この世界の(さらにいくつもの)片隅にのレビュー・感想・評価
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もうひとつの片隅と、世界のその先の未来
もうひとつの白木リンの長めのエピソードが加わって、物語の厚みが増したように感じる。
世界の片隅は、それぞれ、世界の中心でもある。
亡くなった人は戻ってこない。
ただ、悲しみを糧に、人は背中を押されて、生きていくのだ。
失った右手も戻ってこない。
でも、いつか左手が右手の代わりをするかもしれない。
リンこそが、すずの実家でスイカを盗み食いしていたあの子なのかもしれない。
それでも、逞しく生きていたリン。
でも、戦争は、そんなささやかな人の人生も奪い去ってしまった。
晴美も、哲も、兄もそうだ。
俳優の仲代達矢さんが、ずっと秘めていた戦争の苦い思い出を話していた。
東京の空襲で逃げ惑っていた時、小さい女の子が、怖くて道の端にうずくまっていて、仲代さんは、こんなところでうずくまっていたら、焼夷弾で死んでしまうと、その子の腕を取って、駆け出したのだそうだ。
その時、背後に焼夷弾が落ちて、それでも必死に走って走って。
ふと気がついて、後ろを振り返ったら、女の子は既にいなくなっていて、自分は、女の子の手だけを握り締めていたと。
仲代さんは、怖くなって、その手を放り出して、また、駆け出してしまった。
仲代さんは、せめて、その手だけでも持ち帰って供養してあげたかったと、戦後70年以上も後悔し続けていた。そして、戦争は絶対ダメだと固い信念を話していた。
その子にも未来があったのだ。
消えてしまったもうひとつの片隅の未来。
でも、世界は続いていく。
悲しみを超えていく。
ただ、戦争が未来を奪うようなことがあってはならない。
そんな程度のことは、僕達の、そして、世界のささやかな願いであって欲しい。
完全版
【反戦邦画の傑作、魅力を増して再降誕。その理由は多々あるが、すずとリンさんの関係性が細やかに描かれたシーンを始め、追加されたどのシーンも今作に深みを与えたからなのは間違いない。涙が溢れます。】
前作が2016年11月に公開され、余りの素晴らしさに感動を抑えきれなかった記憶が強く、今作は”30分強長くなっただけだろう”と思っていた私が浅はかでした。
前作とストーリーは(当たり前だが)同じなのであるが、観終わった後の感動たるや・・。
『感動が増したと思われる理由』
・すずが、周作とリンの関係に気付き、悶々とする気持ちを抱える場面。秀作の裏表紙の切り取られたノートを見つけたすずの表情。”りんどう柄”の意味。
・二葉館にリンを訪ねたすずがリンと同じように働くテルと窓越しに交わす会話。そして、雪面の上にすずが書く南国の絵。
後半の場面でのテルの持ち物の使われ方。
・二葉館の前で再開したすずとリンの会話。病院での診察結果に、悄然とするすずにリンがにっこりと笑いかけ、語り掛ける台詞の素晴らしさ。
・戦中、束の間の花見を楽しむ北條家。そこで、すずとリンは再び会い、桜の木の上で語り合う言葉とリンがすずに渡したモノ。
<前作の素晴らしさは色褪せないが、今作は登場人物たちが戦時に懸命に生きる姿の表現が更に深みを増しており、深く魅入られた作品。
167分は、あっという間に過ぎ去ったが、この素晴らしき作品の記憶は長く残るだろうと思った作品。
前作公開時以上にきな臭い空気が世界に蔓延する現在、心に沁み渡りました。>
原作既読、前作鑑賞済み。 リンさんのエピソードが加わることで、足ら...
原作既読、前作鑑賞済み。
リンさんのエピソードが加わることで、足らなかったピースが埋まり、すずさんの人物像がより深堀りされ、艶やかさが増して、前作では少し子供っぽかったすずさんが大人っぽくなった。
原作を読んでいるのでわかっていたことではあるが、それでも目で見、声や音を聞くとワンシーン、ワンシーンがさらに意味あるものとなり、重層化され前作とはまた違った感動が残った。
哲の存在がすずさんにとっても周作にとってもより大きなものとなり、彼のその後の人生のことを考えてしまった。さらにリンさんだけでなくテルちゃん、小林夫妻、知多さんのエピソードが物語に加わることで、さまざまな人の生き様が世界の片隅にあるのだということを示しているのだろう。
3年の時を経て、傑作がさらに深化を遂げた。
それでも生きるとしか。
より原作とセットに
描ききってくれてありがとう!
うちはぼーっとしとるけえ、前作と同じ作品にはとても思えんかった。
とすずさん風に言いたくなる。
前作と比べながら観てしまうかな?と思っていましたが、むしろドラマ版を思い出しながら観てしまいました。ドラマ版の方が前作よりも原作に忠実なのでしょう。
そして、今回さらにいくつものエピソードを盛り込んで、この世界の片隅で強く生きていく人間のたくましさをより緻密に描けていた気がします。
戦争を知ってる世代も戦争を知らない世代も、日本中の老若男女に見てほしいなあ。この作品を知って欲しいな。
この世界にそうそう居場所はなくなりゃせんよ。
リンさんの言うように、自分の居場所は案外なくならないものなのかもしれない。
どんな悲惨なことが起きたとしても人は案外逞しい。
居場所はある。
例え死んでしまっても誰かの心の中には居場所があったりするものなのかもなあ。
日本のアニメはほんと素晴らしい!
前作知ってると、普通です。
完全版
前作『この世界の片隅に』に40分近いシーンを加増した、言わば完全版。これから見てみようかなとお思いの方は、敢えて見比べたいのでなければ、是非こちらを。
元々、何気ない日常の短いエピソードを一つ一つ継いでいきながら、戦争によって徐々にきな臭さを増し、脅かされていく生活を、時の流れに沿って描いた作品だったが、前作では、見覚えのないシーンが回想で唐突に現れたりと、少し整合性に欠ける部分があった。
ああ、上映時間の関係などで、切り捨てざるをえなかったシーンがあるのだろうな、と、察してはいたのだが、新作では、その座りの悪い部分が全て表されていて、成る程、こういう事だったか!と、すっかり腑に落ちた。
特にリンさん関係のエピソードがしっかり語られた事で、戦前の日本女性の、相手の人となりもよく解らないまま結婚し、嫁として他人の家族や環境に囲まれ、共に時を過ごし生活をおくる内に一つの【家】になっていく姿が、より鮮明さを増した。
無論戦争ものとしても見るべき作品だが、今回は、一人の女性と周囲の人々の人生を追う群像劇としても見応えがある。
あの頃、たくさんのすずさん、たくさんのリンさん、たくさんの晴美さん、たくさんのお姉さん、たくさんの周作さん、たくさんの水原さんがいた。今もいる。
ごくごくパーソナルで小さい物語が、日本中に、世界中に、観客一人一人の物語となって広がっていく。
初めて見た友人は感激していました
前作に引き続きなので疲れを感じました、
すずさんの性格や生き方はわかるけれど、りんさんとの話が今回は中心にあってので、そちらをもっと深くした方がよかったです
あまりに家族の話を入れすぎたので、初めてみる人は良いけれど、長さを感じたのは私だけではないはずです
さらにいくつもの拍手
アニメーションならではの表現力で描き切られた人間賛歌。
前作に新たな場面が追加された完全版とのことで、普通なら「どこが追加された」なんてところに意識が行くものだ。しかし、本作に関しては最初からどっぷり作品に浸れて、それが前にあったシーンかどうかは、関係なくなってしまった。長時間であったものの、感覚としては前作と変わらず、時間はあまり気にならない。それどころか、映画としての魅力がパワーアップされている。
それにしても、このふわっとした「すずさん」の魔力はなんなんでしょう。観ている間の居心地の良さ、久しぶりに味わいました。
恐ろしい程に厳しい日常でも、楽しく生きるたくましさ。この豊かな時代にも通じる、人びとの生活への真摯さ。戦争ではなくても、災害の時などには、同じように打ちのめされることはこれからもあるだろうけど、この社会は大丈夫だという強くしなやかなメッセージ。人びとの日々の生活こそ、社会を支えていて、ホントに素晴らしいものなんだよとの賛歌が聞こえる。
何度観ても心動かされるとともに、元気をもらえる貴重な作品です。
リンさんと一緒にスイカを食べたい
50分くらい追加になったというのに、リンさんを中心とした遊郭パートしかわからない(昨日見たというのに、トホホ)。なんとなく序盤に出てくる憲兵も前作ではいなかった気もするのですが、軍艦の絵を描いたというだけで間諜扱いされたなんて『少年H』(2012)まで思い出してしまう。やっぱり敵性語だから“スパイ”は使わずに“間諜”なんですね。
周作とリンの間に何かある!と疑ったのは綺麗な茶碗をすずが見つけたため。この柄はリンさんに似合うな~などと妄想を膨らませると、お義父さんからは簡単に聞き出すことができた。見受けするには相当な額が必要だろうに、ちょっとその辺りが気になった。
終盤のシークエンスはほぼ踏襲する形で思い出したかのように涙腺が決壊するのですが、今作では遊女テルのパートでも泣けるのです。そしてリンさんの世界にもどっぷり浸れるのだ(スイカのエピソードなど)。周作とはどんな関係だったかなんて、たった一度きりの客だったと予想はできるし、そんなに深くはのめり込まなかったのだろうと終盤に推測できる場面もあった。
晴美ちゃんがミリタリーオタクだったという事実も判明。前作でもそんな雰囲気はあったけど、多分追加されているんじゃないでしょうか?一緒になって「青葉っ!」と叫んでしまいそうになりました。
『この世界の片隅に』(2016)レビュー↓
https://eiga.com/movie/82278/review/02228143/
追加分でさらに生活感覚が
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