「ストーリーに説得力がないフィクション映画。!」アルキメデスの大戦 西海一久さんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリーに説得力がないフィクション映画。!
昨今の日本人が斜めに物事を見たがるがそれが好評の理由かもしれない。
また、相変わらず山本五十六が正しいと言う前提になっている。
此の映画を正確に評価するには軍事的な知識と兵器の歴史も知る必要があると思います。!
大鑑巨砲主義を捨て切れなかった旧海軍が敗戦の要因ではない事。
もっと言えば空母部隊に突出して頼り過ぎた為負けたと言える。
(旧日本海軍の空母や戦艦等の艦艇はアメリカ空母艦載機にこてんぱんにやられているが日本の空母艦載機が沈めた正規空母はイ168潜水艦にとどめを指さされたヨークタウンをふくめても四隻で戦艦にいたっては真珠湾意外は0である。)
またアメリカ海軍の巧みな戦術と最新機器の前にも敗れたとも言える。
そのいい例がミッドウェイ海戦である
三空母亡き後、空母飛龍から攻撃に飛びたった艦載機は空母ヨークタウンに致命傷を与えるが艦載機の被害は半数以上の損失となっている。
これはまだ対空砲にもVT信管もまだない時代にあってアメリカ海軍が空母を中心とした艦隊を輸形陣と言われる防御作で他の艦艇が空母を守る策をとったからである。
その後の空母を主体となった南太平洋沖海戦では空母ホーネットを沈めるが
VT信管も実用化された為日本艦載機の被害はさらに増大する。
特に搭乗員の被害はミッドウェイ海戦よりもさらに悪化し取り返しのつかない状況となった。
これ以降(開戦から1年もたたないで)日本の空母部隊はまともに機能出来なくなった。
これが事実である。!
空母主体による航空部隊による有効性(真珠湾の最後通告1時間前の奇襲を除外すると完全勝利はない)示めしたもののその後アメリカとの空母同士の海戦は引き分けか負け戦である。!
これは、連合艦隊の艦艇、艦種を有効に使用出来なかった事が大きな要因の一つである。
特に大和に代表される戦艦群は有効に使用されていない。
ミッドウェイ海戦時に、もし空母四隻の周りに輪形陣の策で大和や長門がいて対空射撃をしていたら空母四隻は沈んでいただろうか?
なぜ、ミッドウェイ島やガナルカナル島の砲撃に戦艦大和の46cm砲を使わなかったのか?
また最初の戦艦対戦艦の戦いでも日本は負けている。
戦艦比叡は新鋭戦艦ワシントンの対決で比叡は沈められている。
アメリカ海軍は惜しみもなく新鋭戦艦を此の戦いに投入してガナルカナル島を必死に守ろうとしているが日本の新鋭戦艦大和、二番艦武蔵は温存され作戦に参加させていない。→大和ホテルと武蔵屋旅館状態。
※沖縄特攻であんな惨めな作戦を実施するなら、さらに言えば対米戦早期講話を実現するなら、ここで突っ込ませるべきであったと思うのは私だけではあるまい。
せめて二艦失う事を恐れたのであればどちらか一艦だけでもと思う。
→山本長官何故?
大和を使用するタイミングを見失い、さらに艦艇同士が互いに守り戦う思想も旧日本海軍には足りなかったのである。
現代の軍事理論では常識の事。!
戦艦大和だって有効に使えば活躍出来たのである。
そして必要な戦艦だったのである。!
アメリカ海軍でさえ20世紀後半まで海兵隊の強い希望もあり戦艦を配備していた事実がある。
また、ソビエト崩壊前のソビエト海軍は近代兵器をまとった戦艦を配備してアメリカ海軍に対抗していた、事実もある。
映画の平山中将の言う大和は日本人に敗北を促す為(よりしろ?)に造った船ではない。
勝利の為に作った戦艦である。!
数学の道理の前に軍事理論を触れていないし、二番艦武蔵、三番艦信濃の事は無視され、山本長官側が提案する新規空母案は何も触れられていない。
(翔鶴型2隻→大鳳型1隻→?)
さらに平山中将曰く、!
大和が沈めば日本は戦争を諦める。?
大和型の二番艦武蔵が大和が沈む5ヶ月前にレイテ、シブヤン海で沈んでいますよね。
同型艦の武蔵が沈んでいるのに日本は戦争をやめていませんよね。!
大和が沈んでから二発原爆落ちてますね。!
大都市の空襲もありましたね。
大和が沈んでから何十万も死んでいますよね。!
平山理論(浅はかなセンチメンタル)は歴史的事実とかなり異なり、ある意味不謹慎とさえ思える。
「ふざけるな!」と言いたい。
ストーリーに説得力がない映画。
私から言わせれば戦艦大和に間違ったノスタルジックを植え付けた映画である。!
ただ、役者さん達の演技は見事。
冒頭の大和の戦闘と沈没シーンの特撮は「男達の大和」よりリアルで進歩したと思う。ここだけは評価したい。
(星2の理由。)
自国の戦艦を正確に評価出来ない映画関係者は本当に嘆かわしい。
この映画を見て変に感動する日本人もまた、哀れで涙が出てくる。
菅田将暉君がラストで大和を見て涙した様に。