王陛下のお気に入りのレビュー・感想・評価
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面白すぎる!
ランティモス監督が作った小さな箱庭。その中を虫眼鏡を使ってつぶさに観察しているような体験だった。登場人物の毛穴まで見えるような観察。
人間による営みの中から活動性が登場し、現実に代わって中心になっていく。
魚眼レンズの使い方も実に効果的だ。世界はそもそも歪んだヘリを持っている。
箱庭の中の登場人物の活動を分析すること。それのみで全ては語られているように思えた。
愛の対象であり、殺して食する対象でもある動物の描き方もこの監督らしい。(ロブスターが出てきたときは笑った。)
ランティモス監督の作品から感じることは、監督が自分の思索の奥底に揺動するものから、「世界の様式」を問い続けるために物語を書きはじめているということだ。
作品によって設定は違うが、現在の私たちを取り巻く世界の様式の一部を端的に表している。
ゴージャス!
三人の女性たち、アン女王、レディ・サラ、アビゲイルのそれぞれの出世欲、権力欲、孤独、劣等感、策略、愛、嫉妬と憎しみが命懸けの争いを生み、三人の関係性を激しく揺さぶり、それでも彼女たちは互いに依存し合い、そして傷つけ合ってゆく。三人の演技は見応えたっぷりだった。
本作で男たちは、サラの戦争の駒、女王の間抜けなしもべ、アビゲイルの出世の道具として、そして性欲しかない阿呆かガキのように描かれ、主人公たちから徹底的に蔑まれる。
また、うさぎ、アヒル、狩りの獲物の鳥やロブスターなどの小動物は、人間に生殺与奪を握られた歪んだ欲求の対象として、ランティモスらしく不気味に画面に登場する。「不完全な」人間が、動物に改造させられる不条理を描いた『ロブスター』を彷彿とさせる。ちなみに『ロブスター』で主人公のデビッドが、改造させられる動物にロブスターを選んだ理由は、死ぬまで生殖能力が衰えないから、だった。冒頭の乗合馬車の中の男の行為、馬車から落ちた臭い泥、アビゲイルが父の博打の借金の形に差し出されたドイツ兵の小さな性器の描写、主役三人のそれぞれのゲロ、アビゲイルの結婚初夜の描写など、変てこなシーンも満載だ。
それにしても、特にアビゲイルを軸にしたストーリーは分かりやすいし、独特の不条理でエロチックな意味の場も作り上げてるし、重厚な宮廷のセットもカメラも良いし、いろんな風に楽しめる傑作だね!
「お気に入り」とはどういう意味なのか?それは観てのお楽しみ。
観る前の期待=>楽しい映画なのかな!ワクワク!笑うぞ!
観た後の感想=>悪夢だ・・・悪夢でしかない。
前情報全く入れず、皆さんの感想もあえて見ずに、、、観たらこの衝撃。普段僕は分かりやすい映画ばっかり観てるし、ランチモスの過去作は1つも観てないから、そう感じたのだと思います。
序盤はシュールなギャグでコメディ調。しかし途中から全然笑えなくなる。ダメだ!ダメダメだ。ああああぁもうこの女3人何やってもダメだ・・・。おまけに化粧なんかしちゃってるイギリスの王宮の男どもって全然ダメじゃん。え?てことはイギリスという国家がダメじゃん。てゆーか登場人物みんなダメじゃん。この悪夢から早く解放されたい。俺はいったい何を観てるんだろう?
この救いのなさが実に素晴らしかったです。すっかり嫌な気分にさせられました。
帰りの電車では何でこんな嫌な映画なのか?を考えてました。
この映画、観客の気持ちが宙ぶらりんにさせられ、落ち着きません。それは何故か?
3人の女達が、わかりやすい善悪に分類できないから。この人は良い人なのかな?と思うと裏切られる展開の連続。いったい誰の物語なのか?分からない。先が読めない。最終的な着地点もよく分からない。ますここが上手い。
そして、人間の本質的であるが故に醜い部分を、これでもかと観せつけてきます。レイチェル・ワイズもエマ・ストーンも、狡猾で強欲で自分のことしか考えていない。しかしそれも悪いこととは言い切れない。何故なら、それが彼女らの生きる手段だから。そんなことは分かってるさ!でも、いざこうして映画として観せられるとこんなにも嫌な気持ちになるものか。
特にアン王女の描き方が上手い。この映画は、不幸な人生を歩んできた彼女の哀れさを単に御涙頂戴にしていない。結局、彼女も自分のことしか考えてない。エマ・ストーンもレイチェル・ワイズも、アン王女の娼婦でしかないことが段々とわかってくる。
この嫌な感じは、普段我々が日常生活を送っている時に潜在的に感じていること。みんな表に出さないけどね。だからこそ、こんなにも嫌な気分になる。嫌な感じの切り取り方が上手い。
この映画には救いが全くないのか?というとそうではない。そこも上手い。エマ・ストーンがアン王女の苦しみを分かってあげるシーン。アン王女がエマ・ストーンの結婚を祝福するシーン。レイチェル・ワイズが夫の武運を祈るシーン。これらのシーンは救いがある。そのように撮られている。
この世という地獄から逃れるための唯一の方法は、自分以外の者のために良いことをすることなんですよ!と言いたいのかな・・・多分。
人生の9割以上はダメダメ。良い瞬間というのは1割程度しかないのかもしれません。
勉強になりました。
飛ぶほどではなかったけれど。
何を言ってもネタバレになりそうな気がするので、ストーリー自体にはあまり触れないことにします。
この監督の作品は、色調がいつも統一されており、アングル、カット、音の使い方の部分で進化している気がします。
悪い意味で、撮る人が撮ったら、ただのどろどろした宮廷女同士のバトルものになってしまっただろうなーというイメージ。
枯れた感じのレイチェル・ワイズ(ウィノナ・ライダーもこういう感じで出て欲しいなと思った。反日なのは知っているけど、なんだかんだ好きだし。「ブラック・スワン」の時の、まさに!なあの役演っちゃうとことかすごいと思う)も、今作にて、いろんな顔で魅せてくれるエマ・ストーンもよかったです◎
ただ、個人的には飛ぶほどは入り込めず(「聖なる鹿殺し」のほうが効いた)、ネット評価が高いのは「アカデミー賞最有力候補」みたいな謳い文句がついているせいでは?とも思っています。
とは言うものの、ヨルゴス・ランティモス監督作品、「ロブスター」「聖なる鹿殺し」「籠の中の乙女」と観てきてかなり好きではあるので、今後も追うことは間違いないです。
The Favourite Is My Favorite
ヨルゴス・ランティモス監督作品は、今回初。
ロブスターは、
ちゃんと観ておけば良かったと思っているので、
見直す予定。
この物語に出てくる、
セリフのある登場人物の大半が、
そこはかとなく狂っている。
でも、狂っているのが、当然ですが何か?
という感じなので、
この映画で描かれる世界全体が、
狂っているように見えてくる。
観ている自分は、狂った世界にいきなり飛び込んで、
置いていかれる。
その狂人らが見せつける、露悪的な描写は、
ある意味で人間本来の姿の一部を描くがごとく美しい。
思わず笑みがこぼれる位に、素晴らしく、
唾棄すべき言動ばかり♡
菓子を貪り食い、嘔吐し、
吐瀉物が髪についたまま、
また貪り食い続ける女王。
そして、
その女王へ取り入ろうと、様々な策略を巡らす、アビゲイル。
舌で女王を慰める下りは、どうかしている。
レディ・サラの強烈な攻撃性そして、支配力。
鳥撃ちが趣味で、女王すら支配している、
その姿も美しい。
復讐に乗り出すところも素敵だったなぁ。
奇抜な格好の野党党首や、アヒルを連れて散歩する与党党首も
どう見ても、ずれている。
〜〜〜
アビゲイルとレディ・サラが初めて、鳥撃ちをするシーンは、
衣装といい、印象的なシーンで、ハッとした。
アビゲイルはそれまでは、割とまともな世界の住人だったはずだが、
没落した地位を取り戻すために、
狂っている世界に飛び込む入り口のように思えた。
この映画の主演と言って良い、
三女優の演技はとにかく、素晴らしく。
久々に観ていてワクワクとした。
ただ、観る人を割と選ぶ映画なので、
番人受けはしないとは思う。
想定の範疇の想像外
予告編が良かったのか、ずっと気になってたので、空いた隙間にスルリ。
展開や流れは「ん~、そーだよねー」なのですが、端々の処理の仕方が絶妙というか、あり得るものをあり得ない見せ方にするのが上手いというのか。ともかく、目を離せない時間でした。展開もくどくなくサクサクしてるのも良かったのかな。
感想としては「ですよね。」でしたけれども、アリでした。
ウサギを踏まないで!
中世の史実に基づいた話なのに広角レンズで撮影してるので何だか普通じゃない雰囲気。
でもこの監督の他の作品よりはわかり易かった。
撮影はハットフィールド・ハウス。15世紀末に高位聖職者の邸宅として建造された建物だとか。これにセットや美術変更を加えて撮ったらしい。どれが作りものか分からんかった。泥舟風呂場作ったらしい。
その8まであったかな。
エマストーンが意外なシーンおっぱい出しててびっくり、それまでは出そうでも隠してたのに。
百合三角関係
だんだんヘロヘロになっていく女王様痛々しい。
六本木には撮影で使った衣装が展示。
思ったより質素というかゴージャス感薄い。映像ではきらびやかにみえたのに。
後味悪い
あまりにも後味が悪いから、
このシーンで終わらないで!と
思ったシーンで終わりました。
残ったのはアビゲイルですが、
野心家で人心掌握は長けているが、
サラほどの政治的手腕や実務能力を
持たない彼女には、到底アン女王を満足
させコントロールすることはできない
でしょう。
一方、仮にサラが残ったとしても
アビゲイルによってアン女王は自尊心を
少し取り戻しており、これまでのように
アン女王と均衡をうまく保ちつつ政治を
牛耳ることはできないでしょう。
3人で保っていたバランスが崩れ、
誰も勝者はいない状況で、
サラ戻ってきて!と願いましたが
エンドロールとなり、大変後味が
悪かったです。
かわいい顔して清々しい程野心家の
アビゲイルと、毒を盛られ馬に引き
摺られてもピンピンしてる豪傑な
サラと、繊細で欲深く愚鈍に見えて
切れ者でそれをすべて瞳で語ってくる
女王を見ているだけで、楽しく、
ラストまであっという間でした。
シニカルな笑いに気をとられるが実は深い
三人が織り成す心的な展開をシニカルな笑いを入れながら表現しているのは見事!三人の演技も素晴らしい!でも権力は人を幸せにしないことを痛切に教えてくれるラストの展開に本当のこの映画の素晴らしさがある!
英国は侮辱されている
スカッとした映画や感動する映画
日常的に考えさせられる映画。
そういう映画が観たいバカです。
小難しい英国王室のドロドロやいい加減な
政治。
日本の大奥に似ためちゃくちゃな政治判断
英国にあったなら衝撃的でした。
演者の演技力に文句はありません。
ラストシーンはよくわかりませんでしたが、
よくある自分で考えてみろよ的な感じがして
しかし英国をあそこまで侮辱して
下品過ぎるストーリーに監督の考えがわからない。
気持ち悪くなります。
女達の化かし合い。
歴史物と言う事もあり、ヨルゴス・ランティモス監督のシュールで難解なファンタジーの世界観は封印。
そこがちょっと物足りなくもあり… 見やすいと言えば見やすい。
その分、いつもの理不尽な人間関係が際立ち、三者三様の女達の化かし合いが面白く、3人の女優の役所がピッタリで楽しめました。
当時の宮廷の生活、装飾、衣装がリアルで美しく見事でした。
期待以上に面白かった
エマ・ストーン 嫌いじゃないけど、あまり興味もなかったので、観に行くつもりはなかった。それに、映画祭で受賞する映画は、面白いと思えない作品が多いから、あまり期待もしてなかった。でも、誰かが絶賛してるのを見て、面白そう…と思ったので、観に行ってみた。期待してなかった分、すごく面白かった。女王陛下と二人の女の人間ドラマなんだけど、いつの時代も、一緒なんだな…と。この作品では、女同士の話だけど、これって、男女の恋愛においても当てはまること。エマ・ストーン の策略、腹黒さは、見事だった。このしたたかさに、みんな騙されるんだよね…。そして、勝つんだよね…。この作品の中では、勝負に勝ったけど、虚しそうだったね。結局、女王陛下の心までは奪えなかったってことだよね。でも、こういう駆け引きの上手な人、羨ましいです。
この3女優のオスカーが楽しみ!!
18世紀のグレートブリテン王国にて頂点に君臨するアン王女(オリヴィア・コールマン)の下で女官長をしていたサラ(レイチェル・ワイズ)。女王のお気に入りだったサラだが、没落した元上流階級のアビゲイル(エマ・ストーン)が城のお手伝い係として採用され、、、。
FOXサーチライト(低予算主体)興行映画なのに、こんな豪華作品作るんですね。
話的にはこの3人による王女お気に入られ合戦なのだが、もう演技が見事でしかない!
王女役のオリヴィア・コールマン。少し老けた女王役なのだが、1974年生まれとは驚きだ!
17人の子供に先立たれ、代わりに17匹ウサギを飼っている孤独感たっぷりの女王を見事に演じ切った。
権威とおぞましさも見事に演じて、今回アカデミー賞主演女優賞にノミネート。期待出来る。
また、その脇を固める2人が凄い。
レイチェル・ワイズは純粋さは無いものの、常に忠実。気品はあるが自分をわきまえており、女王の良さも分かっており引き出しが上手い。
エマ・ストーンは一度落ちぶれた元上流階級の人間らしく、一般人としての知識、人からのなつかれ易さがあるものの、一族の血か?欲が徐々に出て来てしまう実情をうまく演じた。
この2人の美しさと醜さ、愛と憎しみは観るものを飽きさせない。この2人も助演女優賞にダブルノミネート。
オスカー半分ずつにして2人に分け与えてもいいくらいであった。
当時中世宮廷内の楽しみ方なども映画で堪能出来、パーフェクトでは無いものの、ワクワクさせてくれるものがあった。
マイナスはややBGMが単調な所と男性陣の腑抜けぶり。
観た後パンフレット久しぶりに買いました。
オスカーが楽しみです!
多分、映画としてのクオリティーはとても高い…。
多分、映画としてのクオリティーはとても高く、非常に計算された脚本と三者三様の素晴らしい演技が織り成す、絢爛豪華な宮廷絵巻とも言えるのでしょう。
後半の女王の決断は、二人の愛人の狭間で揺れた情事の結果でしかないとも見えるし、重税に苦しむ民を救い、無用な流血がこれ以上続くの止めた英断だったとも見えます。
ラストシーンも、エマ・ストーン演じる女中の策略により、国家の財政を使い込んでいた事にされてしまった様にも見えるレイチェル・ワイズだけれども、実際、最前線に居る夫の為に、どうせ承認が下りるハズと、前倒しして使い込んでいた事実があったのかも知れません。
ただ一つ確かに言えるのは、エマ・ストーン演じる女中が、己の欲望の為だけに人として遣ってはいけない行いによって、権力の中枢の座を手に入れたという事実です。厳しいけれども、自分を引き上げて呉れた恩人に対して、恩を仇で返したという事実です。
キャッチフレーズにある様に、宮廷に良心は不要という事なのかも知れませんし、現実社会も似た様な物なのかも知れません。けれども、だからこそ映画の中には夢を見たい、人を信じたいという思いがいつも強く有ります。
そう言った訳で、主人公に深く感情移入する事が出来ませんでした。育ちが悪い人間は、心根までひねくれてしまうといった偏見を助長する様にも思われます。
見終わった後に、酷く複雑で陰鬱な感情に見舞われました…。
虚ろで混沌とするラストに感動する
アカデミー賞の発表前に観るべき作品かと思い、ぎりぎり滑り込んだ。やはり作品賞ノミネート作は特別だ。
ヨルゴス・ランティモス監督と言えば「ロブスター」を見落とし、「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」は好きになれず、イメージとしてはマイナスのスタートだったが、いい意味で予想を裏切られた。
女王アンを演じたオリビア・コールマンが秀逸で、わがままだが脆く弱い裸の王様、ならぬ「裸の女王」を好演した。
アンの幼なじみで彼女の信頼と愛情を一身に受けてきたサラ(レイチェル・ワイズ)と、没落貴族の娘でどん底を味わったサラの従妹のアビゲイル(エマ・ストーン)の二人が女王の寵愛の争奪戦を展開するが……
バイセクシャルな女王と二人の女性との関係が下世話でいい感じ。
そして虚ろで混沌とするラストが素晴らしすぎる。女王アンが確固たる主役であった。
コールマンの主演女優賞もあると思います。
【2019,2.27 追記】祝アカデミー賞主演女優賞!
けだものの本性を隠すために着飾り、豪勢な宮殿に住む、国家を蝕む悪女たち。
さすがランティモス監督、「ロブスター」「聖なる鹿殺し」に連なる世界感。
政治倫理観を現代の尺度で測るのはフェアではないことは重々承知だけど、国民を露ほども顧みず、我が身の欲望のみに執着する姿を、ここまで見苦しいことなく描けるのは監督の手腕。むしろ、その傲慢さと権力への執着は潔いと思えるくらいだ。そう思えるのは、それぞれが自分の利己主義ぶりに気付きながらもそれを良しとしてふるまっているからだろう。だから、『私はいつだって自分の味方よ』と言い切るアビゲイルの視線が、かっこよく見えてしまう。エマ・ストーンもレイチェル・ワイズもいい顔してるんだよ、腹黒なのに。ラストの王女との嫌味合戦なんて、そこいらのセレブが足元にも及ばぬ火花が散る名シーンじゃないか!
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