この世界の(さらにいくつもの)片隅にのレビュー・感想・評価
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無印鑑賞済
りんさんとの描写が追加されたことで、周作との関係性も補完され印象が変わる。細かな描写にも意味が付加されたりしている。てるちゃんちょっと言葉が九州っぽいと思ったらクレジット中に「飯塚弁協力」の項目を観て、やはりと納得した。
子供時代の哲とのシーンの追加も後々効いてきた。
しっかり軍需工場でのエンジンテストで「いい音鳴らして」(実際はうまくいっていない場面だが)きたのは、ミリオタらしいというか(ですよね?)
枕崎台風にオチをつけてくるのがすずさんクオリティ。
知多さんがががが。
音楽も新曲追加やアレンジ変更など気合が入っている。
などが追加シーンの印象。
それと前からあったすずさんが焼夷弾を消す場面だが、黄燐焼夷弾だったら非常に正確に消し方を描いているとか(『このミステリーがすごい!2020年版』「皆川博子×辻真先 レジェンド対談」中の辻真先氏の発言より)。すずさんがやけくそになってめちゃくちゃに消してると捉えていたのだが、ちょっと違うのかもしれない。そんな新たな発見もあった。
原作の漫画を読んだので、戦渦で生きている女性をこんなふうに描いてい...
原作の漫画を読んだので、戦渦で生きている女性をこんなふうに描いているんだということは理解して観に行った。かなり期待していたのだが何故か全く感動しなかった。どうしてだろう、私はもう純粋ではなくなったのか。
168分!
2020年映画館鑑賞5作品目
長い長すぎる168分
冗長だ
尾骶骨が痛い
期待していた内容と違う
白木リンのスピンオフかと思っていた
前作ではボツになった白木リンの話を単純に加えた完全版というわけでない
前作の部分もけっこう削られテンポが早すぎる
それなら120分以内にコンパクトにまとめて欲しかった
編集下手くそと少し腹が立った
前回同様絵はいいし能年玲奈も喋りも良かった
最近のジャンプの漫画よりこういう絵の方が好き
政治家に忖度することを批判するくせにバーニンググループのトップに忖度して能年玲奈を使わないテレビ局の人たちは偽善者だ
それを批判しない新聞も大馬鹿だ
僕は世界の片隅でを反戦映画と受け取らない
それだとなんか安っぽい感じになる
戦争や自然災害など過酷な状況で生きぬく人間ドラマの素晴らしさだ
それでいてほのぼのとしている
笑顔が絶えない
たしかにみんな笑って暮らせるならいい
∋ ∈
3
世界に誇れる反戦映画であり人間讃歌
オリジナル版もそうでしたが、今作でも後半から涙止まらずでした。世界に誇れる反戦映画であり人間讃歌。人の暮らし営みだけでなく、どうにもならない複雑な感情といったものが本当に繊細に丁寧に描かれていて、ずっと切実な気持ちでスクリーンに引き込まれていた。今よりずっと、人々の人権意識が低く、一人ひとりの人権も守られず、命も儚かなかった時代(嫁入り、人身売買、戦争など)に、それでも日々の暮らしを紡いで繋いでゆく人々のたくましさ、生々しい感情、悲しみ、笑い、楽しみ、切なさがほんとに美しく、そこが反戦映画としてだけでなく、美しい人間讃歌として成立しているこの作品の凄さだと思う。流されるようにして呉にきた主人公も、ほんとは意志を持って人生を生きてる。夫にも真摯に向き合ってる。自分の感情を見て見ぬふりせず、丁寧に扱ってる。そんな誇り高き人の人生を見せてもらえたことが尊い。前作同様エンディングにますます泣いてしまうのだけど、自分が産んだ子でなくとも、子どもの姿というのはいつの世にも希望の光になるとも思った。
戦下の生と(性と)死
2016年公開の『この世界の片隅に』の改訂増補版。オリジナル作品では「戦争の「当事者」としての庶民」を強く意識しましたが、本作では・・・
昭和19年、広島で暮らす19歳の浦野すず。
突然、見初められれ、呉の北條家に嫁ぐことになった。
大らかで、鷹揚で、かなり世間知らずのすず。
嫁いだ先でも、性格は変わらない。
しかし、海軍鎮守府のある呉は、敵機の襲来を繰り返し繰り返し受けることになる・・・
というのは原本のレビュー時に書いたあらすじめいたものだけれども、改訂増補版でもそれは変わりません。
けれども、印象はかなり異なります。
原本が「戦争当事者としての庶民」を強く感じさせるにしても、主人公すずのキャラクターから幾分ファンタジーめいた感がなきにしもあらずでしたが、今回は、三業地の赤線の女・リンとの関係を大きく描くことで、庶民の「生身」感は強くなりました。
夫・周作とリンとの関係、さらに、周作とすずの夜の営みも描かれることで、性=生の側面は強調されています。
個人的には、三角関係=平和な時代、というようなイメージがあるのですが、戦下で死が近しい分だけ、より生々しいものに拘るのかもしれませんね。
この生々しさによって、玉音放送を聞いたすずの悔しさは原本以上に増幅したように感じました。
原本よりも、今回の改訂増補版の方を評価します。
只々愛おしい
前作ですっぱり切り取ったリンのエピソード。
個人的に寂しかったがあれはあれで英断だったとも思うし、物語としてとても綺麗にまとまっていました。
そのリンのエピソードを加えた本作。
ディレクターズカット版なのか、完全版というべきなのか、ともかく嬉しかったです。
そしてやはりというか、リンが入る事で物語にとても深みが増していました。
前作はとてもふわふわしててそれがまた心地良いのだけど、そこに人々の巡り合わせや生と死の重さが増したような印象でした。
前作も何度か観る機会があったのですが、回数を重ねる度じわじわ沁み入ってくる感じですね。
特にその台詞一つ一つが心に残ってくるんです。
それと桜の木のシーン、再現度の高さというか演出が本当に素晴らしかった。
全体のつながりも良く、新しい作品としてまとまっていましたね。
逞しくて、悲しくて、嬉しくて、寂しくて、そして暖かい。
只々愛おしい作品です。
広島で見るこの映画は感慨深い。この世界の片隅にもサロンシネマで見ま...
広島で見るこの映画は感慨深い。この世界の片隅にもサロンシネマで見ましたが、土地のもつ力を感じながら見る映画は格別。あの最後のシーンがお兄さんだったとは、、、。
すずさんは良いなぁ
監督の執念に感謝します。
こんなに素晴らしい映画を作って下さってありがとう。
見た人がすずさん萌えになる事必定な一本。
唯一悲しいのは前作のイノセントなすずさんが上書きてしまった事。
もちろん今作のすずさんも素晴らしいのですが!
この世界のさらにいくつもの片隅に
当時の夜の星の位置から釘の頭にギザギザがあったか?まで6年かけて時代考証や検証をし、商店街を再現、その家族まで出演させ、徹底的に普遍性を追求した前作をベースに、さらに原作の登場人物の個人の伏線を掘り下げた完全版になります。初めて観られる方も違和感なくストーリーを追える良作なので、気が付いたら片隅の世界に浸ってしまい、3時間近い上映時間が、あっという間に過ぎることでしょう。前作は11回映画館で鑑賞しましたが、特に、前作で伏せられていた、遊女のリンさんと周作さんとすずさんの際どい絡みや人間関係、リンさん、テルさんのある意味、片隅からの達観した悲しいエピソード。特にテルさんの全てを語るような、博多弁 よかねー で思わず感極まりました。呉工廠に務めるお父さんのシーンでは、35.8Lの副列星型空冷18気筒
2000馬力を誇る 誉 エンジンや二式大艇なども登場し、鉄道オタクさんだけでなく軍事兵器オタクさんも満足できる仕上がりです。当時の広島や呉にタイムリープし浸れる不思議な映画です。
とことん逞しく
168分の長尺が、自分にはまったく長いと感じなかった。
まるで新しい作品をもう一本観ているような、とはいえ
オリジナルの記憶がまだ新しいことで再発見にも至れる。
すず、リン、径子のこれまでの人生とこれからの運命を
丹念に掘り下げてやや大人版となった今作は、鑑賞者の
年齢や立場等で観る角度がかなり違ってくる。一女性が
たどる成長驒として、数奇な運命を振り返るきっかけと
して、現在の自分が感じるありのままを今後もこの作品
で追体験できることだろうと思った。
個人的には、径子の印象がかなり変わった。
意地悪な義姉でなく数々の不遇に見舞われた女性だった。
それでも自分で選んだ人生だから悔いはないと言い切り、
晴美を失った後すずに広島行を促す姿には涙がこぼれた。
すずが周作への愛を確実なものと認識する水原やリンの
エピソードでは、腹を立てて夫を罵る姿が印象的だった。
そうそうもっと想いをさらけ出せ、すずさん!と笑った。
喧嘩して言い合いを重ねて夫婦はどんどん成長するもの。
リンは周作の名書とお茶椀とすずの描いた絵を、きっと
死ぬまで大切に持っていただろう。
自分の居場所を最も分かっていたのは彼女に他ならない。
世界の片隅に活きている女性たちはとことん逞しいのだ。
径子を通じて思うこと
「この世界の片隅に」はDVDで観ました。そしてこの作品は劇場で。映画はやはり劇場が一番ですね。世界観にどっぷり浸かれます。
おっとりとした性格のすずを通して、その対極にあると言っていい戦争の存在が強烈に胸を痛くします。「戦争はダメです」‥このことを語り継ぐために必要な作品。そう思いました。
どんな時代にあっても、その中で繰り広げられるそれぞれの人生。時代のせいにすることもできる、人のせいにもできる。しかし、僕はこの過酷な状況で語られた径子の言葉が強く残りました。
「自分が選んだ道の果て」
恋をして、結婚をして、戦争が起きて、疎開して、離縁して息子を手放し、かけがえのない晴美を失っても「自分が選んだ道の果て」と言える彼女の強さに打たれました。そして、それだけに日本の敗戦を知った時に人知れず晴美の名を呼んで泣いていた姿が愛おしくさえ思えたのでした。
僕らは彼女に学ばなければならないと思います。「自分の選んだ道の果て」と言えるように。時代がどうであろうとも自分の人生を生きることの大切さを教えてくれたように思います。
径子の存在もまたすずの性格と反対側にあるものだと思いますが、戦争を通じてお互いの痛みを知りながら歩み寄っていく光景もまた印象的でした。
戦争が終わり、新しい家族が増えた北条家の幸せを祈らずにはいられませんでした。
いい映画
だいぶ経っていることをもあってか、別の映画を観ているような気がした。
前回のレビューは下記みたいな感じ。
-------ここから引用
主人公があまりにも普通で純粋なので、対比によって周りの環境の激変が際立つ。戦時中の疑似体験として、最高峰ではないか。それも、それを体験しようと観に来た訳ではないのに、体験するという凄さ。こういう作品が、戦争を風化させない映画なんだろうな。
-------ここまで引用
今回は、このレビューにはならないな。ひとりの女性の視点で数年を体験する映画、かな。(その点は変わっていないんだけれど、長くなりエピソードが増えた結果、そちらの印象が非常に強くなった)
すずと周作、すずと径子(晴美)、すずとリン… 知らない者達が知り合い、ウマがあったりあわなかったり、お互いを好ましく感じる時もいやあな気持ちになる時も経験しながら、暮らしていく姿、かな。その舞台として、たまたま大戦下の呉を選んだ、という感じ。
今回追加されたうちの多くを占めるリンとのやりとりは、楽しさとやるせなさに彩られていて、リンのセリフ「この世界に居場所はそうそうのうなりゃせん」が、この映画の中心にあるのだろう。
自分も、通常版を先に出したことが、結果として大成功だったと思う。こっちの作品(長尺版)は、咀嚼が大変。もちろん観た人それぞれの受け取り方なのだが。
余談
168分(2時間48分)は長かった。今回は、後に座ったカップルの男が、愚にもつかないことを大声で喋るヤツで正直参ったので、余計に長く感じたのかな。あ〜、鬱陶しかった!
より丁寧に描かれる事で感じる普通の暮らしと戦争
オリジナル版で衝撃を受けたのも記憶に新しい本作。戦争という非日常が背後にあっても、日々の暮らしを笑って、恋して、明るく、逞しく、普通に生きるすずさん達に、またしても涙が止まりませんでした。
戦争がいかに恐ろしく普通の人々までをも苦しめていたかが体感出来ると同時に、戦争中だって冗談も言えば恋バナもする、今の時代と変わらない普通の暮らしがあったこともまた実感。そしてそれを一瞬でぶち壊すのが戦争だということも、普通の暮らしを丁寧に描くことでより際立っていました。
この作品を今の時代に作ってくれて、この感情を抱かせてくれて、やっぱり感謝しかありません。多くの人に見てほしい名作です。
ぐっと大人の物語に
長尺版・・・正直大丈夫かなと思ってました。
だって再編集したやつで最初より良かったってあまりないんで。
でも心配は杞憂に終わった!
新たなシーンが加わることでより深く心情が描かれてぐっと大人の物語に。
新たなシーンも不自然さはなく前回は時間、予算の関係で泣く泣くカットしたんだなと。
すずさんがより魅力的になってます。
ぜひ観ておく事をお勧めします。
それにしてものんはほんと声があってるし、演技もすばらしい!
素晴らしかった
前のバージョンで、2回見ていてそれで充分だったし、長いからあまり見たくなかったのだけど、見たら素晴らしくて、特に前はエンドロールだけだった浮浪児を引き取るところが、場面で描かれていて涙が止まらない。家族のみんなが、特にお姉さんがあの子によって救われると思うと本当に素晴らしい里親映画展開。
座敷童が浮浪児で、のちに女郎になってすずの旦那さんが水揚げしようとして、やめて、すずが偶然知り合うのはちょっと出来すぎではなかろうか。
はるみちゃんが亡くなるところは何度見てもつらい。
見ていて長さはあまり気にならなかったのだけど、それでもやっぱり長いは長い。一日のけっこうな部分が終わってしまう。
説得力が格段に増した
リンさん周辺エピソードについて、従前バージョンでは何となく消化不良だなと感じていたので、正にその点で大幅強化されたので、お話の流れやすずさんの心情に対する説得力が格段に増したと感じた。その他のキャラについても、さらにいくつかの片隅が提示されて、とても深くなったように思う。観て良かった。
より日常の人間ドラマにフォーカス
前作を見てから今作を見ると、どうしても追加部分にばかり意識が行ってしまうけど、人間ドラマがより熱く描かれるからこそ、人間の命の儚さや、戦争を日常の一部として受け入れてしまっている戦時中の怖さと悲しさが増していました。
繰り返しみたい。良い映画です
オリジナル版の方が良かった!!
オリジナル版を観て旦那の愛情と印象が薄いと感じました。今回、旦那に関するエピソードが追加されて、元々薄かった旦那の印象が悪くなってしまったと感じました。また終盤にまだ主人公がリンさんリンさん呟いているので、晴美ちゃんの印象まで薄くなって、全体的にボヤけてしまったと思います。旦那から愛情溢れる一言があったり、ラストが幼馴染エンドになる等何か変わる訳ではないですし、追加部分は蛇足だったと思います。観賞後は不快な気持ちです。オリジナル版の制作で、この構成で行こうと初めに監督がバッサリ決断したものが、文字通りの英断で間違いなかったのだと思います。すずさんは健気で可愛く、山の上から軍港を眺めるのは変わらず良かったですし、空襲が来る度に怖くて悔しくて泣けました。片渕監督が自分の名前と似ている「片隅」に魂を込めるのはとても分かりますが、同じ作者の「夕凪の街 桜の国」を劇場アニメにして欲しかったです。
寛容であり続けたすずさん
2016年の「この世界の片隅に」を観てから、もう3年になるのかという感慨がある。2018年にTBSのテレビドラマが松本穂香主演で放送され、そちらも全部見た。そのドラマのインタビューで北條周作の母を演じる伊藤蘭が「すずさんという大役を」という言い方をしていたのが印象に残っている。この作品に対する伊藤蘭の尊敬の念が感じられて、大変に好感を持った。彼女の言う通り、北條すずは大役なのだ。
3年の月日が経っても、最初の子供時代のシーンからラストシーンまで、3年前と同じように食い入るように観続けることが出来た。名作は何度観ても名作だ。飽きることがない。ひとつひとつの場面が繊細で意味深く作られていて、3年前とは違う感慨がある。次に観たらまた違う感慨があるのだろう。そしてまた観たいと思う。
本作品は反戦の映画である。従って戦争をしたい現政権に対しては、反体制の映画ということになる。前作品も同様だ。あれから3年。この3年に日本は戦争をしない国になっただろうか。残念ながらそうなっていない。むしろ戦争ができる国にしようという勢力が勢いを増したように思う。安倍政権はこの3年間に何をしたのか。
森友学園の問題が起きたが、安倍晋三は何も説明しないままいつの間にか誰も話題にしなくなった。そして自民党総裁の3選が可能になり、辺野古の工事が開始された。加計学園問題が発覚したが、森友学園と同じく安倍晋三は何も説明しないまま、いつの間にか誰も話題にしなくなった。共謀罪法が成立した。伊藤詩織さんが、強カン事件で逮捕状が出された山口敬之が逮捕されなかったことを明らかにした。国連で核兵器禁止条約が採択されたが、安倍政権は参加しなかった。そしてイージス・アショア2機の購入を決定した。また「重要なベースロード電源」という意味不明な言葉で原発の再稼働を決定した。杉田水脈衆院議員が「LGBTは生産性がない」と発言した。翁長県知事が亡くなり、同じく辺野古反対の玉城デニーが知事に当選した。その後辺野古埋め立てに関する県民投票が行われ、埋め立て反対が72%を占めたが、安倍政権による埋め立てはいま(2019年12月)も続いている。慰安婦像を展示したあいちトリエンナーレの「表現の不自由展」が中止され、補助金が不交付となった。その後再開されると、名古屋の河村市長が再会反対の座り込みの講義を行なった。桜を見る会の疑惑が浮上したが、安倍政権はすべての証拠を既に廃棄したとして提出を拒否、予算委員会の開会も拒否した。予算委員会は一問一答で野党からの追求が厳しい。本会議なら一方的に述べるだけだから、安倍晋三は本会議で桜を見る会の私物化を否定した。首里城が火災で消失した。
社会はますます不寛容になり、あおり運転が多発していて、京アニには火が着けらた。国民全体が不満を持ち、怒りの矛先を探しているようだ。一方でラグビーの日本チームの活躍にナショナリズムが高揚し、日本中が沸き立った。この状況はもはや戦争の一歩手前であることに気づいている人は少ない。ガンバレニッポンは他国の不幸を祈るのと同義なのだ。
寛容は不寛容に弱い。寛容は平和主義だが、不寛容は暴力主義、そして戦争主義だ。不寛容の暴力に対抗するために寛容が取りうる手段は非暴力、不服従しかない。それはガンジーの専売特許ではない。聖書にも「悪人に手向かうな。もし誰かがあなたの右の頬を打つなら、他の頰をも向けてやりなさい。あなたを訴えて、下着を取ろうとする者には、上着をも与えなさい」(マタイによる福音書)と書かれている。
しかし人類には寛容を継続する覚悟がない。つまりは、戦争をしない覚悟がないということだ。これからも無垢の子供が殺されるだろうし、あおり運転が殺人に発展する事件も多発するだろう。他人の不幸を祈るのが人間だとすれば、それはあまりにも悲しい事実だ。悲しくて悲しくてとてもやりきれないと歌いたいのはコトリンゴだけではない。我々はそういう時代に生きているのだ。いや、歴史的にずっとそういう時代だった。
国家が自国だけの存続と繁栄を望めば必ず戦争になる。戦争になると人間は共同体のための消耗品に過ぎなくなってしまう。人格も人権も蹂躙されてしまうのだ。その中で人を憎まず正気を保って生きたのが北條すずである。寛容であり続ける覚悟を持っていた女性だ。確かに大役である。
この作品を観て、戦時下の庶民はこんな風に生きていたのだということを知ってほしい。そして苦労して生きていたのは日本人だけではなく、戦争をしたすべての国家の庶民も同じように苦しんでいたことを想像してほしい。戦争で苦しむのは必ず弱者なのだ。
最近は世相を反映して、反戦の映画が多く上映されている。マスコミが権力に忖度して特定秘密保護法や安保法制、集団的自衛権の行使容認がどれほど危険なことであるかを全く報じないため、映画人が映画によって表現するしかなくなったのだ。危機感を感じているに違いない。それらの作品を観た人々が、戦争をしないためには寛容でなければならないことに気づくようになれば、表現の自由がはじめて力を持ったことになる。しかし果たしてそんな日が来るだろうか。
※いいねをくださった方々、ありがとうございます。私に対する人格攻撃みたいなコメントが付いてしまったので、一旦削除して再アップさせていただきました。本レビューに対するコメントは受け付けないことにしましたので悪しからずご了承ください。
追加部分があることで、随分と違う印象
「この世界の片隅に」は劇場で2回観ていて好きな映画。ですが、この度の長尺版は168分と聞いて「長い…どうしようかな」と思ったこともあったのですが、観てヨカッタ!
まず、原作を読んでいないと分かりづらかった点が、追加シーンによりかなりわかりやすくなったと共に、すずさんの心理描写が増えてただの”天然”じゃなかったんだなという印象も受けますね。
観る前には約3時間という上映時間に身構えていましたが、いったん観始めればまったく長いとは思わず、本当に完成度が高いエクステンディッド版です。でも、台風の場面はなくてもよかったかな。
劇場の入りがイマイチのような気がしましたが、もう観ているしねぇという理由で観ないのはもったいないので、音響のよい映画館でぜひ観てください。
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