「日本の平和を目指して帝国海軍と、数学の力で闘いを挑むというのはとても良かったのだが、その後の展開が今一つと思えてしまった」アルキメデスの大戦 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
日本の平和を目指して帝国海軍と、数学の力で闘いを挑むというのはとても良かったのだが、その後の展開が今一つと思えてしまった
山崎貴監督による2019年製作(130分/G)の日本映画。
配給:東宝、劇場公開日:2019年7月26日。
三田紀房による原作漫画は全く読んでいなかったが、子供の頃戦艦大和は勿論、連合艦隊のプラモデル作りに夢中になっていた人間としては、初っ端の戦艦が航空攻撃されて傾いて沈んでいく映像のリアリティには、感心させられた。
東大理学部数学科卒業で数学の天才という菅田将暉演ずる櫂直のキャラクター設計は、なかなかユニークで面白かった。家庭教師の生徒である尾崎鏡(浜辺美波)が寝ているところを、色々と物差しで測ってしまうのが笑える。
海軍で菅田の部下にされてしまう田中正二郎を演ずる柄本佑も、気に入らない奴だが上下関係は絶対と嫌々従うが、次第に櫂に心酔していく下っ端軍人を好演。軍艦製造を受注していた会社の社長を演じていた笑福亭鶴瓶も、頑固だが魅力的な大阪商人を演じ、感心させられた。
平山 忠道造船中将(演じていたのは田中泯)のキャラクターは、大変に興味深かった。鏡の父親がトップの尾崎財閥とは癒着し自分の建造案を通すために不当に安い見積もりを提出。そのことを櫂に散々の苦労の末暴かれるも、他国に見積もりが漏れることを考慮した配慮のためと主張し、逆に評価されてしまう。ただ意外にも、櫂に安全想定基準の甘さを指摘されると自身の計画の欠陥を認め、アッサリと計画案を取り下げてしまう。理系技術者としての誇りを十二分に持っていたことにビックリさせられたとともに、技術者のことを良く分かってる設定だなと感心もした。
その後、平山は信頼感を持った櫂に、巨大戦艦を元の設計で作り、その「大和」が沈むことで戦意を喪失させ、国民に負けを認めさせるたいと打ち明ける。イマイチというか、大和撃沈への負け惜しみというか、無理クリ感満載の展開と思ってしまった。
あと、櫂が黒板に書いていた戦艦の鉄の総量と建造費(鉄量1トンあたり)の関数式だが、鉄量1344トンまで急激に上昇し、そこから急激に下がるかたちになっていて、数学の監修も有る様だが、1344トンの説明も無く、理科系のサガだが自分的には十分な納得感は乏しかった。
監督山崎貴、原作三田紀房、脚本山崎貴、製作市川南、エグゼクティブプロデューサー阿部秀司 山内章弘、プロデューサー佐藤善宏 、守屋圭一郎、ラインプロデューサー阿部豪、撮影
柴崎幸三、照明上田なりゆき、録音藤本賢一、美術上條安里、装飾龍田哲児、VFX山崎貴、VFXディレクター渋谷紀世子、衣装水島愛子、ヘアメイク宮内三千代、編集宮島竜治、音楽佐藤直紀、カラーグレーター齋藤精二、音響効果岡瀬晶彦、特機奥田悟、キャスティング梅本竜矢、スクリプター阿保知香子、助監督安達耕平、制作担当櫻井紘史、プロダクション統括
佐藤毅。
出演
菅田将暉櫂直、柄本佑田中正二郎、浜辺美波尾崎鏡子、笑福亭鶴瓶大里清、小林克也大角岑生、小日向文世宇野積造、國村隼長野修身、橋爪功嶋田繁太郎、田中泯平山忠道、舘ひろし山本五十六。