劇場公開日 2019年2月15日

「英国には悲劇がお似合い」女王陛下のお気に入り ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0英国には悲劇がお似合い

2019年2月16日
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英国には悲劇がお似合いだ。
少し不謹慎な気もするが、シェークスピアばりの、この悲劇の物語を観ると、やっぱり!と思ってしまう。
イギリスのすごいところは、こうした王室の悲劇でさえ物語として記録して、国民が楽しむことが出来るところだろう。
日本では皇族の悲劇の物語は基本的には見当たらない気がする。歌舞伎も能も悲劇が主体だが、皇族を物語にするのは畏れ多いのだ。

アン女王は、ピューリタン革命から続く、イギリスが長く混乱していた時期の1700年代の前半に統治した女王だ。
この時期は、マウンダー極小期という80年から90年くらい続いた地球が寒冷化した時とも重なっていて、イギリスが当初アイルランドに侵攻したり、食糧の確保が大命題で、その後も欧州大陸の国々とも紛争が絶えなかった。
税を倍にするなんてことをやったら、本当に国民が反乱を起こしたに違いない時代だったのだ。
そんな時代の、浮世離れも甚だしい王室内の混乱や、政治的駆け引き、恋愛(?)を含んだ悲劇を少しユーモアを交え、また、少しコミカルに描いた物語で、楽しんで観れる映画だった。
シェークスピアばりの悲劇だと言ったが、この悲劇はこの物語で終わりではなく、その後も争いごとは続いていく。
そして、余談だが、この寒冷期を過ぎても、火山の大規模な噴火で、10年とか20年単位で、地球が寒冷化したことが複数回あって、その度に、欧州では革命だの戦争だのが繰り返されて、僕個人としては、食糧不足は統治に重大な問題なのだと思い返したりした。
また、この浮世離れした物語は、宮殿の中の出来事が主で、役者達の衣装も舞台を観てるようで楽しめたし、まあ、不謹慎だが、エマストーンがものすごく可愛かった。
今、イギリスは欧州連合離脱で擦った揉んだしているが、これもいつかは悲劇として記録されるのだろうか。
それとも、イギリスに止まらず世界的な分断が悲劇として語られるのだろうか。

ワンコ