「最後の15分が光る」アルキメデスの大戦 P CATさんの映画レビュー(感想・評価)
最後の15分が光る
夏になるとこういう映画が一本は出てくるよな~と思いつつ鑑賞。同じ大和を扱った『男たちの大和』とはずいぶん毛色が違ったものの、最後の纏め方が秀逸で、邦画では珍しい面白さがあった。
●ストーリー
次期大型艦の建造計画を巡り、空母を推す山本一派と巨大戦艦を押す嶋田一派が対立する軍部が部隊。大艦巨砲主義に押され劣勢な山本派だが、巨大戦艦の安すぎる見積もりに疑問を持ち、元帝大数学科学生の主人公を使って秘密を暴こうとするが……?
敵対陣営の妨害をかいくぐり、巨大戦艦の見積もりを算出すべく奮闘する、というのが映画の殆どを占めます。悪くはないけど、少し派手さには欠けるかな……と思いつつ見ていましたが、ラストの展開で一気に引き込まれました。
山本派は「勇壮な巨大戦艦が出来れば、国民は日本の国力を錯覚してしまい、戦争に繋がる」として戦艦建造を止めようとしていました。しかしラストで明かされる真相はまったく正反対。山本五十六は来る日米開戦に向け、開戦劈頭米太平洋艦隊を叩くべく機動隊の充実を図って空母建造を推し進める腹積もりでした。一方嶋田派の平山造船中将は「日本は負け方を知らないから、国民最後の一人まで戦いかねない。その前に日本を象徴する巨大戦艦が沈むことで、国民の目を覚まさせなければいけない」と、必敗の状況になったとき、大和を日本の形代として沈めることを考えて設計を行っていました。
これを知った主人公は、大和完成の鍵となる設計式を彼に伝えるのでした……
このトリックは凄い!あのまま終わったらただの駄作でしたが、最後の回収の見事さで秀作に引き上げられた感があります。なるほど、そういう解釈をつけるのか~
●演出・演技
最初は雑でオーバーなキャラ付けにハイハイいつもの邦画ね。と思っていましたが、慣れるにつれ気にならなくなりましたね。
演出でいうならば、VFXの見事さは特筆もの。この映画は大和が題材になっているものの、実際に大和が映るシーンは殆どありません。しかし、そのわずかなシーンの存在感は格別。大和が横転し、主砲が海面に引きずられていくシーンなど、壮大なスケールを感じさせる重厚な動きは見事の一言。
●総括
最後の展開で全てを持って行った怪作。見事なVFXにも見所アリ。昨今はSNSの普及もあって情報が伝わりやすい世の中になったが、シャットアウトして完全初見で見てこそ価値がある映画。